next up previous contents index
Next: G.2 逆問題と境界要素法 Up: G. 逆問題の「概念」と境界要素法 Previous: G. 逆問題の「概念」と境界要素法

最新版を正確に読む場合には pdf ファイル をどうぞ。これは web 検索のための簡易旧版です。


G.1 積分方程式への変換

G.1.1 問題の設定

これもよく,否,全く理解できていないトピックスであるが,1992年頃に 誰かに説明するために作った資料である。 そのあと,故北原道弘先生の授業「弾性波動論」を担当したときに, 文献[101]で勉強を試みたものの,挫折したトピックスである。 破壊力学とこの力学にはいまでも拒否反応しか感じない。

図 G.1: 解きたい問題と基本解

簡単のためにラプラス方程式を対象とする。

解きたい問題:
これは解こうとする境界値問題で
\begin{manyeqns}
&& \nabla^2 u(\fat{x})+p(\fat{x})=0 \qquad \mbox{in  } V
\ ...
...} \quad
\fat{\nu} \fat{\nabla}u=f \quad \mbox{on  }\partial V
\end{manyeqns}



(G.1)



で与えられるものとする。

基本解の問題:
こちらは 無限領域の境界値問題で, $\fat{x}=\fat{\xi}$点に 集中外乱 (つまりデルタ関数) が作用した問題のことで
\begin{displaymath}
\nabla^2 G(\fat{x};\fat{\xi})+\delta(\fat{x}-\fat{\xi})=0, ...
...
\mbox{with} \quad G \to 0 \quad\mbox{as} \quad x \to \infty
\end{displaymath} (G.2)

で与えられるものとする。 この基本解が,図-G.1右図の破線部分, つまり解きたい問題に相当する領域の境界部分($\partial V$)で

\begin{displaymath}
\fat{\nu} \fat{\nabla} G(\fat{x};\fat{\xi}) = g(\fat{x};\fat{\xi})
\qquad\qquad \mbox{on  }\partial V
\end{displaymath} (G.3)

のような関数値 $g(\fat{x};\fat{\xi})$を持つものとする。

G.1.2 積分方程式

この基本解を「仮想変位」と捉え,解きたい問題の仮想仕事式を求めよう。 式(G.1a)に式(G.2)の$G$を乗じて領域全体で 積分すると

\begin{displaymath}
0=\int_V G \left\{\nabla^2 u(\fat{x})+p(\fat{x}) \right\} \dint\fat{x}
\end{displaymath}

が成立するはずだ。 そこで,被積分関数第1項にGaussの発散定理を2回適用すれば

\begin{eqnarray*}
0&=&\int_V G (u_{,kk}+p)\dint\fat{x}
=\int_{\partial V} G (...
...fat{x}
+\int_V G_{,kk} u\dint\fat{x}
+\int_V p G\dint\fat{x}
\end{eqnarray*}

となるから,式(G.2)をこの第2項に代入すれば

\begin{eqnarray*}
0&=&\int_{\partial V}
\left\{ G (\nu_k u_{,k}) -G_{,k} \nu...
...k u\right\}\dint\fat{x}
-u(\fat{\xi}) +\int_V p G\dint\fat{x}
\end{eqnarray*}

となり,最終的に

\begin{displaymath}
u(\fat{\xi})=\int_V p(\fat{x}) G(\fat{x};\fat{\xi})\dint\fa...
...fat{\nu} \fat{\nabla}G(\fat{x};\fat{\xi})\right\}\dint\fat{x}
\end{displaymath}

という式が求められる。 これに,解きたい問題の境界条件式(G.1b)と 式(G.3)を代入すると

\begin{displaymath}
u(\fat{\xi})=\int_V p(\fat{x}) G(\fat{x};\fat{\xi})\dint\fa...
...)
-\bar{u}(\fat{x}) g(\fat{x};\fat{\xi})\right\}\dint\fat{x}
\end{displaymath} (G.4)

という式を得ることができる。 この式は,領域内の任意点$\fat{\xi}$の解を

  1. 分布外乱$p(\fat{x})$と基本解の仮想仕事(内積)と
  2. 領域表面における,外乱$f(\fat{x})$と基本解の 仮想仕事,および,基本解の見かけ上の外乱と$u$との仮想仕事

の和で表したことになる。

そこで,式(G.4)の $\fat{\xi}\to\partial V$の 極限を考えると,この式の左辺は境界上の解 $\bar{u}(\fat{\xi})$ ( $x\in\partial V$)を求める式になるが,右辺の被積分関数にも 境界の解$\bar{u}$が含まれていることから,これは積分方程式 になる。ところが,その極限はそんなに簡単ではない。 つまり,基本解は

\begin{displaymath}
G(\fat{x};\fat{\xi}) \to \infty \quad \mbox{as} \quad
\fat{x} \to \fat{\xi}
\end{displaymath}

という特性を持っているからである。 したがって,この $\fat{\xi}\to\partial V$の極限では, 式(G.4)の積分は特異積分になってしまうことに 注意しなければならない。 この積分については文献[101]を勉強して欲しい。 結果だけを写すと

\begin{displaymath}
\dfrac12 \bar{u}(\fat{\xi})=
\int_V p(\fat{x}) G(\fat{x};...
...) \right\}\dint\fat{x}
\quad \mbox{on  }\fat{\xi}\in\partial V
\end{displaymath}

となる(らしい)。 $\displaystyle \fint$はCauchyの 主値積分であることを指す。 元々の問題が自己随伴 であることから

\begin{displaymath}
G(\fat{x};\fat{\xi})=G(\fat{\xi};\fat{x}), \quad
g(\fat{x};\fat{\xi})=g(\fat{\xi};\fat{x})
\end{displaymath}

が成立する(相反定理)ので,上式は$\fat{x}$$\fat{\xi}$を入れ替えて

\begin{displaymath}
\dfrac12 \bar{u}(\fat{x})=
\int_V G(\fat{x};\fat{\xi}) p(...
...)\right\}\dint\fat{\xi}
\quad \mbox{on  } \fat{x}\in\partial V
\end{displaymath} (G.5)

とも表現できる。 これが,境界の解$\bar{u}$を求める積分方程式として解釈できる。


最新版を正確に読むためには pdf ファイル をどうぞ。これは web 検索のための簡易旧版です。
next up previous contents index
Next: G.2 逆問題と境界要素法 Up: G. 逆問題の「概念」と境界要素法 Previous: G. 逆問題の「概念」と境界要素法
Iwakuma Tetsuo
Mon, 18 Feb 2013 12:50:55 +0900 : Stardate [-28]8120.80