本委員会は第 5 章に示したような趣旨で設立され, 比較的若手の大学教官のみを委員として自由に意見交換を行なって きた. そこにも書かれているように,近年,土木分野のカリキュラムが 社会的要請に伴い変化し,例えば計画や経済的予測,構造物に 関しては景観,建設事業全体のマネージメント等に関する分野の 必要性が増大し,大学学部 4 年間のカリキュラムに占めるこのような言わば ソフト系科目の割合がかなり大きくなってきている. また学生にも入学前に既に数学・物理離れ現象が蔓延し, ハード的な力学に関する勉強や研究への関心が薄れている このような状況下での前述のカリキュラムの変貌が,学生を ますます力学から離しているのが現実となってきている.
多くの大学で行なわれている力学教育に昔ほどの魅力が 無くなってきているこのような状況で,果たして今後とも このような構造力学教育が必要なのか,何故魅力的では ないのか,ということを検討することが必要となっている. 実務レベルではブラックボックス化した汎用パッケージに よる設計や照査が当り前となっている現在においても,まだ 力学教育が必要であるとすれば,その内容はいかなるもので あらねばならず,またどのような方法で教育されるのが 最適であるのか,といったことも同時に検討しなければならない.
一方で,老朽橋梁対策や,逆に超長大橋梁架設の可能性検討に 見られるように,力学教育には単に問題が解ける能力だけを 伸ばす役割があるわけではなく,今は不可能なもの,今まで 考えもされなかった形態等の提案・開発が急務となりつつ あるのも事実である. すなわち,まず第一の問題点である,「力学教育が必要か」 との問に対しては『今まで以上に必要である』というのが 答であることは否めないであろう.
昨今大学の改組・改革が盛んになっている. これを力学教育という点から見ると,この時代が 力学に求めているものも昔と大きく変わっているということを 再認識することを求められているとも考えられないだろうか. 土木学会全国大会の共通セッションにも見られるように, 旧来の分野を越えた研究が必然的に盛んになってきているが, 同様の現象が従来の学科間についても生じてきている. この改組・改革は,そのようなものを再構成・統合・結合する 方向で動いているように見えるのは一部の大学だけでは ないようだ.このような事態も力学教育の将来を検討する 上で考慮すべき点ではあろう.
したがってこの委員会では次のような点について検討を 試みることにした.