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12.6 変形の局所化予測

12.6.1 局所化条件

鋼の引張り試験では,降伏後にLüders帯 と呼ばれる筋が観察される場合がある。 多結晶体であることから,これは巨視的なすべり線として 認識されており,結晶方位とは無関係な向きに生じるせん断帯である。 これを予測する手法として, 文献[35]のアプローチを紹介しよう。

法線方向の単位ベクトルを$\fat{\nu}$とするある不連続面があり, その面上で局所的なすべりが生じているとすると, その不連続面を境に速度勾配には式(12.178)と同様に

\begin{displaymath}
\left\langle v_{i,j}\right\rangle = g_i \nu_j
\end{displaymath} (12.191)

という不連続量$\fat{g}$が生じる。 この $\langle v_{i,j} \rangle$は不連続面をはさむ$v_{i,j}$の 不連続量を表している。 しかしながら,連続体の枠組でこのような不連続現象をモデル化する 場合には,ちょうど節-9.5.2のすべり線理論の ように考えざるを得ず, 上述の速度勾配の不連続は「生じようとしている」変形として捉えることになる。 したがって連続体であり続ける以上は, この速度勾配の不連続面を境にした力の増分は連続していなければならないので, 式(12.129)の応力増分の境界条件を参考にして

\begin{displaymath}
\left\langle \nu_j \dot{n}_{ji}\right\rangle = 0
\end{displaymath} (12.192)

が成立しなければならない。$\dot{\fat{n}}$はnominal応力速度である。

材料がどのようにモデル化されていようと,形式的には構成則を

\begin{displaymath}
\dot{n}_{ji}=F_{jikl} v_{k,l}
\end{displaymath} (12.193)

のような関係に変換することができるので, これに式(12.191)を代入した上で式(12.192)に代入すれば, 応力増分の連続条件が

\begin{displaymath}
\left\langle \nu_j F_{jikl} \nu_l\right\rangle   g_k= 0
\end{displaymath} (12.194)

と表される。したがって,このような不連続$\fat{g}$が生じ得るための 必要条件が

\begin{displaymath}
\det\left\vert\nu_j F_{jikl} \nu_l\right\vert=0
\end{displaymath} (12.195)

のように求めることができる。 これが,変形の局所化の発生条件として知られている。 なお,式(12.191)で表される局所化した変形は, 物体中に例えば単独で発生するような不連続面に相当している。 したがって,構造部材の弾性座屈のような周期的な集中変形は あくまでも分散的な分岐解に相当していることから, 厳密には局所変形とは呼ばない。 文献[35]でも,一様な場の解から分散的な解への 分岐の方が先に生じることが述べられている。

ところで,微小変形理論の枠組で紹介したDruckerの 安定公準式(9.58)からは

\begin{displaymath}
\dot{\sigma}_{ij} \dot{\epsilon}_{ij}\super{p}\ge 0
\end{displaymath}

という条件が派生する。これに弾塑性接線構成則を代入すると

\begin{displaymath}
\dot{\epsilon}_{ij}\super{p} C_{ijkl}\super{ep} 
\dot{\ep...
...igma}_{ij}=C_{ijkl}\super{ep} \dot{\epsilon}_{kl}
\eqno{(*)}
\end{displaymath}

を得る。もし,弾性ひずみが無視できるほど小さく, 上式(12.191)のすべりが生じようとしているとすると

\begin{displaymath}
\dot{\epsilon}_{ij}\simeq\dot{\epsilon}_{ij}\super{p}=
\dfrac12 \left(g_i \nu_j+g_j \nu_i\right)
\end{displaymath}

が成立するので,これを上式($*$)に代入して整理すると

\begin{displaymath}
g_j \left(\nu_i C_{ijkl}\super{ep} \nu_l\right) g_k \ge 0
\end{displaymath}

がDruckerの安定材料の定義になる。この$\fat{g}$についての2次形式が 正値である条件は

\begin{displaymath}
\det\left\vert\nu_i C_{ijkl}\super{ep} \nu_l\right\vert\ge 0
\eqno{(**)}
\end{displaymath}

であり,この特異条件(等号の成立)が式(12.195)の局所化条件と 整合するように見える。 しかし,式(12.193)の$\fat{F}$は比例載荷であっても 材料と応力等の関数 $\fat{F}(\mbox{材料},\fat{\sigma},
\overline{\epsilon}\super{p},\cdots)$であるのに対し, 微小変形理論の $\fat{C}\super{ep}$は比例載荷では材料定数にしか 依存しない。 したがって式($**$)の等号成立は,材料そのものの不安定に相当し, 変形の局所化とは関係が無い。 したがって, 微小変形理論では一般に式(12.195)の局所化条件は成立しない。 微小変位理論で座屈が予測できないのと同じである。

12.6.2 代表的な例

一例として,節-12.5.4 (3)で 概説した非共軸モデルで予測される局所変形の応力レベルとすべり線の向きを 求めておこう。

準備中


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Iwakuma Tetsuo
Mon, 18 Feb 2013 12:50:55 +0900 : Stardate [-28]8120.80