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複合構造の高精度解析理論と解析手法

研究概要

構造解析において通常用いられる梁要素は,断面変形を無視した平面保持を仮定する初等梁理論に基づいていますが,対象構造や部材の形状によっては断面変形の影響を無視できない場合があります。 その例としては,アーチ系橋梁や斜張橋等の規模の大きな橋梁に用いられることが多い,支間長に対して幅員が大きな薄肉の幅広断面部材が挙げられます(図-1)。 このような断面では,フランジ部で面内せん断によるせん断遅れ変形,ウェブ部で面外せん断により断面変形が顕著に発生し,断面の主桁部では,初等梁理論によって求められる橋軸方向直応力よりも大きな応力が生じます(図-2)。


図-1 斜張橋の補剛桁

図-2 薄肉幅広断面部材の断面変形

そこで,当研究室では均質化法に基づき代表体積要素から数値的に求めた変位モードを解析的手法に組み込むことで,断面変形の影響を考慮できる梁理論の定式化と梁要素の開発を行っています。 この梁要素を用いることで,従来ではシェル要素や連続体要素などを使ってモデル化する必要があった構造に対しても,自由度の小さいモデルで精度の良い結果を得ることができます。


また,橋梁等の構造物の有限要素解析において,剛結部や支点部などの局所的な変形が生じる部分には連続体要素,断面が一様である部分は梁要素を用いてモデル化することで,モデル全体の自由度を低減させ, 計算効率を向上させる場合がありますが,平面保持を仮定した初等梁理論に基づく梁要素を用いると,連続体要素と梁要素の接続部において変位場の不整合が生じ,その位置の解析精度が低下してしまうことが知られています。 一方,当研究室が開発している梁要素を用いることで,この不整合を解決することができ,計算コストを抑えながら高精度な解析を行うことができます。


研究キーワード

Timoshenko梁,断面変形,せん断遅れ,横せん断,Poisson効果,均質化法

研究成果

学術論文

  1. 青木洋樹, 斉木 功, 大竹 雄, 三井涼平,せん断遅れによる付加的な応力評価のための機械学習による断面特性推定,土木学会論文集, Vol.79, No.15, 2023.
  2. 斉木 功, 田淵 航,Poisson効果による断面変形を考慮した梁理論,土木学会論文集A2, Vol.77, No.2, pp.I_59-I_68, 2021.
  3. 斉木 功, 鄭 勲,せん断遅れと横せん断による断面変形を統一的に考慮した梁理論,土木学会論文集A2, Vol.77, No.1, pp.1-11, 2021.
  4. 星屋美優, 斉木 功, 山本剛大, 断面変形を考慮した梁要素と 連続体要素の接続に関する検討, 土木学会論文集A2, Vol.76, No.2, pp.I_183-I_191, 2020.
  5. 斉木 功,鄭 勲,山本剛大, 断面変形を梁のせん断変形と独立に考慮した梁理論, 土木学会論文集A2, Vol.75, No.2, pp.I_3-I_12, 2019.
  6. 斉木 功, 藤本竜太, 山本剛大, 非均質断面梁のせん断剛性評価に用いる断面の回転に関する一考察 土木学会論文集A2, Vol.74, No.2, pp.I_3-I_11, 2018.
  7. 斉木 功, 西井大樹, 山本剛大, 任意断面のせん断遅れを考慮できる梁要素, 日本計算工学会論文集,Vol.2018, No.20180013, 2018.
  8. 斉木 功,新井晃朋,山本剛大,岩熊哲夫, 非均質断面梁のせん断剛性評価に関する一考察, 土木学会論文集A2, Vol.73, No.2, pp.I_23-I_31, 2017.
  9. 斉木 功,西井大樹,岩熊哲夫, 任意断面梁のせん断遅れ解析の高精度化, 土木学会論文集A2, Vol.72, No.2, pp.I_53-I_62, 2016.
  10. 斉木 功,西井大樹,岩熊哲夫, 任意断面梁のせん断遅れ解析のための半解析的手法, 土木学会論文集A2, Vol.71, No.2, pp.I_11-I_18, 2015.
  11. 斉木 功,鑓 一彰,山田真幸,瀬戸川敦,岩熊哲夫, 非均質なTimoshenko梁の平均物性評価, 土木学会論文集A2,Vol.68, No.2, pp.I_161-I_169, 2012.

学位論文

  1. 須田陽平,ねじりによる断面変形を考慮した梁理論の定式化と有限要素の開発,修士論文,2022.
  2. 青木洋樹,せん断遅れによる付加的な応力評価のための機械学習による断面特性推定,卒業論文,2021.
  3. 田淵航,Poisson 効果を考慮した一般化梁の定式化とその有限要素の開発,修士論文,2020.
  4. 星屋美優,断面変形を考慮した梁の動的特性に関する基礎的検討,修士論文,2020.
  5. 三井涼平,断面変形を考慮した梁理論に基づくせん断遅れによる付加的な応力の評価,卒業論文,2020.
  6. 鄭 勲,せん断に伴う断面変形を考慮した梁理論の一般化に関する検討,修士論文,2018.
  7. 星屋美優,断面変形を考慮した梁要素と連続体要素の接合に関する検討,卒業論文,2018.
  8. 藤本竜太,非均質断面梁のせん断剛性評価に用いる断面回転に関する考察,卒業論文,2017.
  9. 新井晃朋,軸方向に非均質なTimoshenko 梁のせん断剛性評価に関する一考察,修士論文,2016.
  10. 西井大樹,均質化梁理論によりせん断遅れを考慮した一般化梁の定式化とその有限要素の開発,修士論文,2016.
  11. 西井大樹,周期境界条件を用いたせん断遅れの半解析的手法に関する基礎的検討,卒業論文,2014.
  12. 林幹大,セル状サンドウィッチパネルの平均的せん断特性評価に関する考察,卒業論文,2012.
  13. 瀬戸川敦,せん断変形を許容する非均質平板の平均物性評価,卒業論文,2011.
  14. 鑓 一彰,複雑な微視構造を持つ梁の平均物性評価,卒業論文,2010.
  15. 井上大資,非均質梁の数値的平均物性評価に関する基礎的検討,卒業論文,2009.
  16. 村上和也,網状構造の非線形マルチスケール解析,卒業論文,2008.
  17. 本田宏孝,面外曲げを受ける平面セル構造体の非線形マクロ・ミクロ連立解析,修士論文,2007.
  18. 本田宏孝,面外局部座屈を考慮した平面セル構造体の非線形マルチスケール解析,卒業論文,2005.

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