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C.2 梁の微小変位理論

C.2.1 変位場

変位場は章-4に示したように, 基本的な二つの仮定から式(4.5)となる。つまり

\begin{displaymath}
u_x(x,z)=u(x)-z  w'(x), \quad u_y(x,z)=0, \quad
u_z(x,z)= w(x)
\end{displaymath} (C.2)

である。ここにプライムは$x$に関する微分を表す。 これに対して零でないひずみ成分は 式(4.6)の$\epsilon_{xx}$のみで

\begin{displaymath}
\epsilon_{xx}(x,z)=u'(x)-z w''(x)
\end{displaymath} (C.3)

となる。この2式の関係式の変分量を算定しておくとそれぞれ

\begin{displaymath}
\delta u_x=\delta u- z  \delta w', \quad
\delta u_z= \delta w
\end{displaymath} (C.4)

および

\begin{displaymath}
\delta \epsilon_{xx}=\delta u'-z \delta w''
\end{displaymath} (C.5)

となっている。

C.2.2 仮想仕事式

梁の場合は,章-4でそう定義したように, 梁の軸線を$x$方向にとることにすれば,仮想仕事式の体積積分や 面積積分は,長さ$\ell$の梁に対しては

\begin{displaymath}
\int_V \dint V=\int_0^\ell\dint x\int_A \dint A, \quad
\int_S\dint S=\int_A \dint A
\end{displaymath}

と置き直せばいいことは明らかであろう。 ただし面積積分の$A$は梁の断面($x$軸を法線方向とする)という意味である。 式(C.1)の第3項の表面力も梁の表面には作用させないから, この項は,長さ$\ell$の梁の両端の断面での積分項のみになっていると 考えることにする。

式(C.1)の仮想仕事の原理に前節の変位場を代入すれば, 仮定に基づく梁の運動場うんどうば の範囲の中での力学原理を記述できるはずである。 式(C.3) (C.4)のように零でないひずみ 成分は$\epsilon_{xx}$成分のみであるから,まず第1項の 内力仮想仕事項は

\begin{displaymath}
\int_V \sigma_{xx} \delta\epsilon_{xx}\dint V =
\int_0^\e...
...sigma_{xx}
\left(\delta u'-z \delta w''\right)\dint A\dint x
\end{displaymath}

となる。さらに式(4.9) (4.11)で 定義した軸力$N$と曲げモーメント$M$とを用いると上式は

\begin{displaymath}
=\int_0^\ell \left( N \delta u' - M  \delta w''\right)\dint x
\end{displaymath}

と書くことができる。 被積分関数の第1項を1回,第2項を2回部分積分をすると

\begin{displaymath}
=\left[N\delta u-M\delta w'+M'\delta w\right] \Bigr\vert _0^\ell
-\int_0^\ell \left(N'\delta u+M''\delta w\right)\dint x
\end{displaymath}

となるが,式(4.24)の記号を用いると

\begin{displaymath}
=n_i\left[N \delta u+M \delta (-w')+M' \delta w\right] \B...
...}
-\int_0^\ell \left(N' \delta u+M'' \delta w\right)\dint x
\end{displaymath} (C.6)

とも表すことができる。

次に仮想仕事式の第2項の体積力による仮想仕事項も, 式(C.4)の変位成分の変分の関係を代入すると

\begin{displaymath}
\int_V\left(X_x\delta u_x+X_z\delta u_z\right)\dint V=
\int...
...a w'\right)\dint A+
\int_A X_z\delta w\dint A
\right]\dint x
\end{displaymath}

でいいことになる。したがって分布外力を

\begin{twoeqns}
\EQab
p\equiv\int_A X_x\dint A,\quad
\EQab
q\equiv\int_A X_z\dint A,\quad
\EQab
m\equiv\int_A z X_x\dint A
\end{twoeqns}

(C.7)



と定義すると上式は

\begin{displaymath}
= \int_o^\ell\left[ p \delta u-m \delta w'+q \delta w\right]\dint x
\end{displaymath}

となるので,第2項を部分積分して式(4.24)の記号を 用いると

\begin{displaymath}
=n_i\left[-m   \delta w\right] \Bigr\vert _{x=0,\ell}
+\in...
... \left\{p \delta u+\left(m'+q\right) \delta w\right\}\dint x
\end{displaymath} (C.8)

となる。式(C.7a) (C.7b)はそれぞれ$x$, $z$方向の梁の 単位長さ当たりの分布外力である。式(C.7c)はその 定義からも明らかなように,梁の単位長さ当たりに分布する 曲げ外力モーメントである。これは通常無視されることが多い。

最後に仮想仕事式の第3項は上記のように梁の両端での面積分のみで あるから

\begin{displaymath}
\int_A\left(F_x \delta u_x+F_z \delta u_z\right)\dint A\Bigr\vert _{x=0,\ell}
\end{displaymath}

となる。したがって第2項の体積力についての演算と同様, 式(C.4)を代入し,端外力を

\begin{displaymath}
F\equiv\int_A F_x\dint A,\quad
S\equiv\int_A F_z\dint A,\quad
C\equiv\int_A z F_x\dint A
\end{displaymath} (C.9)

と定義すると,結局この端外力の仮想仕事項は

\begin{displaymath}
\left[ F \delta u +C \delta (-w')
+ S \delta w \right] \Bigr\vert _{x=0,\ell}
\end{displaymath} (C.10)

と書くことができる。もちろん$F$, $S$, $C$はそれぞれ外力としての 軸力・せん断力および外力モーメントである。

以上の各項(C.6) (C.8) (C.10)を すべて結合すると,梁の仮想仕事式

    $\displaystyle \left[\left(n_i  N-F\right) \delta u+
\left\{n_i  \left(M'+m\r...
...} \delta w+
\left(n_i  M-C\right) \delta (-w') \right]\Bigr\vert _{x=0,\ell}$  
    $\displaystyle \mbox{}\qquad -\int_0^\ell \left[
\left(N'+p\right) \delta u+\left\{M''+m'+q\right\}
 \delta w \right]\dint x=0$ (C.11)

となる。

C.2.3 支配方程式

式(C.11)の仮想仕事式は 任意の仮想変位$\delta u$, $\delta w$に対して 常に満足されなければいけないから,変分問題のEuler方程式 として梁の支配方程式が誘導できる。 すなわち,まず式(C.11)の2行目の被積分関数から 局所的なつり合い式が

\begin{displaymath}
N'+p=0, \quad M''+m'+q=0
\end{displaymath} (C.12)

でないといけないことがわかる。もし$m$を無視すれば, この式はそれぞれ式(4.19) (4.20)に一致している。 また境界条件については,仮想仕事式(C.11)の1行目に ある両端での項から

\begin{manyeqns}
u=\mbox{与えられる}\quad&\mbox{あるいは}&\quad n_i N=F \\
w=\...
...)=S \\
-w'=\mbox{与えられる}\quad&\mbox{あるいは}&\quad n_i M=C
\end{manyeqns}



(C.13)



となることがわかる。これも式(4.23)に一致する。 このように,仮定された運動場の元で誘導される梁理論には せん断力が含まれていない。結局梁理論におけるせん断力は 曲げモーメントの勾配として定義される副次的なものであることがわかる。


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Iwakuma Tetsuo
Mon, 18 Feb 2013 12:50:55 +0900 : Stardate [-28]8120.80