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全く理解していないので,おおまかな概念のみを記しておく。
興味を持った人は文献[101]を読んでください。
通常の順問題では,刺激に対する応答を求めようとする。
これに対し,逆問題
というのは,応答から刺激を推定しようとするのである。
広く知られている応用例は,内臓のエコー検査G.1である。
皮膚に当てた装置からある種の波を体内に送り出し,反射してきた波から
得られるデータを処理し,内臓の大きさや血液の流速等を測定する検査である。
社会基盤構造の場合は,鋼橋の溶接部の亀裂を
超音波探査すること等の非破壊評価
がこれに当たる。
この概念を式(G.5)を用いて簡単に説明すると,
右辺第1項のみを取り出し
において,右辺の被積分関数のを,鋼中の亀裂や内臓を モデル化した散乱源と考える。これに物体表面から波を送る。 そして,左辺が物体表面のセンサーで測定した反射波のデータである。 そのデータを用いて,右辺の被積分関数の中の 散乱源を未知関数として解くのである。 この式(G.6)の積分方程式 を解いてを求める,つまり亀裂の大きさと場所, あるいは内臓の大きさ等を求めるというのが逆問題である。 積分方程式の例は,節-3.5.3 (2)にも示した。
式(G.5)が解ければ, 少なくとも境界での解を求めることができる。 一旦境界での解が決定されれば,その解を式(G.4)に 代入することによって, 領域内部任意点での解を求めることができる。したがって,何らかの方法を 用いて,この境界での値を求めることが第一である, というのが境界要素法 の目的となる。
境界要素法では,式(G.5)を有限要素法と同じように,
ある関数を仮定することによって離散化し,その近似解を求めようとする。
つまり,未知関数をある既知関数と未定係数の積で与えるが,
その未定係数としては物理的な意味のある,境界上での関数値を用いる。
一般的に記述すれば
と書いてもいいだろう。ここでは境界面に個の節点を設け,
その点(
,
)での
未知関数の値, を係数とする関数を上式で与えたと考える。
あとは,この試行関数を式(G.5)に代入すればよく,
それは
となる。簡単のために分布外乱を省略した。ここに
と定義した。
式(G.7)の左辺を右辺に移項して整理すると,
境界上での積分方程式が最終的に
のような,離散化された代数方程式に変換できる。 ここにはKroneckerのデルタである。 与えられた境界条件の基でこの式を解けば, 境界上のを求めることができる。