岩熊哲夫
2000年7月2日 ([-30]5051.49)
最も重要なのは「文書構成」「内容の論理」であって, レイアウトはたいていは定型である. ウェブ上のページであっても,何か伝えたい・提供したいというので あれば,内容の論理を重視した構成になっている必要がある. すべてがポスター様であれば,独り善がりになり易い.
細かい点も含めて義務教育の「国語」では習っていない ものと考え,独学する必要がある.最も分かりやすい 文献(教科書)は,『日本語の作文技術(本多勝一著:朝日 新聞社刊朝日文庫)』の特にp.28以降を勉強するとよい. さらに,多くの良い本(小説は駄目)を読むこと.
私が気になる所を列挙しておく.
書き出しには次のような「おまじない」が必要.
となる.これで文書本体の書き出しにつながる.HTMLの
場合もタイトルを略すのはよくない.LATEXの場合に
基本的なスタイルとして論文スタイルjarticleを
用いている.他に報告・本スタイルjreport, jbookがある.
この\begin{document}
の前の部分をプリアンブルと呼ぶが,
ここはオプションとして利用するスタイルファイル等の指定にも用いる.
例えばこの文章のようにboxedminipageという特殊な
環境を用いる場合や,PostScriptの図を読み込むためなどに
\usepackage{boxedminipage} \usepackage[varg]{txfonts} \usepackage[dvips]{graphicx}のような行を並べる.具体的な指定の仕方は,それぞれのスタイルファイルの ドキュメントを読むこと.
全部の文章が終わった最後の最後には
となる.HTMLの場合には,署名と 作成日を明確にしておくことが望ましい.
以上で明らかなように,LATEXでは \begin
で始まった
環境は \end
で終わり,HTMLでは原則として <tag>
で
始まったものが </tag>
で終わっている.
この組み合わせが順番通り並んでいないと,期待した
出力は得られないので注意する.
論文・報告というのは論理的な文章であればよく,明確に 記述され誤解が生じない限り,美的である必要もないし,感情に 訴えるものである必要もない.
特に論文・報告のように科学的・工学的主張を述べる文書の 場合,「起承転結」等の構成をうまく考え,節毎にひとつの 閉じた論理を構成させ,節の並べ方と内容によって,ひとつの 文書で閉じた論理を構成するようにする.
まずは題目部分になるが
となる.HTMLの場合のは例えばの話であるが,
上の「おまじない」の <title>
部分は,本文中では
反映されないので,このようにヘッダタグで再度
記述する必要がある.
ここから本文が始まるが,節建てをして始める
となる.HTMLの場合,ここではページの題目に
ヘッダタグの <h1>
を使っているため,節に <h2>
を
用いている.
節は次のようにして順番を付ける.
LATEXでは自動的に節番号が振られる.この例のHTMLの
場合では前述のように,ページの
タイトルに <h1>
を使ってあるので,
このように <h2>
から下を用いてある.
また,LATEXの報告・本スタイルjreport, jbookの
場合には,節の上に『章 \chapter{...}
』が使え,
さらにその上に『部 \part{...}
』が使える.
段落は次のような文節のまとまりとする.
ただしHTMLの </p>
は省略できる.
LATEXの場合は,段落の開始・終了の前後に空行を入れて おくのが分かりやすく,特に最初の空行は,段落始めの インデント(字下げ)を自動的に挿入してくれる. このように,段落始めに自動的に字下げが入ることで 段落を明示している.
これに対しHTMLの場合は,段落間に1行 間隔程度の空行が入るだけで,字下げは自動化されない. HTMLの場合に字下げが必要な場合は,段落の最初に 全角のスペースを入れておく必要がある.そうであっても, 読む側のブラウザのフォント設定で, 例えば「MS明朝P(プロポーショナル)」等と いった『日本文化を滅ぼすフォント指定』がされていた 場合に,1文字分の字下げにならない.英語の段落始めの ように,数文字分の字下げにするには,例えば
のようにすると良いかもしれない.
LATEXの場合は, \paragraph{...}
や \subparagraph{...}
で
段落に題目を付けることもできる.
HTMLの場合には,文章の表現にも少し工夫をして,例えば
とするのも効果的である.
見出しは <big>...</big>
も考えらる.
また <h5>
, <h6>
も使えるが,ブラウザによっては
多少小さめ過ぎる場合がある.
何か他の人の文章等を引用する場合には
となる.LATEXではquotation環境も ある.ただしHTMLの場合には, これも文章表現のレイアウトに使うことで, 見出しを効果的にすることもできる.例えば
のようなこともできる.
LATEXの場合は \footnote{...}
を用いて
脚注を入れることは可能であるが,論文・報告では
原則として用いない方がよい.HTMLには
脚注そのものは無い.
「相互参照」はLATEXの場合の呼び名であり, それに相当するHTMLタグとして「アンカー・タグ」を 説明する.
例えば節番号を文中で引用することがある.また 式を引用することがある.そういった場合には
\label{name}
でラベルを付ける
\ref{name}
でラベルを引用する
という風になる.
HTMLの場合の相互参照は,引用される側もする側も アンカー・タグを付す.例えば
のようにする.これでhrefした部分を ブラウザ上でクリックすれば,上のnameを定義した部分に ジャンプすることになる.
もちろんHTMLで最もよく用いられるのは,他の リソースへのアンカーである.例えば
という風に使うと,他のリソースとのリンクができる.
またページ最後の <address>
部分の
自分のメイルIDの部分も
としておくこともできる.
もし他のリソースのページ途中のある指定箇所とリンクするなら
のようにする.
単純な箇条書き,すなわち
となる.記号は変えられる.
順番の数字付きの箇条書き,すなわち
となる.開始番号や表示は変えられる.LATEXの場合には,
箇条の数字(上例の二つ目の箇条の\label
)が相互参照の対象になる.
見出し付きの箇条書き,すなわち
となる.HTMLの場合は見出しと箇条の間は改行されて
しまうが,見出しにするものが2文字程度以下の
場合は, <dl compact>
を用いると改行されない.
レイアウトや文字飾りは,特に論文や報告では可能な限り使わない. 論文や報告は内容を論理的に記述して伝えるためのものであり, 見た目で情報を伝えるものではない.
センタリングの場合には
となる.
左右合わせの場合には
となる.右合わせの場合には
上記のleftがrightになる.
このHTMLの場合の </p>
は省略できない.
改行を入れた文をそのままのイメージで出力する場合には
となる.
表示されないコメントをソースファイルに入れておくことが できる.
という行がコンパイルされない,あるいは表示されない コメント行になる. ただし,これを多用すると,見通しの悪いソースになる. 可能な限りコンパクトに,かつ,必要な部分にのみ用いる.
通常,2種類のフォントで十分である.それ以上必要なら, 論理的に異様なことをしていると考えよう. また重複した飾り,例えばゴチックで斜体とか, 下線付きのイタリック等も節操が無いのでやめる. ポスターではなく,論文・報告を作成していることを忘れない.
イタリックの場合には
となる.`em'の方は「強調」という意味で,論理的な 制御と呼ばれる.HTMLの場合もこちらが好ましい.
ゴチックの場合には
となる. <strong>
が論理的.
下線を引くの場合には
となる.LATEXの場合,2行以上にわたる下線は 普通はできない.
等間隔文字(タイプライター様の)を用いる場合には
となる.
論文・報告で文字サイズをどうこうする必要は滅多に無い. ただHTMLの場合は,メリハリを付けるのに多少の工夫は必要だろう. 基本的には
で十分であり, <font size=.....>
等を多用するのは,
ポスター様のページ以外のページでは好ましくない.
段落を強調する意味で用いることができそうだ.
のようにする.
LATEXでの数式表現については別途参考書を読むこと.HTMLでは
まだ満足なものができないが,LATEXで書いたソースをHTML化する
ある種の変換ソフトでは,式の部分だけをGIF画像にして
貼り込んでいる.HTMLで簡単に胡麻化すには <pre>
を使う.
LATEXでの基本的な部分を列挙しておく.
という風になる.複数行になる場合には
という風になる.ちょっと気にして欲しいのは,
積分変数前の微分`d'が,数学斜体の`'ではないことである.
つまり,変数としての`'と区別するために,
積分変数前の微分記号は\,\mbox{d}
を用いてある.
ここの\,
は小さいスペーシングである.
\mbox{}
を必ず入れるようにする.
これは演算子であることを区別するためである.
という風になる.3行目が正しい. マイナス記号前後のスペース幅を比較して欲しい.
とするとよい.
LATEXの場合は,図表はfigure, table環境の 中に配置する.この2つの環境はフロート(浮き)という分類に なっており,ソースファイル中の位置とページのレイアウトの 状態とを勘案して,複数のページ内をあちこち「漂う箱」と 考えなければならない.つまり,どこに配置するかを 決めるのはTEXそのものであり,利用者は出力をプレビューしながら, 欲しい位置に来るように調整する必要がある.これは 大抵の出版物(辞典のようなものではなく)の場合,図表は上や下に まとめてあることを思い出せば納得がいくのではないだろうか. 面倒ではあるが,文章の読みやすさを損ねないための工夫と 考えて欲しい.
基本的には,段落と段落の間の空行の部分にこのフロートを置くことにし, それをプレビューしながら最初のフロートから順に,適切な場所に 出力されるように,ひとつひとつ配置していくしかない. 論文の版下提出のような場合には,偶数ページを左に置いた見開きページに 二ページ分が見渡せることを考え,その配置を工夫すると, 最終的な論文の読みやすさが向上し,読者の理解も得られ易くなるだろう. もしかしたら査読もいい結果になるかもしれない.呵呵.
また,キャプションのセンタリングをする人が多いが,不要である.
とするとよい.表のキャプションは表そのものの上に
位置する.キャプション中で参考文献を引用したい場合には
上記のように\protect
を用いるとエラーが生じない.
図表や画像データは,そのファイルを文中に指定することで 貼り込む.例えば
といったようなタグを使う.altは目の不自由な人等に とって重要なので省略しないようにする.
2枚以上の図や写真を隙間無く横に並べたい場合がある. そういう場合には
のようにするといい.
HTMLでもフロートのような利用法は可能である.せっかく 窓(複数)システムを使っているのに,わざわざフレームを使ったり, 何も工夫しないでリンクしたりするのはもったいない. 例えば
とすると,photoswindowという名前付きの窓が開いて, そこに画像が出力される.もちろん直接画像ファイルではなく 他のHTMLファイルでもいい. 同様のことはJavaScriptを使っても可能である.
LATEXではtabular環境を使う.HTMLでは,
非常に面倒だが <table>
の中に, <tr>
,
<th>
, <td>
等を使って書く.
HTMLの場合,止むを得ない場合を除いて,表でレイアウトしては いけない.目の不自由な人にとってメリットが無いからである.
LATEXでの参考文献リストの標準的な書き方を示すに留める.
\begin{thebibliography}{99} \bibitem{hogehoge} Lastname, A. and Lastname, B., \newblock \emph{J. Appl. Mech., JSCE,} \newblock Vol.4, pp.45-50, 2002. ...... \end{thebibliography}となる.上記`99'というのは,文献が10以上あることを示しているだけで, 文献リストの番号を表示するときの適正な幅をTEXに 教えているだけである.10未満の場合は,例えば
{5}
で
よい.数値そのものには意味が無い.hogehogeはラベルで,
本文中の引用する箇所で\cite{hogehoge}
とする.
長い文章の場合は付けておいた方が便利である.LATEXでは
を付けて2回コンパイルすれば終わりである.HTMLの場合は, アンカー・タグを利用して目次を作成するのが望ましい. 目次そのものは節・小節・項と深くなるにつれて,入れ子の 箇条書きを利用するのが一番簡単である.例を示しておく.
HTMLの場合の効果音の付け方には工夫が必要である. 特にJavaを起動するような場合には,訪問者の負担になるので 止めた方がよい.音は利用者の選択で聴けるように, スタート・ボタン等を付けた方がよい. また,長い音楽を流し続けるのは,目の不自由な人が 利用している「ページ読みソフト」の出力判別の妨げになるので 避けるべきである.
サンプル・ソース付きの便利なサイトをいくつか紹介しておく.