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E.2 Bernoulli-Euler梁理論--美しい理論

E.2.1 運動場

比較的細長い梁の場合には,せん断変形を最初から 無視したBernoulli-Euler梁として取り扱える。この場合には, 以上の定式化において $\Gamma\equiv 0$とすればいい。 区別を明確にするために,断面の回転角$\vartheta$$\theta$と表記する。 したがって,式(E.8)の運動場は

\begin{displaymath}
u_x(x,z) = u(x)+z \sin\theta(x), \quad
u_z(x,z) = w(x)+z ...
...ght\}, \quad
\Lambda(x,z)=\Lambda_0(x)=\theta(x)
\nonumber
\end{displaymath}  

となる。$\theta(x)$は断面の回転角であるが,梁の軸線のたわみ角でもある。 また,式(E.9)の傾きの幾何学的関係は

\begin{displaymath}
\tan\theta(x)=-\dfrac{w'(x)}{1+u'(x)}
\end{displaymath} (E.15)

となり,$\theta$$u$, $w$は独立ではなくなる。 同様に式(E.11)は厳密に

\begin{twoeqns}
\EQab
\sqrt{g} = 1+\epsilon+z \kappa, \quad
\EQab
\epsilon = ...
...a'= -\dfrac{1}{g_0}\left\{
\left(1+u'\right) w''-w' u'' \right\}
\end{twoeqns}

(E.16)



と表現される。 式(E.16)と式(E.17)から変位勾配は

\begin{displaymath}
u'=(1+\epsilon) \cos\theta-1, \quad
w'= -(1+\epsilon) \sin\theta
\end{displaymath} (E.17)

という関係になる。

さて,式(E.4)のひずみの定義式と式(E.10a)とを 比較すれば明らかなように,式(E.11a)の$g$は, 変形後の基底ベクトル$\fat{G}_x$のノルムの2乗であるから, ここで物理的な伸びひずみ$e$を基底ベクトル$\fat{G}_x$の 長さの変化率で定義することにし

\begin{displaymath}
e\equiv \sqrt{g}-1
\end{displaymath} (E.18)

と定義する。これに式(E.17a)を代入すれば

\begin{displaymath}
e=\epsilon+z \kappa
\end{displaymath} (E.19)

という簡単な表現になる。 つまり,大きく変位した場合であっても,Bernoulli-Euler梁の ひずみ(伸びひずみの物理成分)は断面内で三角形(線形)分布をしている。

E.2.2 つり合い式と境界条件

一方,式(E.10)のひずみ成分を 式(E.6)の仮想仕事式に代入して, せん断ひずみ$E_{xz}$の項を無視した上で, 式(E.19)を考慮して変分を取れば,その内力仮想仕事項は

\begin{displaymath}
\int_V S_{xx}  \delta E_{xx} \dint V =
\int_V \sqrt{g} S_{xx}  \delta e \dint V
\end{displaymath} (E.20)

と表してもいいことがわかる。ここが,美しい理論体系に なるための一番のミソである。 梁の抵抗は軸方向の変形$E_{xx}$が主であり零ではないため, その軸方向の基底ベクトル$\fat{G}_x$は変形後には単位でなくなる。 したがって式(E.7)から,$x$方向の 直応力$S_{xx}$$\sqrt{g}$だけの調整が必要になる。よって

\begin{displaymath}
\sigma\equiv \sqrt{g} S_{xx}
\end{displaymath} (E.21)

で,軸方向の応力の物理成分を定義することができる。これを用いると,上の 内力仮想仕事項は

\begin{displaymath}
\int_V \sigma  \delta e \dint V
\end{displaymath} (E.22)

のように簡明な表現になる。

式(E.20)から,伸びの物理成分の変分は

\begin{displaymath}
\delta e=\delta\epsilon+z \delta\kappa
\end{displaymath}

となるから,上式(E.23)に代入すれば内力仮想仕事項が

\begin{displaymath}
\int_x \left( N  \delta \epsilon + M  \delta\kappa \right) \dint x
\end{displaymath} (E.23)

となる。ただし,二つの基本的な断面力を

\begin{displaymath}
N\equiv\int_A \sigma \dint A,\quad
M\equiv\int_A z \sigma \dint A
\end{displaymath} (E.24)

と定義した。

式(E.16) (E.17)を考慮しながら, 各変形成分の変分をとると

\begin{displaymath}
\delta\epsilon = \cos\theta \delta u'-\sin\theta \delta w', \quad
\delta\kappa=\delta \theta'
\end{displaymath}

という関係がある。また式(E.16)の変分から

\begin{displaymath}
\delta\theta=-\dfrac{1}{\sqrt{g_0}}\left(
\cos\theta \delta w'+\sin\theta \delta u'\right)
\end{displaymath}

という関係になる。また外力仮想仕事については,分布外力モーメントを 無視した梁理論の範囲内での表現をすると

\begin{displaymath}
- \int_x \left(p \delta u+q \delta w\right)\dint x
- \left...
...+ S \delta w+
C \delta \theta \right)\Bigl\vert _{x=0,\ell}
\end{displaymath} (E.25)

と書いていい。式(E.24)と以上の関係を用いて変分を 実行し,対応するEuler方程式を導くと,つり合い式が

\begin{manyeqns}
&& \left(N\cos\theta+\dfrac{M'}{\sqrt{g_0}}\sin\theta\right)'+p...
...& \left(-N\sin\theta+\dfrac{M'}{\sqrt{g_0}}\cos\theta\right)'+q=0
\end{manyeqns}



(E.26)



となる。境界条件は

\begin{manyeqns}
u=\mbox{与えられる}  &\mbox{あるいは}&\quad
n_i \left(N\cos...
...\
\theta=\mbox{与えられる}  &\mbox{あるいは}&\quad
n_i M=C_i
\end{manyeqns}



(E.27)



となる。ここに$n_i$は式(4.24)で定義した 記号である。

E.2.3 構成方程式

式(E.23)を見る限り,$\sigma$$e$の組の間に 何らかの構成則を与えるのが一番素直である。したがって, 線形弾性の構成方程式を

\begin{displaymath}
\sigma=E e=E \left(\epsilon+z \kappa\right)
\end{displaymath} (E.28)

のようなわかり易い形で与えることにする。 ここに$E$は何らかの弾性係数である。 したがって断面力と変形の関係は

\begin{displaymath}
N=EA \epsilon,\quad M=EI \kappa
\end{displaymath} (E.29)

と見かけ上線形になる等,わかり易い理論体系になっている。 もちろん,式(E.17)から明らかなように, 変形$\epsilon$, $\kappa$と変位$u$, $w$の間は高次の非線形関係に あるため,限られた場合しか解析的に解を求めることはできない。

E.2.4 座屈荷重

この理論の枠組の中で片持ち梁の座屈荷重$P\sub{cr}$を 求めよう。図-6.24が解析対象なので

\begin{displaymath}
u=-\dfrac{P}{EA} x, \quad w=0, \quad \theta=0, \quad
\epsilon=-\dfrac{P}{EA}, \quad
N=-P, \quad M=0
\end{displaymath}

が解であることは明らかである。つまり座屈する前の自明な解である。 そこで章-6の剛体バネモデルでの例のように, この解のすぐ近傍に別な解が存在するか否かを確かめることによって, 座屈が可能か否かの判定をしよう。そのためには,例えば

\begin{displaymath}
u(x):=-\dfrac{Px}{EA}+\Delta u(x), \quad
w(x):=\Delta w(x) \quad \mbox{etc.}
\end{displaymath} (E.30)

と置き,すべての支配方程式に 代入し直し,$\Delta$のついた摂動量について線形化した 支配方程式を求めればいい。境界条件も同様の線形化をすると, 最終的に摂動量に関する斉次の支配方程式を求めることができる。 この支配方程式はいわゆる固有値問題を形成している。 そうした上で,摂動量に対して一つでも零でない解が存在するための 条件式から,座屈荷重$P\sub{cr}$を算定できる。 具体的な誘導は参考文献[37,41]を参照のこと。

このようにすると,座屈前の伸びを厳密に考慮した場合は, 文献[73]にもあるように

\begin{displaymath}
\dfrac{P\sub{cr} \ell^2}{EI}=\dfrac{\lambda^2}{2}
\left\{1-\sqrt{1-\left(\dfrac{\pi}{\lambda}\right)^2}
\right\}
\end{displaymath} (E.31)

となる。ここに$\lambda$は細長比である。 これに対し座屈前の伸びを無視した場合には

\begin{displaymath}
\dfrac{P\sub{cr} \ell^2}{EI}=\dfrac{\pi^2}{4}
\end{displaymath} (E.32)

となり,式(6.40)の梁-柱の解に一致する。 式(E.32)では伸びを考慮しているため,その軸力による 縮み分だけ座屈長が短くなる効果を含んでいる。 つまり,細長比が$\pi $より小さい柱は,もちろん梁でモデル化するのは 無謀ではあるが,座屈しないことを示している。 この縮み分のために, 式(E.32)の解は $\dfrac{\pi^2}{4}$より 大きい値になる。 また細長比が大きい場合には, 式(E.32)の平方根の部分をTaylor展開して 最初の2項だけを用いると,それは式(E.33)に一致する。


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Iwakuma Tetsuo
Mon, 18 Feb 2013 12:50:55 +0900 : Stardate [-28]8120.80