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図-11.12のように,方向に進む波であるが,
その振幅が方向に向かって指数関数的に小さくなるような波が
存在できるかどうかについて考えてみよう。
ここではは下向きを正にしてあり,の水平面は自由表面とする。
この運動に対応した変位成分
の存在の可能性を検討しようとしている。
ただし,深くなるほど振幅は小さくなるものと考えるため,少なくとも
境界条件はで, であるから,
ひずみの定義とHookeの法則を用いれば
になる。また運動方程式は式(11.15)から
である。式(11.56)を式(11.59)に 代入して の 係数同士を比べると
が成立しなければならない。したがって
つまり
でなければならない。右辺が零なので,解が存在するためには,
この式の係数行列が特異でなければならない。つまり
にとの定義を用いれば
であればいいことになる。これを整理すると
を満足するようなと, が存在すれば,表面波の存在が可能になる。
この式から,まず
という関係が成立する。
であり,
式(11.57)のようにでなければならないことから,
この式(11.62)の形は
であることを示唆している。
式(11.60)も, を用いて書き直すと
とも書き表すことができるので,これに式(11.62)を代入すると
と求められる。この関係を用いると,変位成分は
と求められる。
あとは波の速さを決定すればいいわけだが,その方程式は境界条件から
求めることができる。つまり,式(11.63)を
境界条件式(11.58)に代入すれば
となり,, を用いると
と書き換えられる。これを整理すると
と書き表すことができる。つまり
が, として意味のある解を与えれば,表面波が存在できることになる。
したがって,この上式の係数行列が特異になる条件から
つまり
が成立しなければならない。この式の解がRayleigh波の
速さである。ここで
に対して
であることから,
に少なくとも一つの
実数解を持つことが期待できる。
さらに複素関数論における「偏角の原理
11.5」から,は2個の実数解しか
持たないことが証明でき,がの
関数であることから,その2個は符号のみが異なる二つの解であることがわかる。
したがって,Rayleigh波の速さは
を満たすものとして唯一に決定できる。 このような表面波は,地震が終わったあとに地球を一周して到達することがあると されている。
前節のRayleigh波はSV波的な表面波であったが,
では,表面SH波は存在するだろうか。式(11.56)と
同様の面外変位を
と設定して確かめてみよう。運動方程式で意味のあるのは方向の
のみであるから,これに上式を代入して
を
考慮すると,
の係数同士の
等価性から
と求められる。また,境界条件はでつまりで
あるから
となり,であるためには
しかあり得ないことになる。つまり,面外波の表面波は存在しないことになる。
しかし,もし図-11.13のように表面近くに
材料特性が異なる層が存在した場合には,面外の表面波が存在し得ることが
わかっている。
そのような波をLove波と呼ぶ。そこで,変位を
と仮定する。ここにとは式(11.67)を満足しているものとする。
境界条件は
であり,におけるとの
連続条件は,
に対して
で与えられる。運動方程式は式(11.66)を書き直して
である。
ここには表層の波速で
(11.72) |
と定義した。
まずの運動方程式に式(11.68)の第2式を代入すると,
式(11.67)が求められる。
次に層の中を考えよう。式(11.68)の第1式を式(11.71)に
代入すると
となるので,は
を満足しなければならない。
したがって
と求められ
を得る。
次ににおける境界条件にこの解を代入すると
から
を満足しなければならない。
またにおける連続条件は,式(11.70)に
式(11.68)の第2式と式(11.74)を
代入して,
の係数同士を
比べれば
になる。したがって,式(11.75) (11.76)からを
消去した残りの2式を並べると
となるから,意味のある, が存在する条件が
となる。これに式(11.67) (11.73)のとを
代入して得られる
が,Love波の速さを決定する方程式になる。
のとき
式(11.77)は
となるので, に一つの解が 存在することが期待できる。
この結果は,いままでの位相速度が持つ特徴とは かなり違っていることに気付いて欲しい。 平面波やRayleigh波の場合には,位相速度は波の 波数あるいは周波数 とは独立であった。 しかしLove波の場合は,式(11.77)から 明らかなように,がの関数になる。したがって,複数の異なる波数で できたLove波が伝播するときには,波数毎に異なる位相速度で伝わるため, 最初の波の形が崩れながら移動することになる。 このような波は分散的 であると呼ばれる。