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G.2 逆問題と境界要素法

G.2.1 逆問題の概念

全く理解していないので,おおまかな概念のみを記しておく。 興味を持った人は文献[101]を読んでください。 通常の順問題では,刺激$p$に対する応答$u$を求めようとする。 これに対し,逆問題 というのは,応答$u$から刺激$p$を推定しようとするのである。 広く知られている応用例は,内臓のエコー検査G.1である。 皮膚に当てた装置からある種の波を体内に送り出し,反射してきた波から 得られるデータを処理し,内臓の大きさや血液の流速等を測定する検査である。 社会基盤構造の場合は,鋼橋の溶接部の亀裂を 超音波探査すること等の非破壊評価 がこれに当たる。 この概念を式(G.5)を用いて簡単に説明すると, 右辺第1項のみを取り出し

\begin{displaymath}
\dfrac12 \bar{u}(\fat{x})=
\int_V G(\fat{x};\fat{\xi}) p(\fat{\xi})\dint\fat{x}
\end{displaymath} (G.6)

において,右辺の被積分関数の$p(\fat{x})$を,鋼中の亀裂や内臓を モデル化した散乱源と考える。これに物体表面から波を送る。 そして,左辺が物体表面のセンサーで測定した反射波のデータである。 そのデータを用いて,右辺の被積分関数の中の 散乱源$p(\fat{x})$を未知関数として解くのである。 この式(G.6)の積分方程式 を解いて$p(\fat{x})$を求める,つまり亀裂の大きさと場所, あるいは内臓の大きさ等を求めるというのが逆問題である。 積分方程式の例は,節-3.5.3 (2)にも示した。

G.2.2 離散化

式(G.5)が解ければ, 少なくとも境界での解を求めることができる。 一旦境界での解が決定されれば,その解を式(G.4)に 代入することによって, 領域内部任意点での解を求めることができる。したがって,何らかの方法を 用いて,この境界での値を求めることが第一である, というのが境界要素法 の目的となる。

境界要素法では,式(G.5)を有限要素法と同じように, ある関数を仮定することによって離散化し,その近似解を求めようとする。 つまり,未知関数$u(\fat{x})$をある既知関数と未定係数の積で与えるが, その未定係数としては物理的な意味のある,境界上での関数値を用いる。 一般的に記述すれば

\begin{displaymath}
u(\fat{x})=\sum_{i=1}^N u_i \phi_i(\fat{x}), \quad
f(\fat{x...
... f_i \psi_i(\fat{x}) \quad
\mbox{on  } \fat{x}\in \partial V
\end{displaymath}

と書いてもいいだろう。ここでは境界面に$N$個の節点を設け, その点( $\fat{x}=\fat{x}_i$, $i=1,2,\cdots N$)での 未知関数の値$u_i$, $f_i$を係数とする関数を上式で与えたと考える。 あとは,この試行関数を式(G.5)に代入すればよく, それは

\begin{displaymath}
\dfrac12 u_i=\dfrac12 u(\fat{x}_i)=
\sum_{j=1}^N\int_{\par...
...nt\fat{\xi}
= \sum_{j=1}^N\left[B_{ij} f_j-A_{ij} u_j\right]
\end{displaymath} (G.7)

となる。簡単のために分布外乱$p$を省略した。ここに

\begin{displaymath}
A_{ij}\equiv
\int_{\partial V} g(\fat{x}_i;\fat{\xi}) \phi...
...ial V} G(\fat{x}_i;\fat{\xi}) \psi_j(\fat{\xi})\dint\fat{\xi}
\end{displaymath}

と定義した。 式(G.7)の左辺を右辺に移項して整理すると, 境界上での積分方程式が最終的に

\begin{displaymath}
\sum_{j=1}^N\left[B_{ij} f_j-
\left(A_{ij}+\dfrac12 \delta_{ij}\right) u_j\right]=0
\end{displaymath} (G.8)

のような,離散化された代数方程式に変換できる。 ここに$\delta_{ij}$はKroneckerのデルタである。 与えられた境界条件の基でこの式を解けば, 境界上の$\fat{u}$を求めることができる。


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Iwakuma Tetsuo
Mon, 18 Feb 2013 12:50:55 +0900 : Stardate [-28]8120.80