next up previous contents index
Next: J.2 計量テンソルと置換テンソル Up: J. テンソル演算について Previous: J. テンソル演算について

最新版を正確に読む場合には pdf ファイル をどうぞ。これは web 検索のための簡易旧版です。

J.1 座標と基底ベクトル

図 J.1: 斜交座標
\begin{figure}\begin{center}
\unitlength=.25mm
\begin{picture}(218,161)(136,-5)
...
...dfrac{P^1+P^2\cos\alpha}{\sin\alpha}$}}
%
\end{picture}\end{center}
\end{figure}

文献[24]とそれを用いた西野教授の「応用弾性学」の 講義で習ったことのうち,なんとなくの印象を得ることができる部分を 列挙してみた。本当は, 斜橋等の設計では斜交座標系で,曲線橋等の設計では直角座標ではない座標系で 力学を論ずる必要がある。図-J.1のような 斜交座標を考え, 下添え字のベクトル$\fat{g}_i$ ($i=1$, 2)はその方向の単位の基底ベクトルとする。 図のように,下添え字の単位長さの 基底ベクトル$\fat{g}_j$の成分を上添え字を付けて定義し, それを反変成分 と呼び,任意のベクトルを

\begin{displaymath}
\fat{P}=P^1 \fat{g}_1+P^2 \fat{g}_2
\end{displaymath} (J.1)

のように成分表示(分解)できると考える。 さて図には描いていないが,水平($x$)方向の単位基底ベクトルを$\fat{i}_1$とし, 鉛直($y$)方向の単位基底ベクトルを$\fat{i}_2$とすると, ベクトル$\fat{P}$の水平($x$)方向および鉛直($y$)方向成分$P_x$, $P_y$は それぞれ

\begin{displaymath}
P_x=P^1+P^2 \cos\alpha, \quad P_y=P^2 \sin\alpha
\end{displaymath}

になるので,$\fat{P}$が力で$\fat{u}$が変位だった場合には, 仕事$W$は二つのベクトルの内積で定義され

\begin{displaymath}
W=\fat{u} \fat{P}=\left(u^1+u^2 \cos\alpha\right)
\left(P^1+P^2 \cos\alpha\right)
+u^2 \sin\alpha P^2 \sin\alpha
\end{displaymath}

となることから

\begin{displaymath}
W=\fat{u} \fat{P}=\left(u^1+u^2 \cos\alpha\right) P^1+
\left(u^2+u^1 \cos\alpha\right) P^2
\end{displaymath} (J.2)

と書くことができる。

一方,上式(J.2)を眺めながら

\begin{displaymath}
u_1\equiv u^1+u^2 \cos\alpha, \quad
u_2\equiv u^2+u^1 \cos\alpha
\end{displaymath} (J.3)

と定義すると,仕事は

\begin{displaymath}
W=\sum_{i=1}^3 u^i P_i
\end{displaymath} (J.4)

と書くことができている。実は,式(J.3)の下添え字を 付した成分は,図の上添え字の基底ベクトル$\fat{g}^i$ ($i=1$, 2)の成分で, 式(J.1)に対応して,任意のベクトルが

\begin{displaymath}
\fat{u}=u_1 \fat{g}^1+u_2 \fat{g}^2
\end{displaymath} (J.5)

のようにも成分表示(分解)できるのである。 この下添え字の成分を共変成分 と呼ぶ。

さて,上式(J.2)の仕事は

\begin{displaymath}
W=u^1 \left(P^1+P^2 \cos\alpha\right)+
u^2\left(P^2+P^1 \cos\alpha\right)
\end{displaymath} (J.6)

とも書くことができる。ここで

\begin{displaymath}
P_1=P^1+P^2 \cos\alpha, \quad
P_2=P^2+P^1 \cos\alpha
\end{displaymath} (J.7)

と書くことにすると,これは式(J.3)との比較からも 明らかなように,$\fat{P}$の共変成分である。 つまり

\begin{displaymath}
\fat{P}=P_1 \fat{g}^1+P_2 \fat{g}^2
\end{displaymath} (J.8)

となる。さて図からも明らかなように,$\fat{g}^i$は 単位長さではなく $\dfrac{1}{\sin\alpha}$の 長さを持っており,2種類の異なる基底ベクトル同士は直交し

\begin{displaymath}
\left\vert\fat{g}^i\right\vert=\dfrac{1}{\sin\alpha}, \quad
\fat{g}^m \fat{g}_n=\delta^m_n
\end{displaymath} (J.9)

の関係が成立する。ここに$\delta^m_n$はKroneckerのデルタである。 結局仕事は

\begin{displaymath}
W=\sum_{i=1}^3 u_i\fat{g}^i P^j\fat{g}_j=
\sum_{i=1}^3 u_iP...
...
\sum_{i=1}^3 u_i P^i=\sum_{i=1}^3 u^i P_i=u_i P^i=u^i P_i
\end{displaymath} (J.10)

と書くことができる。ただし,右二つの式にあるように 通常は$\sum$の記号を省略し,同じ添え字が上下に2回出てくる場合にのみ, それは1から3まで総和をとる(総和規約 )ものとする。

さて$\fat{g}_i$方向の座標を$\xi^i$と記すことにすると, 水平・鉛直の直角座標の$x^i$との間には

\begin{displaymath}
x^1=\xi^1+\xi^2 \cos\alpha, \quad
x^2=\xi^2 \sin\alpha,
\end{displaymath} (J.11)

の関係がある。実は基底ベクトルは

\begin{displaymath}
\fat{g}_i=\D{x^j}{\xi^i} \fat{i}_j
\end{displaymath} (J.12)

とも定義される。具体的に式(J.11)を代入すると

\begin{displaymath}
\fat{g}_1=\fat{i}_1, \quad
\fat{g}_2=\cos\alpha \fat{i}_1+\sin\alpha \fat{i}_2
\end{displaymath}

のように,幾何学的に求められるものと一致する。 これはどちらも無次元の単位ベクトルであるが, 式(J.9)のように$\fat{g}^i$は単位ベクトルではないことには 注意する。


最新版を正確に読むためには pdf ファイル をどうぞ。これは web 検索のための簡易旧版です。
next up previous contents index
Next: J.2 計量テンソルと置換テンソル Up: J. テンソル演算について Previous: J. テンソル演算について
Iwakuma Tetsuo
Mon, 18 Feb 2013 12:50:55 +0900 : Stardate [-28]8120.80