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J.4 極座標における物理成分

注意して欲しいのは,例えば図-J.1の 斜交座標のときの基底ベクトル$\fat{g}^i$が,式(J.9)で 示したように単位量ではないこと等である。 つまり,基底ベクトルを含むテンソル自体, 例えば $\fat{u}=u^i \fat{g}_i$そのものが物理量であるのは間違い無いが, その成分$u_i$は必ずしも物理的な量であるとは限らないことだ。 そこで,極座標($\xi^1=r$, $\xi^2=\theta$, $\xi^3=z$)の場合の各量を 文献[24]から引用して列挙してみよう。 基底ベクトルが

\begin{displaymath}
\fat{g}_r=\fat{i}_1 \cos\theta+\fat{i}_2 \sin\theta, \quad...
...t{g}_\theta=-\fat{i}_1 r \sin\theta+\fat{i}_2 r \cos\theta
\end{displaymath} (J.23)

となる。 $\fat{g}_\theta$は長さの次元を持っていることに注意する。 これから計量テンソル成分は

\begin{displaymath}
g_{rr}=1, \quad g_{\theta\theta}=r^2, \quad
g^{rr}=1, \quad g^{\theta\theta}=\dfrac{1}{r^2}
\end{displaymath} (J.24)

であり,Christoffelの記号が

\begin{displaymath}
\Gamma_{r\theta\theta}=r, \quad
\Gamma_{\theta\theta r}=-r, ...
...ma^r_{\theta\theta}=-r, \quad
\Gamma^\theta_{r\theta}=\dfrac1r
\end{displaymath} (J.25)

と表される。 これを用いて応力表示のつり合い式 $\left.\sigma^{ji}\right\vert _j+f^i=0$を 誘導すると次のようになる。

\begin{manyeqns}
&&\D{\sigma^{rr}}{r}+\dfrac{\sigma^{rr}}{r}
+\D{\sigma^{r\thet...
...^{rz}}{r}+\D{\sigma^{z\theta}}{\theta}
+\D{\sigma^{zz}}{z}+f^z=0
\end{manyeqns}



(J.26)



ここに$f^r$, $f^\theta$は それぞれ$\fat{g}_r$, $\fat{g}_\theta$方向の体積力である。 ただし,ここの応力テンソルや体積力ベクトルの 成分は,$\fat{g}_r$, $\fat{g}_\theta$方向の成分であり, 特に後者の基底ベクトルは式(J.23)からも 明らかなように長さの次元を有していることから, 必ずしも物理的な成分にはなっていないことに注意が必要である。 そこで,それを調整した物理的な成分を

\begin{displaymath}
\tau^{rr}\equiv\sigma^{rr}, \quad
\tau^{r\theta}\equiv r\si...
...quiv f^r, \quad q^\theta\equiv r f^\theta, \quad
q^z\equiv f^z
\end{displaymath} (J.27)

と定義して上式を書き直すと

\begin{manyeqns}
&&\D{\tau^{rr}}{r}+\dfrac1r\D{\tau^{r\theta}}{\theta}
+\dfrac{...
...}}{r}+\dfrac1r\D{\tau^{z\theta}}{\theta}
+\D{\tau^{zz}}{z}+q^z=0
\end{manyeqns}



(J.28)



のような,よく知られた物理的な量で表したつり合い式を得ることができる。


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Iwakuma Tetsuo
Mon, 18 Feb 2013 12:50:55 +0900 : Stardate [-28]8120.80