岩熊哲夫
2015年1月1日
参考: 2014 年に見つけた Northwestern Univ. 執筆要領
参考: 1983 年当時の Northwestern Univ. 執筆要領
参考: Stanford Univ. 執筆・提出要領 ( 公開されているスタイルファイルによる出力例 )
キーワード: 卒論 卒業論文 修論 修士論文 学位論文 博士論文 書き方 LaTeX スタイルファイル
秋田大学の後藤さんが面白い本[1]を出し, 私の文書も引用してくれたので,その引用部分だけをHTMLにしておいた。 印刷するならpdf版(12ページ)をどうぞ。 ワード(?)で編集するならdoc版(27ページ)をどうぞ。 ついでにもう一つ, 卒論生の勘違いというメモも作ってみた。 調子に乗って,1年生の勘違いというメモも作ってみた。 またまた調子に乗って,起承転結についてのメモも作った。 そして・・・学科・専攻内で簡単な説明会を開くことにした。 そのスライドです。ダウンロードして全画面表示 (Ctrl+L) でご利用ください。 スライドだけの配布は意味が無いと言っておきながら,しゃべる内容はここには置いておきません。私の頭の中にしかないので・・・すみません。
そうそう,最近,けっこう共感できる内容のページを見つけた。 楽に書く方法やいい論文を書く方法とか,論文を印刷して推敲すべきであることなどが書いてある。
なお,LaTeX で論文や概要を作る人は,スタイルファイルのページにある `ce-abstr.sty'(概要用)と `tu-civil.sty'(論文用)を利用してください。また 2014 年度に,社会基盤デザインコース系(構造・材料系)内で, 修士学生の発表の仕方や参加の仕方についての ルール を決めた。 発表等での一つの原則が書いてあるので参考になれば幸いである。
対象とした問題に対して,自らが得た結論までの過程を, 説得力があり誤解が生じないように論理的に組み直した上で記述して, その問題の分野を専門とする読者(卒業論文の場合は教員)に 報告する形式で表現することが,論文執筆の目的である。 それはレイアウトするという意味ではなく,内容を論理的に かつ誤解が生じないように記述することである。
最近,著者らが関係する学会論文集等への投稿原稿(査読時)でも 見られる悪い例として
等が挙げられる。こういったことが生じないように,まず この章の前半では, 論文執筆の目的に関連した必要最小限のアドバイスを与える。
また一般に,論文を投稿する際には 投稿先の論文集毎に詳細な執筆要領が決められており, それを守った原稿のみが受け付けられる。 ここには一例として,土木学会論文集を基本とし,それを若干拡張し, 審査対象になる論文が備えるべき最低限の執筆要領も記した。 また卒業論文等を念頭に置いて,最終審査会での プレゼンテーションの際の注意事項とマナーも列挙しておく。 なお文献[3]は,英語での執筆についてだけではなく, 論文の書き方についても役に立つ。 最近出版された秋田大学の後藤さんの 著書[1]ではこの章が引用されているが, 実はここの内容は元々,第一著者が学生のとき所属した研究室の 西野文雄・長谷川彰夫両先生(残念なことにお二人とも故人である)による 論文の執筆と発表の手引きを基本としたものである。
ひとつの論文はいくつかの「章」で構成され, それぞれの章の内容と目的等はお互いに少しずつ異なっている。 そして,各章の中身(題目)と章の順番は, 報告が容易に理解できるようになっていなければならない。 この中身(題目)と順番を最適にすることが, 論文執筆の最も重要な第1ステップである。 そして,原則としてまえがきと結語の章を除き,ひとつの章には 複数の「節」が存在する。 それぞれの節も,その内容と目的等はお互いに少しずつ異なる。 この節を章の中で,どのような題目でどのような順序で並べるべきかという点も, 論文を他人に理解してもらうために考慮すべき重要な点のひとつである。 ひとつの節には複数の「段落」で構成された文章が,論理的に並ぶ。 段落は,複数の「文節」でひとつのことを述べるように構成される。 こういった章・節の並びは,ワードプロセサを使う人にとっては, 書式構成あるいはレイアウト構成と思われがちだが, これは論理構成に沿って配されるべきものである。
そういう意味で,文節と文節は必要に応じて適切な接続詞で 関係付けられているべきである。 同様に,段落と段落の間にも,必要に応じて適切な接続詞を付すべきであろう。 しばしば段落の初めか前の段落の最後に, その段落で説明することについて予告編のような一文,例えば
次に,前述の○○の定義と△△モデルへの導入について説明する。
といった文を付ける者がいるが, それは論理的に文章が書けていないことを意味する。 そうするよりも,適切な接続詞を使って, 前の段落を受けて次にする説明そのものをすぐに始める方が読み易いし, 理解され易い。 また,そうなるように,お互いの段落の中身と表現が選ばれていなければならない。 わかり易い文章を書くヒントについては文献[4] (読むのは前半のみでいい)がたいへん役に立つので,是非読んで欲しい。 また,接続詞等の論理的な記述については,元々は英語の文章記述法では あるが,文献[2](英作文については今は読み飛ばしていい)が とても参考になる。
また過去に読ませてもらった修士論文等で時折見られたことであるが, 例えば
靭性(toughness)を確保するために・・
のように,英訳を括弧書きで記す学生がいる。 これは教科書中の説明のように, 初学者への情報提供の場合に用いる教育的手段であって, 卒業論文や修士論文のような,専門知識のある教員に 提出する報告書では使ってはいけない。 さらに,原則として脚注は用いないこととする。 これは,審査員や読者の読み方によっては,論文の論理の理解を一時的に 中断させる役割を持ってしまう可能性があるからである。 もし本当に重要な内容なら本文にきちんと 書くべきであり,それほどでもない内容ならそもそも書く必要は無いか, あるいは付録(補遺)に並べればいい。
また卒業論文等で,非常に多くの図表を並べる者がいるが, それが審査員の理解を深めるとは限らない。例えば
・・・の場合の結果を示した図12〜図31を比較すると,AがBであることが 明らかである。次に,図32〜図50には・・・AがBではない場合が あり得ることも予測できる。そこで・・・
といった表現を何度も読んだことがあるが,このような場合には, 自分が審査員になって一度に20枚もの図を 眺めさせられて,そのどこを比較すればいいかの記述も無いのに, たった一つの結論を理解せよと言われることを思い描いて欲しい。 そうすれば,このような文は無いに等しいことを理解できるはずだ。 結局,通常の出版されている論文1編に含まれている程度の 図表の数の範囲で,論理的に成果を報告すべきである。 したがって上の例は,例えば
・・・のパラメータを0.1として表4に示した20通りのの 値を用いた場合の結果をまとめて比較した図7からは,aであることや,bで あることが明らかなことから,cでありさえすればAがBであることになる。 一方,を0.5に固定して・・・比較した図8からはCがDである・・・ また図9と図10に示したのは,典型的な2種類のを用いた場合の 結果であるが,その比較からは,上述の「AがBである」結論は,限定された 条件のときにしか・・・
のようになるべきである。
また卒業論文等は,自分の研究の自分用の勉強メモではない。 すなわちそれは,やったことや学んだことをすべて, その過程の順番に沿って記しておくような備忘録ではなく, 専門家に提出する専門的な報告書であることに注意すべきである。 もし自分用あるいは研究室用の備忘録を作りたかったら,論文とは別に作成し, そちらには証拠となるすべての図や情報・プログラムをファイルするのが望ましい。 卒業論文や修士論文そのものは,そのできあがりがそのまま土木学会の 各種論文集への投稿原稿1編ないし2編程度になるように, 情報の適切な取捨選択と文章表現がなされるべきである。
卒業論文で時折見られることであるが,単にページ数を増やすだけの 目的で引用もしない情報を羅列する学生がいる。 例えば自分が研修をするのに必要だった勉強で得た知識や 既往の研究の結果を誘導する過程, つまり教科書や既発表論文に載っているような理論や式・説明を並べた節を 設ける学生がいる。 あるいは,自分が引用したい他人の式の誘導過程をすべてコピーして 論文に含める者もいる。 これは全く意味がない。というのも,前述のように, 論文は専門知識のある教員に提出する報告書だからである。 研修をするに当たって自分が勉強して理解した新しい知識の大半は 個人の備忘録に含めるべきであり,論文には載せるべきではない。 つまり本文中で引用しない情報は論文には含めてはいけない。
これに対し,自分の論文の位置付け等を述べるために,どうしても 教科書や他人の論文にある文章や式を論文中で用いなければならない場合には, 必要なものだけを,代表的なものだけを書く。 つまりこの場合も,誘導過程等の他人の成果をそのままコピーして論文に 載せることはしない。 さらに,引用文や式の箇所には,必ず引用した文献を記しておく。 また,他人の文章を引用する場合には,原文をそのまま引用符の中に入れて
誰某によれば「何野の○△理論を用いた モデル化からは・・・という結論にはな」り得ないことが 定説となっている。
のように表現する。 ただし,その際にも必ず引用した論文を,この例の「誰某」のように 明記する必要があり,その文献を文献リストに載せなければならない。 また引用した括弧の中の文字列は元の文章と寸分違わないように しなければならない。 上の例の場合の原文は「何野の○△理論を・・・結論にはならない。」になっていると 想定したため,「何野の・・・」から「・・・にはな」までしか 引用できないのである。
逆に,自分自身が得た成果は,そうであることを読者が 誤解無く理解できるように記述されなければならない。 つまり,他人のこれまでの成果との関係を明記した上で,この研究によって 明らかにされたことが何なのか,そのうちのいくつかは既存の結果と 同じなのか異なるのか等について,明確に判別できるような表現に なっていないといけない。 実はこのような,自分の成果と他人の成果を区別していないのではないかという 注意は,他専攻の教授からも苦情を聞いたことがある。 土木学会の論文集への投稿論文の査読を依頼されたその教授からは, 「土木の分野では, 他人の成果も自分のもののように記述していいのか。あるいは,どこが 自分の成果なのかを明示的にはしないのが慣習か」と問われたことがある。 十分に気をつけなければならない点である。
卒業論文・修士論文執筆では版下原稿を作ることを 目的とはしていないため,A4サイズの 用紙に,上下左右に十分なマージンをとった上で,英文で言うところの ダブルスペース程度で,例えば二バイト(全角)文字40字が24行程度で, 用紙片面に書くこととする。 ページ番号は,表紙から目次の最後までの前文ではローマ数字でiから振る。 本文は第1章から最後までをアラビア数字で振る。 前文のページ番号の配置は,表紙をiとするが表示しないものとし,それ以降は 下マージン中央あるいは上マージン右に置く。 本文のページ番号は,章タイトルのあるページは必ず下マージンの中央とし, それ以外のページは下マージン中央あるいは上マージン右とする。
前文には,表紙の次に, 修士論文の場合でもし必要なら審査員のリストを置くことができ, その次には論文概要を書く。 論文概要はまえがきではなく,章構成の説明文でもない。そこには, 論文の目的から結論に至るまでの論理的な流れが容易に理解できるように書く。 つまり,何が問題で,その対象をどうモデル化し,どういう観点から その問題解決を図ろうとしたか,そして得られた成果から主張できることは何か, についてを簡潔に述べ,審査員が概要のみを眺めて中身を容易に理解できるように すべきである。 もし謝辞を前文に置くなら,その次に挿入して,その後に目次を書く。 目次の最後には,表・図・写真の目次を置くこともできる。
本文の第1章は,例えば「まえがき」あるいは「序論」等で始める。 章は見出し番号を付して「1. まえがき」「2. モデル化」のようにする。 あるいは「第1章 まえがき」のようにしてもいい。 章の中の大きな節は両括弧の見出し番号を付して「(1) 解析対象」「(2) その数値 モデル」のような土木学会方式を使うか,あるいは,「2.1 解析対象」「2.2 その 数値モデル」のように章番号を付して使うかのいずれかとする。 節の中には,もう一段小さい節(「項」)を設けることができる。土木学会方式を 使う場合には「a) 構成モデル」「b) パラメータの定義」のようになるが, 章番号を使った節見出し番号を用いる場合には「2.1.1 パラメータの定義」 「2.1.2 その数値モデル」のようにする。 それより小さい節を使ってはいけない。 いずれの場合も統一をとる必要があり,上述の2種類を混在させてはならない。
最終章は「おわりに」あるいは「結論」「結語」等とする。 その後に,必要なら「補遺」あるいは「付録」を付けてもいい。 巻末に「参考文献リスト」を置く場合には,「補遺」の後とする。 また巻末に図表を並べる場合には,「参考文献リスト」の後に, 表・図・写真の順で,それぞれを引用される順に通しで並べる。 謝辞を前文に置かない場合には,本文の最終ページの次に, ページ番号を振らずに置く。 国際誌への投稿原稿のほとんどは,「前文」「本文」「付録」 「参考文献」「表・図・写真のキャプション一覧」 「表」「図」「写真」の順番であり, 上述の各オプションのうち,「参考文献」「表・図・写真」は 巻末にまとめる方式が多いので,これを原則としたい。 前文から本文の最後までの ページ構成を表1にまとめた。
文章は横組みとし,「です」「ます」調ではなく, この文書のような「だ」「である」調で結ぶ。 句読点に相当する区切り記号は,土木学会方式なら「,」「.」を用いるが, 文部科学省の横組み規則の「,」「。」を用いてもいい。 ただしいずれも全角を用いる。 もちろん,この2種類のうちの片方に統一しなければならない。 横組みには読点「、」は用いない。 全角のフォントは,組版の伝統を破る 「MS明朝P」等は使わず,「MS明朝」等を用いる。 それは,区切り文字に 「MS明朝P」や半角を使った場合には, 「横組み句読点の全角ドリ」の規則が守られず, 詰まってしまって読み難くなるからである。
英数字は,章番号や年号等も含めてすべて1バイト(半角)文字で書く。 そのフォントも「MS明朝」のような醜いものはやめ,`Times Roman'等の 適切な英数字フォントを用いる。 半角のコンマとピリオドは,英数字間および英数字の末尾にのみ許容される。 その際,コンマとピリオドは前の英数字に密着させ, コンマ・ピリオドの次には半角のスペースを必ず置く。 この「密着」と「スペース配置」のルールは,他の半角区切り文字の コロンやセミコロン等でも 同様である。中等教育で習っているはずなのに,最近守らない学生が多い。
[すべて間違い]`pen ,pencil,knife , eraser and ' [正しくは]`pen, pencil, knife, eraser '
[すべて間違い]「鉛筆と,紙を ,箱 に ,一緒に」 [正しくは]「鉛筆と,紙を,箱に,」
ところで,コロンを箇条書きの見出し記号として使う者もいるが, 行頭には区切り文字(いわゆる約物と呼ばれる文字類)は持ってこないことに なっているから,あまり好ましくない。
: このように行頭にコロンが来ることはない。
その代わり,コロンは前行の最後に位置する。
また,引用符は区切り文字までをひとくくりとすることになっており, 例えば``stimulus and response,''のようになる。 区切り文字と同様,引用符始めは次の文字列と, 引用符終わりは前の文字列と密着させ,スペースを入れない。 なお「"」の記号は引用符ではなく「インチ記号」なので使わない。 また引用記号は,必ず引用始めと終わりを対にして
間違った例: 半角: 'abc', ''def'', 全角: ’ほげ’,’ほげ’,”うほ大”,”うほ大”(MS Pゴシック等だとここは意図通りは表示されません。 どうりで最近間違いが多いんだな。このフォントはやはり「邪悪」かも。)
正しい例: `abc', ``def'', ‘ほげ’,“うほ大”のように用いる。
数式の記号は通常は斜体を使うのが普通であるので, それに相応しいフォントで書き, 文章中や図表中でその記号を用いる場合にも,誤解が生じないように, 式中で用いたフォントと全く同じか,あるいは非常によく似たフォントを用いる 必要がある。ただし,単位にはローマンを使う。 つまり のようになる。 また単位の接頭語のMN, GN等の`M'や`G'は大文字であるが, キロ(は`k')より小さい倍数の接頭語は小文字であることに注意する。
間違った例: , (これは「グラムニュートン?」 になる), Kg, KG
章や節見出しをゴシック(太字1)で書くのは構わないが, 本文中に明朝とローマンおよび数式フォント以外のフォントを用いるのは 原則禁止とする。また下線等の使用も禁止する。 半角のカタカナ「」や 全角1文字の「」「」等は (IE だと,xbm 画像は表示できないのかもしれない。 ここは文章から推測をするか,他のもっと良いブラウザでご覧ください。) 元々は機種依存の特殊文字で醜いフォントなので, 図表中やスライドの中であっても使用すべきではない。
式は出現順に,図表は引用する順に,次のいずれかの方法で 通し番号を振る。これも混在させてはいけない。
番号に章番号を用いる場合,中のピリオドはハイフンでもいい。 また「図」の次をハイフンにするかどうかも任意とする。 図表や写真には,上記の引用番号と一緒に,中身を適切に示すキャプションを 付さなければならない。表のキャプションは表の上に,図と写真のキャプションは 図・写真の下に配置する。
図表の配置は
こととし,引用しているページ付近にレイアウトすることはしない。 土木学会関係の論文集のようにレイアウトして版下を作る場合には,A4サイズの できあがりサイズで文章そのものを組むことが求められているために, 図表をレイアウトしても見通しが悪くならないが, 卒業論文のような場合には,論文草稿のスタイルをとり, 行間隔を広くして執筆しているため, 図表を文章途中に挿入すると読む側の見通しが悪く2なる。 そのため,文章途中ではなく,巻末あるいは章末にまとめることとする。
図表や写真がA4横長向きになる場合には,「左綴じ上綴じ」の原則を 守るようにする。すなわち,図表や写真を正しい向きに見えるように置いた場合に, その綴じ代が左か上に来るように綴じるのが必須である。 これは用紙サイズがA3になって折り込む場合等も同様である。
論文で最も重要なもののひとつが「参考文献リスト」である。 参考文献リストは,巻末にまとめるか,あるいは章末に 置いてもいい。通常,図表を章末に置く場合には,その章の最後の節の 次に参考文献リストを置き,その後に図表を並べる。 そうでない場合は,参考文献リストは巻末にまとめるのが望ましい。
本文中で著者名を用いて引用する場合には,著者が2名以下の場合には すべての著者名を書いた上で引用する必要があるが,3名以上の 場合には,「第1著者名ら」`First-Author et al.'として引用してもいい。 ただし,文献リストでの著者名の省略は許されないし, 「著者中の大物の名前ら」で引用することも許されない。 また,文献リストに ある「4) 鈴木・山田」の論文と「7) 鈴木・熊谷・佐藤」の論文で, たとえ両方の鈴木が同一人物だったとしても,「鈴木ら」と 引用することは許されない。この場合は別々に引用するか, 「文献」のようにする。
文献リストには,著者名・論文名・論文集名・巻・開始ページと最終ページ・発行年を すべて含め,審査員や読者がその文献を間違い無く探し出すことが できるようにする。地盤工学会の`Soils and Foundations' のように, 同じ巻の異なる号ですべて第1ページから始まるような場合には,巻の次に号を 書く必要があるが,同じ巻では通しでページが振られている多くの論文集の場合は 号を書く必要は無い。また発行月も原則不要とし,付ける場合にはリストに あるすべての文献に付けることとする。 著書の場合は,著者名・著書題目・必要なら引用部分の ページ番号・出版社名・発行年を書く。 欧米語の論文集名と著書題目はイタリックにすることを原則とする。 また,欧米語の論文題目は最初の単語の1文字目だけを大文字とし, 固有名詞以外の最初の文字は小文字とする。 もちろんドイツ語やフランス語等の大文字の使い方の方が優先する。 一方,欧米語の著書名の主な単語の最初の文字は大文字にする。 また論文集名を略称にする場合には,リストすべての文献のそれを略称に しなければならない。同様に,略さない場合には,すべての文献で略さない。 引用の仕方と各文献リスト内の項目の順番は, 次の二つの方式のいずれかに統一する。
参考文献には,本文で引用した順に1から番号を付ける。引用する場合には
これこれの手法については文献に詳しいが,南野は 次のようにも・・・のようにする。この場合,文献リストは
参考文献
のようになる。最近の国際誌での著書リストでは,出版社所在地は 略すようなので,ここでも略した。 章末に文献リストを置く場合,番号に章番号を付ける必要はないが, 他の章の文献を引用してはならない。つまり,章末に文献リストを置く場合, 同じ文献を複数の章で引用していたとしても,それはそのいずれの章のリストにも 重複して並べられていなければならない。
例えばHarvardスタイル等(TEXの場合の`natbib.sty'の利用)の場合を参考にして, 論文リストには著者のアルファベット順に並べる。 引用する場合には
これこれの手法についてはFoo et al.(2002)が詳しく述べているが,ここで 用いているパラメータは実験(Chen and Dvorak, 1992; 山田,鈴木, 1999b)に よったものであるのようにする。この場合の文献リストは,例えば
参考文献
のようになる。同一著者の同一年の出版年の表示の区別に注意する。 また巻号の号が必要な場合は括弧書きになる。 著者欄の`and'を省略することもあるようだが,ここでは残した。 上の順番は言語によらず著者のローマ字表示でのアルファベット順にしたが, 例えば,非日本語の論文をアルファベット順にまず並べた後に,日本語論文を 五十音順に並べてもいい。
最近は論文の公開pdfファイルから直接,あるいはスキャナですぐに他人の図表を ファイルに取り込めるため, その図表の作成者に断りなく論文にそのままを使う人がいて困っている。 プレゼンテーションで使う程度ならまだ許容される(望ましくはない)だろうが, 印刷物に他人の作成した図を許諾なく用いるのは許容されない。 必ず,論文提出の前の日までに,指導教員を通したEmail連絡でいいから, 著者の許諾を受けておき,図2のキャプションに例示したように, 許諾のことを明記する。 実験装置のマニュアル等にある図も同様である。 もし許諾が得られない場合には,必ず,自ら描きなおす必要がある。 そのときも,複製したい図とできるだけ似ないようにする必要がある。 ほとんどすべての図と写真については,作成者・撮影者が その著作権を有していると考えて欲しい。 ただし,公開されている地震波等はこれには当たらない。
きちんとした出版社によって発行されている雑誌では, 投稿された図表を出版社自身が加工して, より鮮明になるような作業をすることがある。 そのため,図表はできるだけ大きめの(解像度の高い)図になっている ことが望ましい。したがって,できるだけ太い線を用いて,A4サイズの用紙に 図が1枚ないし4枚程度までになるような作図をして欲しい。 つまり図は,ソフトの出力に工夫を加えずにデフォルトのまま 使うことはしないようにして欲しい。常に,以下に示すような 留意点を考えながら作図する必要がある。 また上下左右のマージンは本文のそれと同等にし, すべてのページにページ番号を振る。
まず,図の枠線あるいは座標線を0.2mm程度の細い線で描くこととする。 そして,この図を引用している文章の説明中で最も重要な研究結果を示す線を, 最も太い実線で描く。太さは0.8mm程度が望ましい。これと比較する重要な情報は, 同じ太さの破線や点線・一点鎖線等で描く。それよりも重要度の 低いものは,中間の太さ0.4mm程度の線で描く。 参考程度の情報は0.2mm程度の細い線で描けばいい(図1参照)。 このように,最低でも3種類の太さの線を使い分ける必要がある。 これで12種類のデータをひとつの図に,モノクロであっても 区別して描くことができる。 それ以上の種類のデータを,たとえカラーにして同じ図に並べたとしても, それで中身の理解が深まるとはとうてい思えない。10種類以上の 情報を比較する場合には,着目する観点毎に選択されたデータのみを 複数の図に分けて説明する方が説得力はあるだろう。 プレゼンテーションではカラー化することは効果的であるが, カラーにするのは,上記の実線・破線・点線等の区別に相当するものと 考えて欲しい。カラーの線でも太さを使い分ける等,注意して欲しい。 太さを設定できないソフトは捨てましょう。 図そのものの作成については文献[3]も非常に参考になる。
最後に,言語のことに触れておきたい。図1は, 図中の文字は英語になっているが,これはひとつの例として示したものである。 土木学会論文集では,英語の論文は英語で,日本語の論文は日本語で図表(表も)を 作成することになっている。昔,製図機器で描画していたときは,日本語を 清書する器具が無かったことや,墨入れの手間とあとで国際論文集に 投稿することを考えて,英語の文字プレートを使って浄書していたため, 図中の文字列にはほとんど英語を用いていた。今は,どんなソフトでも 日本語で入力できるだろうから,手間を惜しまず,日本語の論文には日本語の 図表を入れるようにして欲しい。指導教員がどうしても英語でという指示が あったときには英語でも構わないが,一言「先生,そんな横着しなくても, 国際誌に出すときはまた書き直してあげますよ。」と 言ってみたら3どうだろう。
近年,プレゼンテーション用のソフトが充実し,見易いスライドが増えてきては いるが,それでも自己満足で独りよがりのスライドも散見される。 発表する本人は中身を十分に理解しているから, 小さい字でたくさんの情報が書かれていても,また論文中で用いた 記号で各種設定を区別してあっても,何も問題を感じないだろう。しかし, 指導教員以外の先生や,少し分野の違う教員にとっては,全く理解の足しに なるスライドにはなっていないことが多い。 スライド作成に当たっては,最終審査会に参加すると予想される教員の 中で,最も専門分野が異なる先生に説明する状況を念頭に置くのが望ましい。
ここに記載するマナーは,プレゼンテーションの 目的が卒業・修了研修の最終審査であることを 念頭に置いて設けたものであり,短い時間で 効果的に学生の能力を判定するために設けられている。 したがって学生は,尊大な態度で 臨むことのないようにして欲しい。前の人の発表が終わってから ゆっくりと椅子から立ち上がり,スクリーンの前で準備を始め, タイマーが動き始めて司会が「どうぞ」と言ったにもかかわらず, まだ発表を始めない学生がときどきいるが,とても困った人,つまり 卒業・修了の対象にはならない学生だと判断される。
これは論文の審査会であって,研究打ち合わせや中間発表ではないから,教員からの コメントは原則として禁止する。もし興味を持った論文の発表者にコメントを 与えたい場合には,休み時間にすればいい。 時間が限られているので,次のような質問の仕方とする。
なお,意味のある最終審査会にするためには,日本人の場合は日本語による プレゼンテーションと質疑応答にするべきである。