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複雑な系については次節の有限要素法を使えばいいが,1スパンの2点境界値問題で あれば,微分方程式を直接数値積分して解を求めることができる。 まず左端で与えられた境界条件に加えて未知の量も適当に仮定して 右端に向かって数値積分する。次に,その右端の結果と右端で 与えられた境界条件の差を解消するように,今度は右から左に数値積分して 左端の未知量を更新する。これを繰り返すことによって解を得ることができる。 非線形微分方程式であっても数値積分は容易にできる。 この節には基礎式となる1階連立常微分方程式を列挙するに留め, 数値積分の方法については文献[64]を参照して欲しい。 なお,この1階常微分方程式は表-E.3にもまとめた。
長さの梁に対する無次元化した連立微分方程式にするために
以下の量と微分を定義する。
すると,まず伸びを考慮した第2次近似理論の場の方程式は
と表すことができる。ここに
と定義した。ここに
は,式(4.85a)で
定義した
を若干定義し直したパラメータである。
これに対し,第1次近似理論の場合は,上式のうち
の3式が変更になる。
また伸びを無視した場合,
まず第2次近似のつり合い式のうちの式(E.97c)を
で置き換えればいい。
また第1次近似の式(E.99)の場合は
となる。 数値積分は各種パッケージに含まれているものを利用すればいい。
ここでは弾性の有限変位理論を取り扱っていることから, 微小ひずみの仮定に基づき,簡便にかつ高精度で棒の 有限変位解析を有限要素法を用いて解く手法の一つ[39]を説明する。 変形の一般的な記述に極分解の定理 [51]がある。これは簡単に言うと, 全体の変形勾配は回転成分とひずみ成分の積で表されるというものである。 つまり微小なひずみのまま大きくたわむピアノ線のようなものを 対象とする限りは,大きく見える変位成分から回転成分を除いてしまうと, 実質的に変形に寄与する変位成分の大きさは非常に小さいことを示唆している。 この定理を念頭に置き,次のように考えて剛性方程式を仮定しよう。
ある有限要素を取り出したとき,例えば左節点の断面の
たわみ角分だけ回転した要素座標系で見ると,
要素長を短くすればするほどその左右端の相対変位(たわみ角も含む)は小さくなり,
その相対変位については微小変位理論の
剛性方程式が成立すると考えるのである(図は文献[39]を参照のこと)。
つまり,ある代表的な構造物の長さをとしたときに,
外力ベクトルと変位ベクトルを
(E.101) |
で近似する。
なお簡単のためにこの章のこの節では,括弧無しの太字で行列を表している。
ここでは左の節点の断面の回転角で
定義される座標変換行列で,は要素の剛体変位成分で
(E.103) |
と置いた。ここには有限要素の長さである。また
剛性行列は,Timoshenko梁の幾何剛性を含む
式(E.67)を用いて
(E.104) |
(E.105) | |||
(E.106) |
である。はせん断変形の取り扱いを補正する
係数(節-4.6.2に例がある)で,
断面形状とPoisson比に依存する定数[16]である。
あとは,式(E.103)を例えばNewton-Raphson法で解けばいい。
そのときの接線剛性
は式(E.103)をで偏微分するだけで
のように求められる。ここに
(E.108) | |||
と置いた。例えばステップまでの解が求められているとすると,
式(E.103)から不つり合い力を算定し,
式(E.108)の接線剛性を用いて,ステップの修正解が
(E.109) |
のようにして求められる。
右辺の接線剛性の逆行列がかかっている項がステップの
不つり合い力である。収束は例えば
(E.110) |
のようにすればいい。
図-E.3は文献[17]で 対象とされた構造である。また図-E.4は 文献[135]でも対象とされた浅いアーチで,AA'およびBB'に 分岐経路がある。文献ではBB'は示されていないが, ここのアプローチでは見つけられた経路である。 ここで定式化された接線剛性は非対称ではあるが, 分岐前後で対角要素(固有値)に負の値が現れ, 分岐点と荷重方向および変位方向のピークとでその数が 変化する。図-E.5には, 斜張橋の塔が面外に座屈することを想定したものであるが,基部に向かって 引張られて,魚のかかった釣竿のようになる柱の荷重変位関係を示した。 ただし,最初に少しだけ曲がった柱に 載荷している。図-6.13や図-6.14等も, 同じプログラムで数値的に解いて得たものである。
ここで用いたプログラムでは, メモリ節約等のためにスカイライン法[22]を用い, 安定な解析のために弧長法[135]を併用した。 このプログラムもまえがきに書いた方法で入手可能である。 またこのプログラムは,節-E.3.4で 誘導した4種類の座屈公式のそれぞれに対応した剛性行列を用いて, それぞれのモデルの解を求めることができる。 このような対応を表-E.3に示した。
誘導の詳細については文献[37]を参照のこと。有限変位問題に
対しても,微小変位(線形化された)理論の剛性行列を用いることが
できることを前節で示したので,ここには線形化された理論,
つまり梁-柱理論レベルの剛性行列を示して
おく。
と定義して
(E.111) |
という関係で剛性行列を定義する。なお,添え字mのAとBは,Timoshenko梁理論の
せん断力とせん断変形の二つのモデルを区別したもので
ある(表-E.3参照)。要素長をとしたときの,
有限変位の枠組での平面骨組の剛性行列
は
(E.112) | |||
となる。ここに
(E.113) | |||
と定義した。また,とは
(E.114) |
で算定できる。Bernoulli-Euler梁の場合は, とすればいい。 「伸びを考慮」した「モデルB」が,梁に対して最も正確な解を与えてくれる。