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ここは第1著者の卒業論文の中身であるが,青焼きが消えそうなので
ここに見える部分を写しておく。
手法はその当時よく用いられていたVlasov流のもので,
断面変形パターンを仮定した上で,仮想仕事の原理で支配方程式を求めるという
ものである。軸を円管の中心に置き,円管肉厚中心面に沿って座標を,
中心面から中心向きに座標を定義する。肉厚中心面の半径をとし,
肉厚をとする。ただし径厚比
は大きい(薄い)ものとする。
極座標の()との関係は,したがって,
となる。曲げは-面内で生じるものとすると,
梁理論の拡張であるから,ひずみ場に対する仮定はまず
である。断面変形に関しては,応力に対する推測が
でいいだろう。ここに上付きのアスタリスクは肉厚中心面上での値である
ことを示す。これとHookeの法則を眺めた上で,ひずみ場の仮定は
でよさそうだ。
このひずみ場の仮定に対応する変位場は
となる。ここに上付きのバーは断面変形成分を表し,断面変形に関係する
変位の, , 方向成分を, , とした。または
たわみ角で,ここではせん断変形を無視しているので
という関係がある。ここにプライムはに関する微分を表す。
この変位場が式(E.71)のひずみ場の仮定を満足するためには
であればいい。ここに上付きドットはに関する微分を表す。また
と定義した。とは,断面変形によって肉厚が断面内と 長手方向に傾く角度である。
断面変形は,梁そのものの動きに比べればせいぜい断面寸法程度なので,
ここでは微小と考えて線形化する。また,断面の変形パターンを
想定することによって変数分離をして
のように置くことにする。力学的考察からはが
主要な関数であることはわかる。それを用いて式(E.71)の
ひずみ場の仮定に代入すればが求められて,結局
と求めることができる。つまり楕円形に変形するモードである。
これよりの高次項をすべて無視すれば
と近似できる。以上の考察から,変位場が
と求められる。ただしは,断面変形で縮んだ
実質的な方向の軸からの距離(
)で
と定義した。すなわち,断面変形が無ければ基本的な未知関数は, の 二つの変位,つまり中立軸の面内の変位量のみが求めたい関数である。 そこに,式(E.76)で示されるように, あるパターン ()の 振幅をもう一つの未知関数として加えることによって, 断面変形の自由度を有する梁理論が定式化できたことになる。
以上の変位場を仮想仕事式(極座標系で表現されたものが必要)に代入すれば,
すべての支配方程式を求められる。
通常の梁理論と違うのは,断面変形のパラメータが加わっていることで,
この変分から,断面変形に関する付加的な「つり合い式」を得ることになる。
定式化は冗長なので(間違っているかもしれないから。呵呵)省略すると,
つり合い式が
と求められる。一番上の式が,断面変形に関係したつり合い式である。
一方,境界条件は
となる。最初の二つの式が断面変形に関する境界条件である。
各断面力は次のように定義した。
また外力については,物体中の分布外力を, で定義し,
端面の表面外力を, , と定義した上で,
次のように定義した。
定義に応力ひずみ関係を代入すれば,断面力を変位および
断面変形のパラメータで表現できる。
ただし,微小ひずみの仮定から軸方向の伸びひずみを
(E.84) |
と近似した上で,応力ひずみ関係を
(E.85) |
と仮定した。ここにはYoung率で, はせん断弾性係数である。
これを用いて断面力と変位の関係をまとめると
となる。
最終的に以上の関係をつり合い式に代入すると,については4階の 常微分方程式になる。これはそのものとの境界条件が規定されている こととも対応している。したがって,ここでは示さないが, 以上の支配方程式に対応する仮想仕事式に戻って,にも適切な 「変位関数」を仮定すれば,有限要素の定式化もできる。もと 同様の3次の多項式が相応しいと考えられる。
例として,等曲げを受ける単純梁を対象としよう。ただし,
ダイアフラムを付けず,自由に断面変形できるようにする。
等曲げだから,モーメントと断面変形は方向には一定と考えていい。
そうすると,つり合い式(E.81a)は
となる。ここには曲率である。
ここで無次元曲率と無次元外力モーメントを
と定義しておく。
式(E.87)のモーメントと変形の関係から,
無次元外力モーメントは
となる。したがって,式(E.88) (E.90)から
外力モーメントと曲率の関係は
と求められる。この結果は図-6.16ある いは図-E.2のようになる。
これに対し,輪を扁平にしていく解析と曲げを連成させて
解析した研究[63]がある。そこで求められている断面変形を
ここで用いた変位成分で表すと
のように,曲率の高次項までが入った解になっている。 これと式(E.76)を比較すれば明らかなように,1次項は ここのアプローチと一致している。
そこで,式(E.92)のReissnerの解を
参考にして,をここで導入した断面変形のパラメータで置き換え
のような断面変形を仮定しよう。そうした上で,仮想仕事の原理から始めて
再度定式化し,つり合い式を解くと
となる。このとき断面力と変形の関係は
となるので,この式(E.94) (E.95)から, 式(E.91)より若干柔らかい応答が予測される。 そのようにして得た結果が図-E.2の「2次」であり, 最大外力曲げモーメントを文献の結果等と 比較したのが表-E.2である。