どぼく(土木:社会環境工学)についての Q&A

updated: に改訂されています.

これまでの おもな しつもん(質問) と かいとう(回答) です.
質問も回答も,趣旨は損なわない程度に若干改訂してあります.

土木質問箱(しつもんばこ)で質問をする


社会環境工学(土木工学)の守備範囲
土木学会「土木ってなに?」
学会出版物:土木一般「なんでも相談室」刊行中
       東北大の社会環境工学科って?(学部)(大学院)
キャンパス・バーチャル・ツアー(2011年の震災前の画像です)
キャンパス・ライフ

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分野別目次 − 日付順の総目次は下の方に −

  1. 小中学生・高校生・高専生からの質問
  2. 応用力学・構造力学・地震工学
  3. コンクリート工学
  4. 鋼構造
  5. 地盤・基礎
  6. 水理学・海岸工学
  7. 環境工学
  8. 計画・交通・道路
  9. 総目次(日付順)
  10. 質問と回答(日付順)

小中学生・高校生・高専生からの質問

  1. コンクリート関連の専門用語について(11/6/2000)
  2. 土に関して(8/10/2001)
  3. 圧密沈下とは,なんですか?(8/28/2001)
  4. オイラー・ラグランジュ座標について(5/28/2002)
  5. 管水路と開水路について(5/13/2003)

応用力学・構造力学・地震工学

  1. 共役ばりとは何ですか?(2/3/1999)
  2. レベル 2 地震動(11/2/2000)
  3. そり捻じりとそり応力度(9/6/2001)
  4. オイラー・ラグランジュ座標について(5/28/2002)
  5. 引っ張りに抵抗しない材料の解析手法について(1/13/2003)
  6. 支保工の検討:曲げによるせん断応力(4/16/2004)

コンクリート工学

  1. 終局限界曲げモーメントとは?(12/18/1998)
  2. SRC 構造とは?(12/20/1998)
  3. 鉄筋の定着とは?(2/7/1999)
  4. コンクリート構造物の耐久性(年)(7/22/1999)
  5. コンクリートに酢酸水をかけるとどうなりますか?(7/29/1999)
  6. 道路舗装における高炉スラグの利用について(8/3/1999)
  7. 生コンクリートの導伝率のデータ有りますか?(10/12/1999)
  8. 鋼とコンクリート構造の特徴,複合構造の形式とその特徴(10/13/1999)
  9. RC 巻立て工法による橋脚の耐震補強(11/18/1999)
  10. セメントの起源など(5/17/2000)
  11. コンクリート関連の専門用語について(11/6/2000)
  12. 無筋コンクリートのひびわれによる影響: 漏水又は透水によるコンクリート強度の低下(5/15, 16/2001)
  13. コンクリート上の雪が早く溶けるのはなぜ?(10/4/2001)
  14. コンクリートが水で飽和される場合とは(1/7/2008)

鋼構造

  1. 高炉と電炉における製法上の違いは?(3/18/1999)
  2. 鋼とコンクリート構造の特徴,複合構造の形式とその特徴(10/13/1999)
  3. 波形鋼板ウェブのアコーディオン効果とは?(5/29/2001)

地盤・基礎

  1. 斜面の安定解析について(4/14/1999)
  2. 土の化学成分の調べ方(5/25/1999)
  3. 直接せん断試験について(6/18/1999)
  4. シールド工事と NATM トンネル(7/15/1999)
  5. N 値について(10/11/1999)
  6. 斜面上における深礎杭以外の杭基礎について(9/8/2000)
  7. 大型ブロック積み擁壁の安定計算について(10/24/2000)
  8. 浅い基礎,深い基礎(11/20/2000)
  9. 六価クロム溶出試験について(11/24/2000)
  10. 杭の設計理論(11/30/2000)
  11. 築堤材料としてのまさ土の利用について(12/13/2000)
  12. 土の締固め度(3/12/2001)
  13. 飽和度等の試験方法について(3/15/2001)
  14. 屋上緑化における雨水流出の抑制について(4/25/2001)
  15. 石灰,セメント安定処理土について(6/29/2001)
  16. 治山ダムにおけるパイピング(導水勾配)(7/5/2001)
  17. 負の摩擦力について(7/21/2001)
  18. 土に関して(8/10/2001)
  19. CBR 試験用の試料の採取方法(8/24/2001)
  20. N 値と CBR との関係(8/24/2001)
  21. 圧密沈下とは,なんですか?(8/28/2001)
  22. 井戸の揚水に伴う影響半径について(9/20/2001)
  23. 側面摩擦抵抗を考慮した斜面円形すべり計算法(11/8/2001)
  24. 活荷重と圧密沈下(12/7/2001)
  25. 盛土の締め固め密度試験の方法について(1/24/2002)
  26. ロウの方法とは?(3/20/2002)
  27. 液状化強度と物理定数の関係について(5/29/2002)
  28. 地盤沈下(6/19/2002)
  29. CBR について(7/30/2002)
  30. 地下水位以下の排水について(2/10/2003)
  31. 斜面(堤防)の安定解析を行う際の水位の設定(4/9/2003)
  32. 透水係数について(8/22/2003)
  33. 限界自立高さについて(6/21/2004)
  34. FEM 解析を用いた地盤の変位予測(12/27/2004)
  35. 土の硬化について(10/3/2005)
  36. 動水圧の考え方(2/4/2006)
  37. 乾燥密度と透水性(9/18/2007)
  38. N値と地盤の強度の関係(5/28/2008)
  39. 治山ダム基礎の支持層の高さのめやすについて(11/13/2013)

水理学・海岸工学

  1. 排水性舗装について(5/20/1999)
  2. 津波の持つエネルギー評価(3/25/2000)
  3. 海岸工学 合田式について(6/14/2000)
  4. 屋上緑化における雨水流出の抑制について(4/25/2001)
  5. 井戸の揚水に伴う影響半径について(9/20/2001)
  6. コンクリート上の雪が早く溶けるのはなぜ?(10/4/2001)
  7. 砂防河川に架かる橋の桁下高(10/6/2001)
  8. 大河川・小河川ってなんですか.(1/11/2003)
  9. 管水路と開水路について(5/13/2003)
  10. 河川用語(赤溝・赤線・青溝・青線)について(3/13/2004)
  11. 粗度係数について(6/29/2004)
  12. 暗渠排水管について(7/27/2004)

環境工学

  1. 回分式活性汚泥法(10/6/1999)
  2. 土木工学における砂漠の緑化(4/12/2001)
  3. 灰って自然に還るの?(6/29/2005)

計画・交通・道路

  1. 排水性舗装について(5/20/1999)
  2. シールド工事と NATM トンネル(7/15/1999)
  3. 排水性舗装の流出係数(6/7/2000)
  4. 排水舗装における等値換算係数について(6/13/2000)
  5. 既設道路での CBR 試験の必要性(7/12/2000)
  6. 交差点設計について(2/2/2001)
  7. 12 時間交通容量(8/29/2001)
  8. 30 番目時間交通量の割合(6/2/2002)
  9. 交差点飽和度ってなんですか.(8/26/2002)
  10. 混雑度について(12/26/2002)
  11. CBR と一軸圧縮強度の関係(12/1/2003)
  12. 道路の融雪について(11/10/2004)
  13. 交通特性の重方向率とは(12/20/2004)

総目次(日付順)

  1. 終局限界曲げモーメントとは?(12/18/1998)
  2. SRC 構造とは?(12/20/1998)
  3. 共役ばりとは何ですか?(2/3/1999)
  4. 鉄筋の定着とは?(2/7/1999)
  5. 高炉と電炉における製法上の違いは?(3/18/1999)
  6. 斜面の安定解析について(4/14/1999)
  7. 排水性舗装について(5/20/1999)
  8. 土の化学成分の調べ方(5/25/1999)
  9. 直接せん断試験について(6/18/1999)
  10. シールド工事と NATM トンネル(7/15/1999)
  11. コンクリート構造物の耐久性(年)(7/22/1999)
  12. コンクリートに酢酸水をかけるとどうなりますか?(7/29/1999)
  13. 道路舗装における高炉スラグの利用について(8/3/1999)
  14. N 値について(10/11/1999)
  15. 生コンクリートの導伝率のデータ有りますか?(10/12/1999)
  16. 鋼とコンクリート構造の特徴,複合構造の形式とその特徴(10/13/1999)
  17. 回分式活性汚泥法(10/6/1999)
  18. RC 巻立て工法による橋脚の耐震補強(11/18/1999)
  19. 津波の持つエネルギー評価(3/25/2000)
  20. セメントの起源など(5/17/2000)
  21. 排水性舗装の流出係数(6/7/2000)
  22. 排水舗装における等値換算係数について(6/13/2000)
  23. 海岸工学 合田式について(6/14/2000)
  24. 斜面上における深礎杭以外の杭基礎について(9/8/2000)
  25. 既設道路での CBR 試験の必要性(7/12/2000)
  26. コンクリート関連の専門用語について(11/6/2000)
  27. レベル 2 地震動(11/2/2000)
  28. 大型ブロック積み擁壁の安定計算について(10/24/2000)
  29. 浅い基礎,深い基礎(11/20/2000)
  30. 六価クロム溶出試験について(11/24/2000)
  31. 杭の設計理論(11/30/2000)
  32. 築堤材料としてのまさ土の利用について(12/13/2000)
  33. 交差点設計について(2/2/2001)
  34. 土の締固め度(3/12/2001)
  35. 飽和度等の試験方法について(3/15/2001)
  36. 土木工学における砂漠の緑化(4/12/2001)
  37. 屋上緑化における雨水流出の抑制について(4/25/2001)
  38. 波形鋼板ウェブのアコーディオン効果とは?(5/29/2001)
  39. 無筋コンクリートのひびわれによる影響: 漏水又は透水によるコンクリート強度の低下(5/15, 16/2001)
  40. 石灰,セメント安定処理土について(6/29/2001)
  41. 治山ダムにおけるパイピング(導水勾配)(7/5/2001)
  42. 負の摩擦力について(7/21/2001)
  43. 土に関して(8/10/2001)
  44. CBR 試験用の試料の採取方法(8/24/2001)
  45. N 値と CBR との関係(8/24/2001)
  46. 圧密沈下とは,なんですか?(8/28/2001)
  47. 12 時間交通容量(8/29/2001)
  48. そり捻じりとそり応力度(9/6/2001)
  49. 井戸の揚水に伴う影響半径について(9/20/2001)
  50. コンクリート上の雪が早く溶けるのはなぜ?(10/4/2001)
  51. 砂防河川に架かる橋の桁下高(10/6/2001)
  52. 側面摩擦抵抗を考慮した斜面円形すべり計算法(11/8/2001)
  53. 活荷重と圧密沈下(12/7/2001)
  54. 盛土の締め固め密度試験の方法について(1/24/2002)
  55. ロウの方法とは?(3/20/2002)
  56. 液状化強度と物理定数の関係について(5/29/2002)
  57. 30 番目時間交通量の割合(6/2/2002)
  58. 地盤沈下(6/19/2002)
  59. オイラー・ラグランジュ座標について(5/28/2002)
  60. CBR について(7/30/2002)
  61. 交差点飽和度ってなんですか.(8/26/2002)
  62. 大河川・小河川ってなんですか.(1/11/2003)
  63. 引っ張りに抵抗しない材料の解析手法について(1/13/2003)
  64. 混雑度について(12/26/2002)
  65. 地下水位以下の排水について(2/10/2003)
  66. 斜面(堤防)の安定解析を行う際の水位の設定(4/9/2003)
  67. 管水路と開水路について(5/13/2003)
  68. 透水係数について(8/22/2003)
  69. CBR と一軸圧縮強度の関係(12/1/2003)
  70. 河川用語(赤溝・赤線・青溝・青線)について(3/13/2004)
  71. 支保工の検討:曲げによるせん断応力(4/16/2004)
  72. 限界自立高さについて(6/21/2004)
  73. 粗度係数について(6/29/2004)
  74. 暗渠排水管について(7/27/2004)
  75. 道路の融雪について(11/10/2004)
  76. 交通特性の重方向率とは(12/20/2004)
  77. FEM 解析を用いた地盤の変位予測(12/27/2004)
  78. 灰って自然に還るの?(6/29/2005)
  79. 土の硬化について(10/3/2005)
  80. 動水圧の考え方(2/4/2006)
  81. 乾燥密度と透水性(9/18/2007)
  82. コンクリートが水で飽和される場合とは(1/7/2008)
  83. N値と地盤の強度の関係(5/28/2008)  
  84. 治山ダム基礎の支持層の高さのめやすについて(11/13/2013)


質問と回答(日付順)

     
  1. 私は,電柱や建物の杭を製造している会社に勤めています. 例えば,円環断面の終局限界曲げモーメントと軸力との 関係を基礎からご教授してくれる方を紹介してください. また,せん断破壊に対する補強方法などでも結構です. あるいは,どのような専門書を読めばよいのかだけでも教えてください. (その他:20歳代) 目次に戻る
       曲げ変形が卓越する部材の軸力〜曲げ耐力関係は, 鉄筋コンクリート断面,PC断面, コンクリートが充填された鋼断面とも平面保持の仮定と, 材料の1軸の応力-ひずみ関係のみを用いて解析されます.
       具体的には,与えられた軸力のもと, 所定曲率に対応するひずみ状態を仮定して,断面内における応力分布を決定し, これから軸復元力を算出し,軸方向外力との釣り合い条件が満足されるまで 繰り返した後に曲げ耐力を算定します.
       これを様々な軸方向外力に対して繰り返すことにより, 軸力〜曲げ耐力の関係が得られます.
       RC断面に関して言えば, 常時作用している軸力がある程度大きい場合には, 鉄筋およびコンクリートは圧縮状態にありますので, 曲げ荷重による引張鉄筋の降伏は,軸力がない場合よりも遅れることになり, 強度は増加します.しかし,軸力がある程度以上大きくなると, コンクリートの圧壊が鉄筋の降伏よりも先行し,強度は低下します. 極端な場合には軸力のみで崩壊が発生します.従って, 地震時におけるフレーム構造物の柱のように,同一部材で軸力が変動する場合には, 低軸力側と高軸力側で部材の曲げ強度と靭性が異なるので, 作用軸力-曲げ耐力関係には特に注意が必要です.(あ)
     
  2. SRC 構造とは何でしょうか? マンションに適用された場合とっても安心できるものなので しょうか?(その他:30歳代) 目次に戻る
       SRC 構造とは,鉄骨鉄筋コンクリート構造のことで, 鉄骨の周囲に鉄筋を配置し,コンクリートを打って一体とした構造です. イメージとしては,鉄道のレールに使用されるような鉄骨を, コンクリート柱の中心に埋め込んで,さらにその隙間に鉄筋を配置したものです.
       本構造の歴史は深く, 大正の初期に欧米より移入され,1913 年にわが国最初の SRC 構造が誕生しました. その後の関東大震災で本構造の被害が少なかったことが, 普及につながったようです.建築の分野では活発に利用されており, 東京都をはじめ地方行政庁では原則として SRC 造または 鉄骨造とするように指導されているようです.
       このように SRC 構造は, 鋼材とコンクリートの両者の利点をかねることが可能となり, 耐震設計上も高強度でかつ高靭性の構造の設計が可能であると考えられ, 近年では土木分野においても, 橋脚等への適用を試みる実験等が行われるようになってきました.
       動的耐力や変形性能を始め, 地震時の非線形域の挙動が明かになっていくことにより, 建築分野と同様に,土木分野でも SRC 構造が利用されていくと思われます.(あ)
     
  3. 共役ばりとは何ですか?説明して下さい.(大学生・短大生) 目次に戻る
       共役梁というのは, きっと,Mohr の定理のところで出てきますね. あの定理そのものは全く力学でもなく数学でもなく, 覚える必要すらない定理なのですが,もし試験に出るということですと, 次のように考えればよいことになります. ただし,Mohr の定理はご存知のものとします.
       あの定理は,たわみを求めるのに, まず「元の問題」の曲げモーメント分布を求めておいて, そのモーメント分布と同じ分布外力を「2回目の問題」に 与えて求まる曲げモーメント分布がたわみになる,というものでした. この「2回目の問題」で対象とする梁が「共役梁」ということになります. したがって, 「2回目の問題」で対象としている梁の「モーメントとせん断力の境界条件」は, 「元の問題」の「たわみとたわみ角の境界条件」に一致させないと, 「元の問題」のたわみが求まらないわけですね.
       例えば次のようになります.
    「元の問題」の境界条件    「共役梁(2回目の問題)」の境界条件
      たわみ=0           モーメント=0
      たわみ角=0          せん断力=0
      たわみ≠0           モーメント≠0
      たわみ角≠0          せん断力≠0
    
    ということですから,簡単な例で
     単純梁の共役梁は単純梁
     左が埋め込みの片持ち梁の共役梁は右が埋め込みの片持ち梁
    
    になっているのです.以上,「構造力学(宮本裕 他著)」技報堂出版より(く)
     
  4. 鉄筋の定着ってどんなこと?なぜそれが必要?.(20歳代) 目次に戻る
       鉄筋の定着とは, 鉄筋端部に設けられるすべり止めと言いかえることができます. これは鉄筋コンクリート部材の鉄筋とコンクリートの力の伝達上大変重要なものです.
       鉄筋とコンクリートには, 本来鉄筋表面の凹凸などにより付着力があり, どのような荷重を受けても鉄筋とコンクリートが この付着力により完全に接着しているならば定着は必要ありません.
       しかし,実際には荷重状態などにより付着抵抗力は低下します. そこで,鉄筋とコンクリートの間ですべりが生じるために, 鉄筋の端部をコンクリートに定着させるわけです.
       具体的には,(1) 鉄筋の端部をコンクリート中に埋込み, 鉄筋とコンクリートの付着により定着する, (2) 鉄筋の端部をコンクリート中に埋込み,フックをつけて定着する, などです.(あ)
    参考文献
    田辺忠顕ら:コンクリート構造,朝倉書店
    日本道路協会:道路橋示方書・同解説 耐震設計編
    
     
  5. 高炉と電炉における製法上の違いは?(20歳代) 目次に戻る
       概略ですが,お答えします.
       鋼を作る過程は大きく3つに分けられ, 製鉄,製綱,圧延となります. まず,原料となる鉄鋼石,石炭,コークスを高炉に入れて溶解した銑鉄を作りますが, これはまだ脆くて鋳物にしか使えません.
       この銑鉄を精錬して性能のいい鋼にするのが製綱過程です. ここで,平炉,転炉,電気炉などが使用されますが, この中でも電気炉は温度管理がしやすいため, 性能のいい高張力鋼などの生産に使われます. ただし,電気を使う分コストは高いようです.
       最後は圧延過程ですが, できた鋼の塊をローラーにはさんで伸ばし,棒状の針金や板に加工して, 製品を出荷します.
       このようなお答えで,質問の意に即しているでしょうか? また,詳しくは金属屋さんにお聞き下さい.(な)
     
  6. 斜面の安定解析法(円弧すべり)で,有効応力法と全応力法がありますが, どのように使い分けるのでしょうか?一般的には,短期には全応力, 長期には有効応力となっているようです. また,土質試験等の関係は?(その他:30歳代) 目次に戻る
       ご指摘のように,一般的には, 「短期には全応力,長期には有効応力」となっております. これには,問題が二つあります.
       一つは,全応力と有効応力はどちらがいいのかという視点であり, 他方は,短期荷重に対するせん断強度と長期荷重に対するせん断強度は同じなのか という視点です.
       一つめは, 単にせん断強度を求めたいだけならば, 全応力をもとにしてせん断強度を求めても良いし, 有効応力をもとにして求めても良いわけで,その意味では短期的にも, 間隙水圧をきちんと予測できるならば有効応力を用いても構わないわけです. 逆に,間隙水圧を適当なだけ消散させてやれば, 長期的なせん断強度を全応力をもとにして決めても構わないわけです. したがって,原理的にはどちらをつかってもよいことになります.
       二つめは,短期荷重に対する土のせん断強度は一般に 圧密が進んでないわけですから, 長期に荷重を受けて圧密したときのせん断強度より,小さくなります.
       したがって,ご質問の主旨をくんでお答えすれば, 短期的な安定問題に関しては, 発生する過剰間隙水圧を精度良く求めることが難しいので, 全応力法から求めたせん断強度(例えば, 間隙水圧を計らない直接せん断試験から得られるせん断強度) を用いることの方が普通です. 一方,長期的な安定問題に関しては,圧密による強度増加を見込みたいならば, 有効応力基準で求めた粘着力と内部摩擦角から, 求めたい時点での有効応力に対するせん断強度を推定することになります. したがって,有効応力基準で破壊基準を決めるための試験を行うことが 普通になるわけです.
       これ以上の,説明は割愛しますが,更に詳しく調べたい場合,
       土質工学会(地盤工学会)から出ている入門シリーズ14「斜面安定解析入門」
    
    などが参考になろうかと思います.(か)
     
  7. 排水性舗装中を流れる水の流速・流量は どのように求めれば良いのでしょうか?(その他:30歳代) 目次に戻る
       上記の件,ひとつの考え方を簡単に記述します. なお,回答者は舗装の専門家ではなく,地盤工学を専門とするものです.
       「上記の問題を土中を流れる水の流速. 流量と言うように解釈いたします」
       一般に,多孔質体中を流れる水の流速や流量は, その材料の透水性だけでは決まりません.つまり,いくら透水性の高い材料でも, 水を流すのに必要な圧力差がなければ,水はそこに停留するだけです.また, 岩盤のように不透水と一般に考えられるものでも,透水性はあり, (期待する遮水の程度によっては,不透水性の程度が問題になる) 圧力差があれば,コップ 1 杯でも水は流れるわけです.
       と言うわけで,まず,排水性舗装なるものの透水試験を行います. これは,コアでも抜いて実験すれば良いでしょう. あるいは現場でできる方法があればそれでも可
       次に, それが使われている環境下でどのような水理環境にあるかを調査設定し, 動水勾配が決まれば,流量は出てきます.ダルシーの法則というやつです.
       以上の話は,土質力学の教科書に出ています.(か)
    もうひとつの回答例
       簡単なようで難しい問題だと思います. 厳密に言えば排水性舗装は, 鉛直方向と水平方向で透水係数が異なるとの報文もあります. 取り敢えず,明快な答えではありませんが,現時点では,雑誌「舗装」1996, Vol. 31, No. 6 の pp.12〜15 の考えで如何でしょうか?すなわち,
    舗装体内排水速度(=流速)VA=k・i/(λ・fs/100)
    
    k :透水係数
    i :横断勾配(今回は合成勾配)
    λ :空隙率
    fs:有効空隙比(0.5?)
    
    このように考えると,流量は,流速×断面積×空隙率×有効空隙比でしょうか?
     
  8. 先日,土の化学成分を簡単に調べる道具を用意してほしいとの依頼が あったのですが,なにをそろえたらいいかよくわかりません. 簡易的に調べる方法と道具をご存じでしたら教えてください.(その他:20歳代) 目次に戻る
       上記の件,知る範囲内でお答えします.なお回答者は, 地盤工学を専門とするものです.
       たぶん,上記の質問は農業科の先生の質問ですので, 農学部の土壌学の先生に聞くのが最も適当かと思いますが, ここでは土を工学的にとらえた場合の化学成分と理解して話を進めます.
       土の起源はその多くが岩石が風化してできたものであり, (植物起源,動物起源の土もある)その意味では, 岩石の化学成分と行っても良いかもしれません. しかし,土の成因や組成は非常に多様であり,また見る観点によっても全く違います. 例えば,陶芸に適切な土とダムのコア材に適切な土は当然違うわけです.
       そんなわけで,土の物理化学的性質が問題になる場面は, 工学的には何かと言えば,
    • 土の鉱物組成
    • 有機物含有量
    • PH
    • 比表面積
    • 陽イオン交換能
    • 間隙水中の容存物
    などであり,これらによって集合体としての土の工学的性質が変わるわけです.
       本題に入りますと,化学成分の分析の道具としては,
    • 固相としては,蛍光x線分析,原子吸光分析.... 主に化学組成x線回析...結晶構造同定
    • 液相としては,原子吸光分析
    などがありますが,分析装置は数千万円もするような機械です. 何をするか何をしたいかによって違いますので,一概にお答えできません.
       残念ながら, 土木工学科では上記のような土壌分析学は研究の範疇でなく, 詳しい回答はできません. 私の持っている本で,関係のありそうな本を下記に記しておきます.(か)
     土木学会編 新体系土木工学16「土の力学(I)」
         浅川美利,嘉門雅史 共著....工学的立場からみたもの
     朝倉書店 「土の世界」大地からのメッセージ
         「土の世界」編集グループ.....多様な土の世界をわかりやすく解説したもの
    
     
  9. 「せん断箱を用いた直接せん断試験において上下二つの箱が 相対的に動く構造になっているため非排水の条件には適さない」と ある本にあったのですが,なぜ非排水の条件には適さないのか 具体的に直接せん断試験機の構造を含めて教えてください.(大学生・短大生) 目次に戻る
       上記質問に簡単に,お答えします.
       非排水条件を満足させるためには, 試料から水が漏れないようにシールすることが必要となりますが, 旧来の上下二つの箱が相対的に動く構造においては, 上下二つの箱の間から水が漏れないようにすることは技術的に難しいということです. そのため,非排水のまま,せん断を行うことには適さないという意味です.
       なお,改良型の直接せん断試験機 (例えば,NGI 型単純せん断試験機)では,これができるようになっています.
       一方,非排水条件とは等体積せん断を意味しますから, 上下二つの箱の鉛直変位を拘束して(すなわち, せん断中に試料の体積が変化しない),せん断中に鉛直荷重を計測する (すなわち,せん断中の有効鉛直応力の変化を許す)ような等体積せん断で 非排水条件の試験を代用できます.最近は,この方が多いと思います.
       備考:小生は必ずしも室内試験のエキスパートではないので, 詳しくは母校の地盤工学の先生に聞いてみて下さい.(か)
     
  10. 都市の地下鉄工事でシールド工事と NATM トンネルの採用される理由は? (その他:40歳代) 目次に戻る
       回答者はトンネルの専門家ではなく, 適切な答になっているかどうかわかりませんが, 仙台市の都市地下鉄に関係した現状に即して簡単にお答えいたします. また,質問者が全くの素人であると仮定してお答えします.
       シールド工事と NATM トンネルの最大の違いは工費の差です. 地盤や周辺の状況によってかなり工事費に差はでますが, 現在の平均工事費(鉄道複線として)は
       シールド工事:200 億円/km
       NATMトンネル:70 億円/km
    
    程度と思われます.約 3 倍の差が有るわけです. 従って採用される理由は,NATM で掘れるところは全て NATM を採用し, 地盤や周辺状況によって NATM が出来ないところがシールドになるわけです. もちろん,オープンカット工法が採用できる場合はシールドより安いため, オープンカットといたします.また, 最近は施工条件が厳しいいところでは連続地中壁を使う場合も増えています.(い)
     
  11. 一般的な環境下でのコンクリート構造物の耐久性(年)について 一般論で結構です.ご教授下さい. 何か,書物が有れば合わせてご教授下さい.(その他:40歳代) 目次に戻る
       コンクリートの耐久性は, 出来上がったコンクリートの品質や環境条件等によって大きく左右されるため, 一概には言えませんが,構造物の使用目的や重要度に応じて, 設計耐用期間を 50 年から 100 年に設定しているのが一般的です. また,この問題を扱った専門家による部会では,耐久的なコンクリート構造物は, 本来 50 年程度はメンテナンスフリー(補修あるいは補強を必要としない状態)であると 考え,標準的な環境条件の下で 50 年間メンテナンスフリーであるものを, 耐久的なコンクリート構造物の標準であるとしています. つまり,耐久的なコンクリート構造物を適切に補修・補強すれば, 70 年や 100 年もたすことは十分に可能であると言えます.
       コンクリートの耐久性に関する一般的な読み物としては, 小林一輔著「コンクリートが危ない」(岩波新書)があります.(い)
     
  12. コンクリートに薄い酢酸水をかけて清掃をしたとすると 何か問題は起きますでしょうか? また,どんなことがおきますか? おしえてください.(その他:20歳代) 目次に戻る
       一般に酸は,硬化したセメント成分を分解し, 溶かしてしまう作用があるため, コンクリートの強度低下や耐久性低下を引き起こすとされています. ただし,コンクリートは酢酸のような有機酸よりも, 無機酸(硫酸,塩酸等)によって激しく侵食されると言われています. さらには酢酸の濃度や周囲の環境によっても侵食の程度が異なるため, 一概には言えませんが, 酢酸水をコンクリートにかけると劣化する恐れがあると 考えておいた方が無難かと思います.(い)
     
  13. 海外のお客さん(土木に関しては素人)から 「高炉スラグを道路舗装に利用すると聞いたが, これはアスファルトに粒々のスラグを混ぜて利用するのか, もしくは粉末状にしてアスファルトに混ぜるのか」と聞かれ困ってしまいました. 高炉スラグを粉砕してスラグセメントととして利用することは 聞いたことがあるのですが,アスファルトに混ぜて使うとなると, やはり粉末状にはせず,骨材目的ということになるのでしょうか? (その他:30歳代) 目次に戻る
       スラグは骨材として利用されます. 鉄鋼スラグ,製鋼スラグの規格や主な用途についてはアスファルト舗装要綱に 記述されています.簡単すぎますか?(た)
     
  14. N 値(エヌチ)とは そもそも何ですか(その他:20歳代) 目次に戻る
       N 値に関する質問についてお答えします. N 値とは標準貫入試験によって得られる数値のことです. 標準貫入試験とは所定のサンプリングチューブを 30 cm だけ 地中に打ち込むのに必要なドロップハンマーの落下回数を調べるもので, その落下回数が N 値となります.ドロップハンマーの重量は 63.5 kgf, 落下距離は 75 cm と決まっています. この N 値と地盤の堅さや土の状態等の相関性を調べる研究が行われています.
       参考文献 土質力学 河上房義  森北出版株式会社 等の 土質に関する本には大体書いてあるので参考にしてください.(や)
     
  15. 某建設機械会社のものですが,生コンクリートの導伝率又は, 電気抵抗でも良いんですが,データ有りませんでしょうか. 聞くところによるとコンクリートは, 一般にアルカリ性で材料や水に依って大きく変動,又, 地方によって材料の性質も違っている様なんですが. では,よろしくお願いします.(その他:50歳代) 目次に戻る
       コンクリートの熱伝導率に関するご質問に対して回答いたします. ご指摘のとおり,コンクリートの熱伝導率は,骨材の鉱物学的特性によって影響され, さらに,含水量,密度,およびコンクリートの温度にも影響されると言われています. 例えば,石英岩を含むコンクリートの熱伝導率は 3.5 W/mK であり, 玄武岩ですと 1.9-2.2 W/mK 程度であると言われています. 当然熱伝導率が高いコンクリートほど熱がたやすく移動するということになります.
       参考文献:Mehta, P. K. and Monteiro, P. J. M.: コンクリート工学,微視構造と材料特性,田澤榮一,佐伯昇監訳, 技報堂出版,1998.(い)
     
  16. 鋼とコンクリート構造の特徴についてと, 複合構造の形式とその特徴について教えてください.(その他:大学生・短大生) 目次に戻る
       鋼とコンクリート構造の特徴(合成構造の特徴)
    1. コンクリートが鋼構造に生じやすい座屈を防止する役目を果たしており, 靭性に優れた構造である.
    2. RC 構造に比べ,部材断面の減少が可能であり,死荷重の軽減を図ることができる.
    3. 鉄筋コンクリートとして備える耐火性を有している.
    4. せん断性状は,鉄筋コンクリート部材と変わらず, 保有するせん断耐力は鋼部分を除いた RC のものと概ね一致する.
    5. 短スパン構造では,RC 形式に比べ高価である.
       複合構造は,鋼要素とコンクリート要素との複合が一般的です. 土木分野では, 橋梁下部や上部構造として使用している施工例がいくつか報告されています.
    1. 鋼管・コンクリート複合構造部材:断面内に複数配置された鋼管や 帯鉄筋の代わりにスパイラル状に巻き付けた PC 鋼より線を用いている. 鋼管内部は,中空断面とし,自重の軽減を図っている. (参考文献:渡辺ら:鋼管・コンクリート複合構造部材の正負交番載荷試験,土木学 会論文集,第 627 号/V-44,pp.113-132,1999.8)
    2. プレビーム橋:I 型断面を有する鋼げたに曲げ変形を生じさせる荷重を与え, 引張側フランジのまわりにコンクリートを打設,硬化させた後, 鋼げたに与えていた荷重を取り去ることにより, コンクリートに圧縮プレストレスを導入したもの. (参考文献:(財)国土開発技術研究センター:プレビーム合成げた橋設計施工指針 第 3 版,平成 9 年 7 月)
    3. 波形鋼板ウェブ PC 橋:ウェブに軽量な波形鋼板を使用することにより 自重を大幅に軽減させ,スパンの長大化と施工の省力化を図ったもの. また,主桁自重が軽量化されることで,下部工への荷重負担が軽減され, 橋梁全体系として耐震安全性の向上を図ることができる.現在, この構造形式では世界最大支間長となる本谷橋(東海北陸自動車道)を施工中.
       また,この他にも近年は, 炭素繊維シート等も構成要素として用いられるようになってきました. 具体的には,炭素繊維シート貼り付けによるコンクリート構造の耐震補強方法が 大型橋梁に適用されるようになりました.今後も,合成作用,架設上の有用性, 急速施工および補修補強のために,様々な要素を組合せた複合構造の発展が 期待されます.(あ)
     
  17. 回分式活性汚泥法で処理をしていますが, 低 DO が原因と考えられる糸状菌のバルキングが起りました. 回分式での対応方法をお教えください.糸状菌は Type021N だと思われます. また,バルキングと同時に,活性汚泥が増えない現象も見られます. 廃水処理は CDO300 が 25 ぐらいまで下がるので, 問題無く行えていると考えています. 宜しくお願いいたします.(その他:30歳代) 目次に戻る
       ご依頼の件,回分式活性汚泥法の運転条件,BOD 負荷,水温, 原水の性状等の情報が全くわかりませんので, 一般論(微生物の特性)として答えします.
       COD300 mg/L というのは, 食品排水ですか? TN,TP の濃度はどのくらいですか? 糸状細菌 021N は好気性ですので,嫌気条件にはきわめて弱い微生物です. 低 DO といういうことですが,曝気槽内の DO が安定していれば十分増殖可能です. 回分操作のなかで 2-6 時間嫌気撹拌を行えば異常増殖はおさまると思います.
    例)
         12 時間サイクル
              流入 嫌気  好気 沈殿/排出
               +----+----+-----+-------+
         サイクル  0  1  4  10   12
    
         24時間サイクル
              流入 嫌気  好気 沈殿/排出
               +----+----+-----+-------+
         サイクル  0  2  8  22   24
    
    外観水質は悪くなりますが嫌気時間を長くすれば 021N の増殖は抑制されます. 一般的にバルキング状態のときは処理水質が良好なので活性汚泥が 流出しないように沈殿時間を長く(例えば 3-4 時間)とればよいと思います. 処理水質が COD25 mg/L ということですので, 活性汚泥が流出しない限りこのままの条件で運転しても問題はないと思います.(す)
     
  18. RC巻き立て工法にて橋脚を耐震補強する際に, フーチングへのアンカー鉄筋の本数はどのようにして決定するのが良いのでしょうか? (その他:30歳代) 目次に戻る
       鉄筋コンクリート巻立て工法にて橋脚を耐震補強する場合, 巻立てコンクリート部の軸方向鉄筋をフーチングに定着することで 増加する橋脚躯体の曲げ耐力(フーチングに定着した軸方向鉄筋のみ 曲げ耐力算定時に考慮)により,段落とし部や基礎へ伝達される地震力が 大きくなることに配慮する必要があります.
       基礎に関して言えば,基礎形式が直接基礎であるならば, 橋脚の曲げ耐力の増分が問題になることは少ないと思います. ただし,巻厚が大きくなり死荷重の増分が無視できなくなる場合は別です. また,杭基礎の場合には,死荷重の増分と橋脚から基礎へ伝達される 地震時慣性力の増分を考慮して,照査を行います.
       基本的には,橋脚の補強後も, 地震時に段落とし部や基礎に損傷や非線形性を生じさせない中で, 保耐の照査を満足するように耐力・じん性の向上を図ります. 従って,フーチングへアンカーする鉄筋本数は,この曲げ耐力の計算時に 軸方向鉄筋として考慮する数と言えます.一方,曲げ耐力を増加させなくても, じん性の向上のみで所要の耐震性が確保できる場合には, 軸方向鉄筋をフーチングにアンカーをする必要はありません.(あ)
    参考文献
    (社)日本道路公団:既設道路橋の耐震補強に関する資料,1997.8
    
     
  19. 津波に対する防潮堤の検討を行う際,津波が防潮壁に働きかける圧力というのは, 高水位時の静水圧の他にあるのでしょうか. また,津波が遡上してくる際に,垂直に立つ防潮壁と,水平に立つ防潮壁とでは, 受ける力が違うように思えるのですが, このあたりのことを詳しく書いた文献があれば是非教えてください. (その他:30歳代) 目次に戻る
       まず, 設計時の圧力は静水圧に加えて,波動としての動圧も含んでおり, 算出には合田式が用いられております.ただし,この方法は, 通常の風波を対象としており,津波の特徴(段波的な挙動)を 正確に考慮していませんので,推定精度が落ちます. 一方,福井ら(1962)が,段波的な津波の水理実験をして 波力の算定式を提案していますが,広く用いられておりません.
       垂直に立つ防潮壁と水平に立つ防潮壁では, 作用する波力は大きく異なると予想されますが,詳細な検討はありません.
       今度,海岸便覧が改正され, そこに設計津波や現在の設計手法などが詳しく記載される予定です.
       以下は参考文献です.ご参考に.(い)
    1. 合田良実・福森利夫: 直立壁および混成堤直立部に働く波圧に関する実験的研究, 港湾技術研究所報告第11巻第2号,1972
    2. 合田良実: 防波堤の設計波圧に関する研究,港湾技術研究所報告第12巻第3号,1973
    3. 福井芳朗・白石英彦・中村充・佐々木泰雄: 津波の研究 (I) −段波津波の波速について−,第9回海岸工学講演会講演集,1962a
    4. 福井芳朗・白石英彦・中村充・佐々木泰雄: 津波の研究 (II) −段波津波の堤防におよぼす影響−, 第9回海岸工学講演会講演集,1962b
     
  20. セメントの起源とその歴史について詳しく知りたいので教えてください.(その他:20歳代) 目次に戻る
       セメントに近いものは,古代エジプト, ギリシャローマ時代にも使用されております. また,中国でも,1980 年代に約 5000 年前の住居址が出土し, その床面にセメント系の材料が使われていたと推測されています. 現在使用されているセメント(ポルトランドセメント)は, 1824 年に英国人のアスプジンがその製造方法を発見し,特許を取得しました.
       セメントの起源とその歴史に関する文献は, セメント科学の参考書
    例えば,山田順治,有泉昌,わかりやすいセメントとコンクリートの知識,鹿 島出版会,pp.3-12,1996.
    をお読みになるとよろしいかと思います. また,中国で発見されたセメント系材料の話は,
    李最雄,世界最古のコンクリート,日経サイエンス1987.7,pp.74-84,1987.
    に詳述されているようです.(い)
     
  21. 道路の排水計画をする上で, 道路の舗装が排水性舗装の場合の流出係数の設定を教えていただきたい. 基準となる排水工指針には明確に記載されていません. 何かの図書等に記載されているものがないのでしょうか.(その他:30歳代) 目次に戻る
       この問題は比較的新しいためか 図書等に記載されている数値はないように思います.
       しかし, 排水性舗装の流出係数としては通常の舗装と同じと考えるべきではないでしょうか? と言うのも,排水性舗装は基層に不透水層があるため, 結果的に通常の舗装と同じと考えざるを得ないと思われます. 流出量のピークを遅らせる等の効果があることは, いくつかの研究で紹介されています.
       なお,透水性舗装の場合は, 雨水などが地面まで浸み込みますので流出係数を小さくできそうですが, 空隙詰まりの問題があるためか, 排水工指針の通常のアスファルト舗装の係数のうち最も小さい値を採用することが 多いと思います.
       透水性舗装と排水性舗装に関しては (株)渡辺組のホームページの「建設用語小辞典」 を参考にしてください.    透水性の大きい舗装が透水性舗装で,それを作るには, 透水性アスファルト混合物,透水性コンクリートが用いられます. 透水性舗装と排水性舗装は見た目は同じですが, 透水性舗装は舗装の下の路床まで水が透っていきます. 路床に水が入ると一般には悪影響がありますので, 歩道のような軽い交通のところか, 重交通の道路に用いる場合は路床から水が入ってもいいような設計に する必要があります. 排水性舗装では透水性の舗装のすぐ下に水を透さない層を設け, 側方に排水します.(た)
     
  22. 排水性舗装における等値換算係数の値について, 記載されている文献等がありましたら教えていただきたいのです. (排水性舗装技術指針には通常のアスファルト舗装と同程度の荷重分散性能及び 疲労抵抗性が確認されている場合は 1.0 とする.と書かれている点など.)(その他:30歳代) 目次に戻る
       日本では, 表層混合物の種別に応じた係数の使い分けはしていないと思います(多分).
       日本道路公団でも,設計要領第一集舗装編(H11.7) の中で 「高機能舗装(排水性舗装)の等値換算係数は, 高速道路上における弾性係数や供用性能の調査の結果, 従来の密粒タイプと同程度と見なせることから 1.0 とすることとした.」 としているようです.
       また,余談になるかもしれませんが,これについては, 国により様々な評価をしているようです. 下の資料を参考にしていただければ幸いです.(た)
    • An investigation by Potter and Halliday, 1981 in Britain
      Potter J.F. and Halliday A.R., The Contribution of Pervious Macadam Surfacing to the Structural Performance of Roads, TRRL Laboratory Report 1022, 1981.
      showed that 40mm thickness of porous wearing course was equivalent in contribution to the structural strength of a 20mm British Hot Rolled Asphalt.
    • The latest draft of the Swiss new Standard for porous asphalt suggests that 1 cm thickness of the traditional Swiss base course mix is equal to 1.5cm of porous asphalt, and that the structural contribution of porous asphalt is equal to 65% strength of other surface mixes, including Gussasphalt and SMA (SN 640 433b, 1999).
      Swiss Standards ; Schweizer Norm , VSS Zurich: SN 640 433b (Draft): Porous Asphalt; Drainasphalt-Belaege, 1999.
    • Dutch and Belgium researches conclude that, in comparison to dense mixes, a layer thickness equivalency factor of 0.8 to 1.0 can be assigned to porous asphalt (Gerardu et al., 1985).
      Gerardu J.J.A., Hansen F.A., Jonker C. and Van der Plas J.J., The Use of Porous Asphalt Wearing Courses in the Netherlands, Proc. 3rd Eurobitumen Symp., Hague, pp. 676-685, 1985.
     
  23. 海岸工学 合田式による波力合力,波力モーメントの式の導き方を 知りたいのです.それは
      P=(1/2)*(1+α3+(1+α4)*(he´/h´))*(p1*h´)
      Mp=(1/6)*(2+α3+3*(1+α4)*(he´/h´)+
        (1+2*α4)*(he´/h´)**2)*(p1*h´**2)
    
    という式です. 本によって微妙にあらわし方がちがうかもしれません.(大学生・短大生) 目次に戻る
       合田式による波力合力およびモーメントの算定について
    1. 合力の求め方    合田式において,
        η :構造物に作用する波圧の水上鉛直高
        he':構造物の水上鉛直高
        h' :構造物の水中鉛直高
        p1 :静水面上に作用する波圧値(最大値)
        p3=α3・p1:構造物下端に作用する波圧値
      
      とすると,構造物上端に作用する波圧値 p4 は,p4:p1=(η-he'):η より, p4=(η-he')p1/η=α4・p1 (ここに,α4=(η-he') /η)
         全波力 P は波圧作用全面積である.
        P(水上部) =(1/2)・(p4+ p1)・he'
             =(1/2)・(α4・p1+ p1)・he'
             =(1/2)・(α4+1) p1・he'
        P(水中部) =(1/2)・(p3+ p1)・h'
             =(1/2)・(α3・p1+ p1)・h'
             =(1/2)・(α3+1) p1・h'
      
      よって,
        P =P(水上部) + P(水中部)
         =(1/2)・(1+α3+(1+α4)・(he'/h'))・p1・h'
      
    2. モーメントの求め方    台形の図心算定公式をもちいると, 構造物下端から P(水中部)の図心までの鉛直距離 z1 は,
        z1=(h'/3)・(2・p1+ p3)/(p1+ p3)
         =(h'/3)・(2・p1+α3・p1)/(p1+α3・p1)
         =(h'/3)・(2+α3)/(1+α3)
      
      構造物下端から P(水上部)の図心までの鉛直距離 z2 は,
        z2=h'+(he'/3)・(2・p4+ p1)/(p4+ p1)
         =h'+(he'/3)・(2・α4・p1+p1)/(α4・p1+ p1)
         =h'+(he'/3)・(2・α4+1)/(α4+ 1)
      
      よって,
       M(水中部)= P(水中部)・z1
          = (1/2)・(α3+1) p1・h'・(h'/3)・(2+α3)/(1+α3)
          = (1/2)・p1・h'・(h'/3)・(2+α3)
          = (1/6)・(2+α3)・p1・h'^2
       M(水上部)= P(水上部)・z2
          = (1/2)・(α4+1) p1・he'・(h'+(he'/3)・(2・α4+1)/(α4+ 1))
          = (1/6)・(3・(α4+1) h'・he'+ (2・α4+1)・he'^2)・p1
          = (1/6)・(3・(α4+1)・(he'/h')+ (2・α4+1)・(he'/ h')^2)・p1・h'^2
      
         全モーメントMは,
       M= M(水中部) + M(水上部)
        = (1/6)・(2+α3+3・(1+α4)・(he'/h')+(1+2・α4)・(he'/ h')^2)・p1・h'^2
      
    となります.(い)
     
  24. 山間部等の斜面上に基礎構造を設ける場合, 施工上から深礎杭とするケースが多く, その設計方法についても参考となる資料があるようです. そこで,地盤は傾斜しているが深礎杭としなくても基礎杭の施工が可能な場合 (既成杭や場所打ち杭等)その設計方法は深礎杭に類似したほうが良いのか, または水平方向地盤反力等を低減する程度で弾性体基礎として行って良いのか, 御教授願いませんでしょうか. 目次に戻る
       残念ながら,ご質問の内容からだけでは,お答えできません. 基礎の設計は,細かいことを言えば,地盤条件の他,現場の施工条件, 基礎が支えるべき構造物の種類, 考慮すべき外力によって異なると思われるからです.
       一般的に参考になるものとしては,
      近代図書 「疑問に答える 杭基礎の設計・施工ノウハウ」改訂版 4000円
      土質工学会(地盤工学会)杭基礎の調査・設計から施工まで 改訂版 8100円
    
    があります.(か)
     
  25. 試験しようとする既設道路は日交通量 8000 台ほどであり, クラックやわだちぼれが交差点付近 50 m 程がみられますが 現在の走行性には問題がありません. 舗装補修工事としては維持管理工事が何回か施されており 下水工事の本復旧アスファルト工事も施工されています. 当道路は何十年前に施工されていて過去の路床 CBR がわかりません. このような場合,CBR 試験の必要性を判定する方法を教えていただけませんか? また,上記のような状態では試験の必要性はあるでしょうか? このようなことが書いてある書籍なども紹介していただけないでしょうか? 目次に戻る
       舗装の専門としている方より,次の回答が寄せられました:
       私見ですが,従来の経験的舗装設計法では, 厳密に設計するなら,CBR などの何らかの支持力が必要になると思います. 最近では開削調査せずに FWD 等で支持力調査をするという方法もあります. CBR や FWD を使わないにしてもベンケルマンビームでたわみ量を測定しておけば, 維持修繕要綱に示されているように補修方法の目安がつけられて 都合が良いと考えますが.
       道路にクラックが発生しているのであれば, やはり路床の支持力調査が必要と思いますが, ではどこで「する」,「しない」の線引きをするのかは分かりません. また,そのようなことに言及している書籍も記憶にはありません.(た)
     
  26. 今回,私は学校の課題のテーマを, 「コンクリートについて」にしたのですが,新書などで, よくわからない専門用語がたくさん出てきて困っています. どういう意味か,教えてください.
    1. モルタル
    2. アルカリ骨材反応
    3. コア
    4. X線回析試験
    5. 電子線マイクロアナライザ
    などなど.まだ良く分からないこともあるのですが,とにかくこれだけ. どういう意味なのでしょうか.教えてください.(中学生) 目次に戻る
       中学校の課題で,どの程度説明すれば良いのか難しいですが, これらの言葉を簡単に説明すると以下のようになります.
    モルタル
    水とセメントと砂を練り混ぜたもの. ちなみにコンクリートは水とセメントと砂と砂利を練り混ぜたものです.
    アルカリ骨材反応
    コンクリート中に含まれるアルカリ(ナトリウム等)と, コンクリート中の砂や砂利が化学反応して,膨張性の化合物を生成し, その膨張圧によって,コンクリートにだんだんひび割れが生じ, 損傷していく現象のことです.
       コンクリート構造物を長く安全に使って行くためには, このようなことが起きないように注意してコンクリートを作る必要があります. また万が一アルカリ骨材反応が起こってしまった場合には,適切な処置が必要です.
    コア
    コンクリートやモルタルから取り出した試料(サンプル)のことです. コンクリート構造物はとても大きく,そのまま検査や診断を行っても なかなか詳しく正確にコンクリートの様子を調べることができないので, 構造物から小さな試料を採取し,ろいろな試験を行って, そのコンクリートが健全かどうかを判断しています.
    X 線回析試験,電子線マイクロアナライザ
    この2つを,中学校で習っている範囲で説明することはとても難しいのですが, 以下のように解釈してもらえれば十分だと思います. コンクリート構造物から取り出したコアに対して,これらの試験を行うことにより, コンクリートがどのような化合物で構成されているか調べることができます. その結果,調べた試料にアルカリ骨材反応が発生しているかどうかを判断すること ができます.
    大きな本屋さんに行くと,コンクリート用語集というのがおいてありますので, それを見れば大抵のことは調べることができます.(い)
     
  27. レベル 1 地震動やレベル 2 地震動という言葉を聞いたのですが, どういう意味ですか.(その他:20歳代) 目次に戻る
       レベル 1, 2 というのは, そもそも 1995 年の兵庫県南部地震を契機として, 土木構造物の耐震設計の際に考慮すべき地震動のレベルを 二つ考えようというものです.
       レベル 1 とは, 構造物の供用期間中に 1 回程度,当該地点で発生する可能性のある地震動であり, 今までは主にこのレベルの地震動に対して設計されてきました. 仮に,このレベルの地震動を被った場合には, 構造物は軽微な被害であることが性能仕様として要求されています.
       一方, レベル 2 というのは,未だ学会でも議論があるところですが, 今年 2000 年の 3 月に出された「土木学会 地震工学委員会 レベル 2 地震動 研究小委員会の活動成果報告書」によれば, 「レベル 2 地震動とは構造物の耐震設計に用いる入力地震動で, 現在から将来に渡って当該地点で考えられる最大級の強さを持つ地震動である.」と 用語説明されています.一般に, このレベルの地震動に対して無被害となるように構造物を設計することは, 経済的にも技術的にも困難であるため, このレベルの地震動を被った場合には,構造物がある程度壊れることを許容するが, 人的被害や 2 次災害に結びつかないような被害にとどめることが 性能仕様として要求されています.
       しかし, このような考え方に基づいた設計は,始まったばかりであり, 今後経験を積み重ねて,よりよいものにしていく努力が必要とされているところです.
     
  28. 大型ブロック積み擁壁の安定計算をもたれ式と同様に計算を行う場合, 地盤反力を求める際に,作用位置が基礎部分からはずれてしまう事が多々あります. その際の地盤反力の求め方及び,この場合の安定解析の考え方を教えて下さい. また,関連図書が有りましたら教えて下さい.(その他:40歳代) 目次に戻る
       状況が不明ですが, 一般的には最下部の基礎の形式を工夫してそのようなことにならないようにする方が ベターと考えます.なお,参考になるかどうかわかりませんが,関連図書としては, 「土圧の謎をやさしく解く(福岡正巳著 近代図書 3500 円)」があります.(か)
     
  29. 土被り 10 m 程度のボックスカルバートの支持力を計算したいのですが, 支持地盤の土質定数 c, φの試験値がある場合, どの公式を用いて計算すればよいのでしょうか? (もしテルツアギーの支持力公式を採用するとした場合, 有効根入れ深さ Df のとりかたは?)どういう意味ですか.(その他:30歳代) 目次に戻る
       この件は,質問の内容からだけでは,お答えできません. というのは,ボックスの構築方法,例えば
     1) 既存地盤の上にボックスを作成し,さらに上に土を盛るのか
     2) 既存地盤を開削し,ボックスを構築後,埋め戻すのか
    
    や, ボックスの上に新たな荷重としてどの程度のものが作用するのかが不明だからです.
        2) の場合は支持力は問題とならないでしょう.1) の場合には, 支持力という意味では,ボックス構築時に最も厳しくなると思います.(か)
     
  30. セメント改良土の六価クロム溶出試験を実施することになりました. 深層混合処理後にチェックボーリングを行い, 採取したコアの 28 日一軸強度試験を実施したものを利用しようと思います. 分析は所定の計量証明機関に依頼したいと思いますが, 改良体の持ち込みは 28 日当日でないと悪いのでしょうか? 施工日数の関係で,圧縮日がまちまちのため,最終日の圧縮まで待って, まとめて持ち込みたいと思っているのですが.まとめると, 最初の 28 日圧縮から 10 日後になります.(その他:40歳代) 目次に戻る
       六価クロム溶出試験の目的に照らし合わせて検討すべきです. すなわち,長期の溶出特性が問題となるならば,28 日にこだわる必要はないでしょう. また,施工後短期間での溶出特性の違いを問題にしたいのなら, 施工後の日数をパラメータにした溶出試験をする必要があると考えます.
       質問の内容では, 養生日数を一定とした一軸圧縮試験といっしょにする必要があるかということですが, 目的が違う以上,いっしょにする必要はないと思います.
       さらに,六価クロム溶出試験とは, 汚染土壌そのものを深層混合処理して, 封じこめることの有効性を確かめるためのものなのか? あるいは,汚染土壌の周りのバリヤーとして使うのか? あるいは,それ以外の用途なのか?不明ですが,いづれにせよ, 目的・現場条件に合った試験とすべきと考えます.(か)
     
  31. 杭基礎における杭反力および変位の計算では, 「変位法」を一般に使用して設計していますが, そもそも「変位法」というのは誰が考え出したのでしょうか? 歴史と理論の背景,日本で広く使われている理由などが解れば教えて下さい. また,杭軸方向を線形弾性体として計算する際, 「林−Changの式」という言葉を見ますが,この方々はいつごろの人で, どこの方なのか,これが無かったときはどうゆう設計をしていたか 解れば教えて下さい.(その他:20歳代) 目次に戻る
       杭の設計や歴史の専門家ではないので, 私の知っている範囲でお答えいたします.
       杭や矢板の設計では断面力を出さなければなりませんので, それを計算する訳ですが, 杭が支えている上部構造物の荷重は結局は地盤に伝えるわけですから, 杭体と地盤の相互作用で上部構造物の荷重を支えるというメカニズムになります. 初期の頃,`Chan 氏' (American Society of Civil Engineers, 1937) は, 杭の変位に応じて地盤がどのように抵抗してくるかを, 杭の変位量に比例した抵抗を地盤が発揮すると考え, 弾性床上の梁として解く方法を示しています.その後, 地盤種(粘性土か砂質土か)や地盤反力の非線形性を考慮した方法などが 開発されました.(久保公式,港研方式などと呼ばれています. これらの設計法は,杭が鋼でできている関係から, 製鉄会社のエンジニアリングの部門から発展した経緯があります. ご質問の「林氏」については思い当たる方がありますが, 不正確なのでよくわからないということにしておきます.
       本文は, 港湾の技術上の基準・同解説(1999)上巻,457-496 を見て 簡単にコメントしているものです. 私の知るかぎり,「横山幸満:杭構造物の計算法と計算例,山海堂,1977」 が詳しい解説をしていると思いましたので, 歴史など答えきれなかった部分はそちらをご参照ください.(か)
     
  32. フィルダムの築堤において,まさ土を利用した場合の問題点を教えてください. (その他:20歳代) 目次に戻る
       ご存知のとおり,花崗岩が風化したものをまさ土といいます. さらに,風化したものがその場所に残っているものを風化残積土と言います. 一口にまさ土と言っても,風化度の違いによって千差万別と言われておりますので, ご注意下さい.
       いわゆる特殊土と言われ, これは通常の土質力学の枠組みで必ずしも取り扱えない土を指しています. 詳しくは,
    1. 「日本の特殊土」地盤工学会編
    2. 新体系土木工学 土木学会編 技法堂出版 土質力学-特殊土
    などをご覧下さい.
       さて,まさ土の特殊性は,風化度に左右されますが, 一般には細粒のものから,レキまでを含む粒度分布のよい土ですから, 締め固まりやすく(少ない締め固めエネルギーで良く締まる), 透水性も小さいため,どちらかと言えば堤体材料としては, よいものと言えるかもしれません. しかし,これは施工管理をきちんとした場合であり, 材料の不均一性や母岩の性質にも注意する必要があります.例えば,一般には, 粒子破砕性が大きく,粒子破砕強度以上となるような深いところへの使用には, 不適なのかもしれません.また,乾燥状態で締め固めても, 水浸によって体積収縮する性質があり,含水比などの施工管理は重要です.
       以上,一般的なことを述べましたが, まさ土の種類に依りますので, そのまさ土に合った適切な対応が必要と考えます.(か)
     
  33. 交差点を設計するにあたり, 交差点飽和度が λ = 0.9 に成るように信号サイクルを求めましたが, 混雑度が 1 をわずかに越えてしまいました. 「平面交差の計画と設計」では交差点飽和度は求めていますが, 混雑度は求めていません.混雑度は無視して良いのでしょうか? 使用しているソフトはXXティYYの「信号時間検討システム」です. (その他:20歳代) 目次に戻る
    #お答えしますが,実務には「疎い」ことをご了承ください.
       まず第一に, 混雑度については全く触れられていない「交通工学」の教科書も多数あり, 純粋技術的な指標というよりはたぶんに行政的な意味あいが強いと考えられます. また,判断にあたってはどのように混雑度を求めているかの確認が必要となります.
       書籍によっては,
       混雑度=交通量/交通容量 (1)
    
    といった説明しかされていない場合もありますし,
       混雑度=交通量/評価基準交通量 (2)
       (評価基準交通量は設計交通量にK値,D値による換算を行い算定)
    
    となっているものもあります.あるいは,
       混雑度=12 時間当たりの実交通量の乗用車換算台数/12 時間交通容量 (3)
       ○12 時間当たりの実交通量の乗用車換算台数:
        大型車の通行による影響を勘案した実交通量
       ○12 時間交通容量:
        車線・時間当たりで設定している基準交通容量を車道幅員や沿道状況,
        信号交差点等により補正し,乗用車換算した交通容量
    
    と説明される場合もあります.
       混雑度が (1) で求められ, 考慮する交通量に対して信号サイクルを考慮した交差点交通容量が下回って, 混雑度が 1 を超えているとすれば, 交通を処理しきれないことになりますので大きな問題となり, 無視することはできません.
       (2) の混雑度に触れられた書籍を参考にすると:
    • 1.0 未満の場合には,昼間 12 時間を通して混雑することなく円滑に走行できるが,
    • 1.0 を超えると混雑する時間帯が徐々に増加し,
    • 1.75 以上の場合には慢性的混雑状況を呈する・・・
    などと説明されています.
       この混雑度であれば, 1.0 を超えたとしても交通状況が急激に悪化するということでもありませんので, 「あまり気にしない」(無視する)でもよいかも知れません.
       一方,「行政的」には, (3) で混雑度を求めて,1.0 未満の区間を「整備済み道路延長」としています. (ただし,この場合には交差点に対して混雑度を求めたりはあまりしませんので, お問い合わせの混雑度はこれに対応した値ではないと思われますが.)
       上記の検討が道路整備を考慮した新設 あるいは改良などであった場合に, (3) 式の混雑度が 1.0 を超えているということであれば, 整備を行ったのに「整備済み」とならないという矛盾を抱えることになります. (このあたりを官庁あるいは発注者側がどのように判断するかについては 役所の担当者などにお尋ねください.)
       また,お問い合わせの直接の対象ではありませんが, 交差点飽和度が 0.9 となった場合であっても, 損失時間あるいはスプリットなどの値によっては, 交通処理上問題となる場合もありますので方向別の滞留確率なども 別途検討することが必要かと思います. (これも飽和度をどのように求めているかによって判断が異なってきますので, どのように求めているかの確認が必要ですが.)(た)
     
  34. A 法,B 法とは何ですか?(その他:40歳代) 目次に戻る
       土の締固め(突固め)方法の種類として A〜E(大文字)まで 5 つの分類がなされています.
       ご質問の A, B 法はランマーの質量,モールドの内径, ランマー落下高さ,突固め層数,1 層あたりの突固め回数, 許容最大粒径によって分類されています.
    A 法 B 法
    ランマー質量 (kg) 2.5 2.5
    モールド内径 (cm) 10 15
    ランマー落下高さ (cm) 30 30
    固め層数 3 3
    1 層あたりの突固め回数 25 55
    許容最大粒径 (mm) 19 37.5
       また,その他にも試料の準備方法, 使用方法の組合せによっても a, b, c(小文字)の方法があります.
    a 法: 乾燥法で繰返し法
    b 法: 乾燥法で非繰返し法
    c 法: 湿潤法で非繰返し法
       例えば,試験方法が A 法で 試料の準備は b 法だとすれば,A-b 法と呼びます. A, B 法はエネルギーの小さい締固め試験に用いられ,C〜E 法はエネルギーの 大きい締固め試験に用いられています.
       上記の内容は, (社)地盤工学会の「土質試験 基本と手引き」または「土質試験の方法と解説」の 中で「突固めによる土の締固め試験」の章に記述されておりますので, そちらの資料も参照ください.(せ)
     
  35. 現場飽和度・空気間ゲキ率測定試験の方法を教えてください(その他:20歳代) 目次に戻る
       現場において飽和度または空気間隙率を求めるためには, 現場において, 地盤の密度と含水比を測定する必要があります. 現在用いられている方法としては3つの方法があります.
    1. 砂置換法(JISA1214)
    2. 水置換法
    3. RI(ラジオアイソトープ)法(JGS1614)
    があります.
       最初の二つの方法は地盤を掘って, 粒径のそろった砂または水により置き換えることにより掘った穴の体積を求め, 掘った地盤の質量を求めた体積で徐すことにより湿潤密度を求めます. 同時に掘った土の一部より含水比を測定することにより,乾燥密度も求められます. 乾燥密度,含水比,土粒子の密度がわかれば飽和度または 空気間隙率が求められます.
       三つ目の方法は ラジオアイソトープ(放射性同位元素 RI)線源から伝わるガンマ線より 土の密度(湿潤密度)を求め,中性子線より含水量を求め, それらから乾燥密度,含水比が計算されます.RI 法は試験に要する時間が短く (計測は一箇所 1 分程度),測定者によるばらつきも少ないため, 大規模な土構造物の締固めの施工管理に多く用いられています.(せ)
     
  36. 現在またはこれから予定されている砂漠の緑化への土木工学の役割には どんな事がありますか(大学生・短大生)目次に戻る
       土木工学(非常に広い!)が砂漠緑化にしてきた貢献を列挙すると
    • ネット,シェルター等の防砂施設の設置
    • 地下水資源開発.日本伝統の上総掘りの技術はアフリカで効果をあげています.
    • 灌漑施設.農業土木の分野で多くの技術があります.ダムや堰から導水します. アスワンダムやアメリカ西部が有名.
    • すそ野のことをいうと,緑化事業を行うインフラの確保は土木の仕事です. 道路や情報網等
    これから予定されているものや最新のものとしては,
    • 人工降雨
    • トルコからサウジアラビアへのパイプライン
    • アラル海沿岸部への北極海流入河川逆流計画
    • ウオーターバッグ
    などがあります.主に水の手当てです.
        その中で土木工学の役割はハード的には,
    • 水源の確保(ダムや井戸の建設)
    • 灌漑の手当て(開水路や管路で水を運ぶ)
    • 砂の移動を制御する(シェルターやネット)
    • 緑化事業を円滑に行うために施設造り
    等があり,ソフト的には,
    • 水源地のモニタリングと取水量の管理
    • 節水プログラム(給水制限や点滴灌漑など)
    • 環境評価(水源開発や灌漑のもたらす影響を調べる)
    等があります.以下に関連文献を載せておきます.(か)
    遠山柾雄「砂漠を緑化に」岩波新書
    マークライスナー,片山夏実訳「砂漠のキャデラック」築地書館
    土木学会:「水資源は大丈夫?」,土木学会誌,2000年11月号
    
     
  37. 最近屋上緑化行われているが,屋上緑化することにより, 流出係数の変化等により雨水流出の抑制が図られると考えられるのでしょうか. 屋上に降った雨はいったん緑化施設内に浸透するが 最終的にはすべて流出してしまうので, 地上での流出係数等の考えと違ってくると思うのですが. 一般的な考え方,参考図書等がありましたら教えていただけますか. よろしくお願いいたします.(その他:40歳代)目次に戻る
       質問は2つの意味があるようです. 一つは流出係数の考え方,もう一つは,緑化による流出量の変化についてです.
       先に,緑化による流出量の変化について述べます. 緑化を行うと葉や枝による遮断によって地面に到達する雨量は減少します. 普通最大 2 mm 程度の初期降雨はここに貯留されます. この貯留は最終的には遮断蒸発となります.
       地面に到達した雨量は,根幹域でやはり捕捉され,貯留されます. これらは蒸散に寄与します.
       以上は,損失降雨となるため,流出量自体が減少することになり, 降雨に対する流出量(流出係数)は減少することとなります.
       流出係数の定義は,Rr = R/P (R: 流出量,P: 降水量) で 与えられます.しかし,この定義には,時間の概念が無いため, 任意の時間スケールで論じられることが多いようです.
       合理式では,時間当りの量が考えられています. つまり,1 時間内に降った雨が 1 時間に全て流出すれば 1.0 になります.
       翻って緑化を考えると, 地中を通過する水(地中水)の移動速度は極端に遅いため,流出遅れが生じます. つまり,降雨が生じた時間内の流出量は少なくなり, 流出係数は小さくなることが期待されます.
       但し,降雨期間が極端に長い場合や, 降雨強度が極端に強い場合は,この限りではありません.一般に緑化は, 都市の洪水流量と流出係数の減少に寄与すると考えられています.(か)
    参考文献:
    塚本良則:森林水文学,文永堂出版
    吉川秀夫:河川工学,朝倉書店
    

    もうひとつの回答例

       屋上庭園の植栽に限定した教科書や論文は知りませんが, 以下のように考えれば良いと思います.
       コンクリート製の屋上では 降った雨はすぐに排水孔から下水に流出しま す.舗装道路も同様で,これが都市部で流出率が高くかつ流出速い原因 になっています. 植生があると,樹の葉を濡らす効果,土壌に浸透する効果で,降った雨 はすぐには流出しません.葉を濡らした雨はそのまま蒸発し結局流出し てこない部分がかなりあります.これを遮断損失と言います.土壌に入 った水も,それが土壌を飽和させるまでは出てきません.濡れた土壌も 雨が上がれば蒸発で最終的に流出してこない部分がかなりあります. 結局,屋上植栽であっても降雨の流出率を下げ,かつ流出を遅らせる効 果を期待できます.その効果がどれほどであるかは,植栽の規模,土壌 の深さなどで種々に変化します.植栽に給水し,その量と,排水孔に出 てくる量を測定してみれば量的な関係がわかります.
       ご指摘のように, 「浸透するが最終的にすべて流出してしまうので」ということはありません. (さ)

     
  38. 波形鋼板ウェブのアコーディオン効果とは どのような効果なのでしょうか.(大学生・短大生)目次に戻る
       「波形鋼板ウエブ PC 橋」と言う形式の鋼と プレストレストコンクリートの合成構造の橋が 1980 年台にフランスで開発され, 日本では岐阜県の「本谷橋」(道路公団)があります. この橋は上下面は PC 板でウエブが波形鋼板の中空の箱型構造になっています. 荷重がかかったとき,ウエブが波形のため, アコーデオンのように曲げには抵抗せず,主にせん断力を分担し, 上下面の PC 版に生じる軸力(軸力 x ウエブの高さ)で 曲げモーメントに抵抗する構造になっています.(に)
     
  39. 無筋コンクリートの場合ひびわれの影響によって, 材料及び構造等にどのような影響を及ぼすのでしょうか.
       コンクリートの劣化に関する図書を読むと, 漏水又は透水によりコンクリート(特に無筋コンクリート)の生成物である 水酸化カルシウムが溶出し強度が低下すると記述されていましたが, どのような理由で強度が低下するのでしょうか. (その他:30歳代)目次に戻る
       上記に2問まとめて,解答します.
       東北以北の寒冷地では,ひび割れが無いときと比べて, ひび割れに水が入れば,凍害の進行速度が加速され, コンクリートがボロボロになり崩れてきます.
       ひび割れが入るとひび割れ面が空気に容易に触れるようになり, このひび割れ面に沿って中性化が進行し, セメントの水和生成物である水酸化カルシュウムが分解され, 炭酸カルシュウム(セメントの原料の石灰石の主成分)と水になり, コンクリートの強度が低下します.
       ひび割れ面から酸性雨が入っていけば, 酸がコンクリート中のカルシュウムを溶かすので,白い溶液となってしみでてきて, コンクリートの表面を汚したり「白いつらら」になったりします. カルシュウムが溶け出した部分は空隙になるので,溶け出しが進行すれば, 外壁のコンクリートなどでは落下することもあります.
       上記の現象は,身近なコンクリート構造物を注意して見ていれば, 比較的容易に観察できます.
       無筋コンクリート,鉄筋コンクリートにかかわらず, ひび割れはコンクリートの劣化を著しく加速します.(に)
     
  40. 補強盛土工で盛土材の土質試験を実施したところ, 当初の基準値であった内部摩擦角 30 度を満足しませんでした. よって,安定処理を行いたいと思います. 一般に固化材で利用されている石灰やセメントを土に混ぜると, せん断強さの内部摩擦角はどのような傾向を示すのでしょうか? 硬化反応により粘着力は期待できるようです. また,内部摩擦角のみを目標強度に設定する配合設計(三軸圧縮)は, 妥当なのでしょうか?(その他:40歳代)目次に戻る
       一般に,石灰,セメント安定処理を行っても, 内部摩擦角が改善されることは期待できず, 粘着力のみが増大することが報告されています.
       従いまして,内部摩擦角のみを目標強度に設定する配合設計は, できないと考えた方が妥当です.
       現場の土はたぶん砂質土なのでしょうが,通常の土ならば, 補強盛土の施工時に締め固めを同時に入念にする程度で対処可能と思われます. 不安ならば,安心材料として,石灰,セメントを用いた表層処理をしながら施工しても 構わないと思われます.一方,粘性土であるならば,安定処理を施して, ファイゼロ法でせん断強度を考えるのも一方法でしょう.
       あるいは,補強土の配置などで対策をとることも考えられます.
       当方,安定処理の専門家ではありませんので, 参考意見とおとりください.とにかく現場の人の感覚で工夫し, マニュアルにないことでも悪い方へ逸脱しなければ, やってよいのではと思います.(か)
     
  41. 治山ダムを計画しているのですが,基礎地盤が悪く杭基礎となります. ダム底部でパイピングが発生しないかどうか検討するのですが, 導水勾配の考え方を教えてください.お願いします.(その他:40歳代)目次に戻る
       基本的な一般論としてお答えいたします.
       通常は,ダム上流側と下流側の水位差や幾何学的形状, 透水係数を与えて,流線網を描き問題となる部分の局所的な導水勾配を 算定できると思われます. 実務的には,パイピング安全率として限界透水勾配の 5 から 12 倍程度を 見込むことが多いようです.(か)
     
  42. 軟弱な地盤(粘性土)に杭を打設します. 杭の周りには,圧密荷重がかかりません.杭の支持地盤は岩盤です. 水は海水面です.このような状態で,負の摩擦力は生じるのでしょうか? (その他:20歳代)目次に戻る
       粘性土の支持力が期待できないため,杭を打って, 先端支持杭として使追うとしているものと思いますが, 粘性土に圧密荷重が作用しない場合でも,その粘性土の圧密が現在進行中ならば, 負の摩擦力は生じると考えられます. ネガティブフリクションを減じるような工法もありますし, 圧密沈下の程度によっては対策も不要かも知れません.
       以上は一般的な回答にしかなっておりませんが, 詳しくは専門の施工会社の方にご相談下さい.(か)
     
  43. 田んぼに適した土と畑に適した土について教えてください.(小学生)目次に戻る
       まず,質問は農業に適した土のことなので, 本当は大学の中では農学部の「土壌学」を専門とする先生に聞いた方が適切です. ここは,工学部の土木工学と言って土の強さとかを主に研究しているところです. ですから,詳しいことは,自分で図書館などに行ってしらべましょうね.
       しかし, せっかく質問してくれたので,知っていることを説明します.普通, 植物に適した土は,植物の種類によって違いますが, 主に地表から 15 cm くらいの深さまでの土壌と呼ばれる部分が関係します. 植物は,養分を水に溶けたイオンのかたちで吸収するので, 保水性に富む土が植物に適した土です.また,軟らかい土の方が根がはりやすいため, 適していると言えます.このような軟らかくて保水性に富む土は, 多くの場合有機物を沢山含んでいる土でもあります.
       さて, 質問の核心部分の田んぼの土と畑の土ということですが,田んぼは水を ためなければならないので,水はけが適度に悪くなければなりません.よく田植 えをする前に代カキをしますが,代カキは,土をどろどろにして田植えをしやす くしたり雑草の発生を防ぐと同時に,上部に細かな粒子の土が堆積するため透水 性が悪くなって保水性を保つ役割があります.一方,畑で作る作物にとっては, あまり水が多いと根腐れしてしまうので,畑の土は適度に水はけが良くて,保水 性が良くなくてはなりません.
       自分で, 田んぼの土と畑の土をとってきて調べてみるのもよいでしょう.(か)
     
  44. 課題である農道のCBR値を算定しなければならないのですが, その農道が 850 m もあり,何カ所から試料を採取してよいのかわかりません. 参考資料には,3ヶ所以上と書かれているのですが, 具体的なことが知りたいのです.(たとえば,100 m に1ヶ所とか・・・) 宜しくお願いします.(専門学校生)目次に戻る
       上記の件,私には道路工事での調査経験がないため, 直接お役に立つような回答はできませんが, 一般的な地盤調査の経験から回答いたします.
       「参考資料には,3ヶ所以上」とありますが, どんなに長い道路でも短い道路でも, 「3ヶ所以上」という形で採取場所の数を指定するのは不自然に思います. CBR 試験は一試料につき,3 回行うのが一般的です (地盤工学会:土質試験の方法と解説). この 3 回の試験は試験によるバラツキをなくすために行うものです. 現場でいくつの点から試料を採取すればよいかという問題は, その現場の地盤条件,道路の条件,経済的条件によって, 異なってくるのが一般的です.ご質問のケースで,1) 地盤条件が 850 m の範囲で 大きく変わらない,2) 3ヶ所で試料採取, という条件であれば,850 m の区間を三等分した約 280 m おきに一ヶ所づつ 試料を採取してもよいのではないでしょうか? もちろん,条件が許せば,試料採取箇所の数は多いに越したことはありません.(う)
     
  45. 室内 CBR 試験の数値をN値に換算する方法 または室内 CBR 試験値からK30値に換算する方法は どのようにすればよいか?(その他:30歳代)目次に戻る
    1. CBR とN値の関係
       これについては,申し訳ありませんが,情報を持っておりません. ただし,以下に示すK30およびEとの関係から強引にN値との関係を 導くことはできますが,実務的ではないでしょう.

    2. CBR とK30の関係
       「道路工学」(福田正・松野三朗,朝倉書店)によると, 変形係数Ekgf/cm^2)と CBR の関係は,

    eq

    とあります.また,K30Eには以下の関係があります.

    eq

    ここで,15とは直径 30 cm の載荷板の半径です.仮に式(1)での係数を 75 とすると,CBR とK30の関係式として以下の式が得られます.

    eq

    また,上記の文献には経験式として,以下の関係も紹介さています.

    eq


    eq

    ただし,式(3)と式(5)の違いをみてもわかるように, かなり大雑把な推定に用いる式であり,概略設計用だと思われます. 以上,私に CBR を用いた路床設計の経験がなく, 教科書の引用となってしまいますが,参考になれば幸いです.(う)
     
  46. ピサの斜塔で良く聞く圧密沈下のメカニズムを教えてください.(高校生・高専生徒)目次に戻る
       圧密は日本でもよくある問題です. 例えば,海に埋立地を造るときにも,圧密沈下の問題は必ずでてきます. 圧密でのキーワードは, 土の圧縮性(体積のちぢみやすさ)と透水性(土の中の水の流れやすさ)です. 土は力を受けると,圧縮しようとしますが, 圧縮するためには土粒子の間の間隙(すきま)の水が抜けないといけません. ところが,土の中の水はすぐに抜けてくれるわけではありません.そのために, 水がゆっくり抜けるにつれて,沈下がゆっくり発生します.これが圧密です. ですから,圧縮性の高い(ちぢみやすい),透水性の低い(水が抜けにくい)土, 例えば,柔らかい粘土などで圧密が問題となります. 大学生向けの土質工学の教科書には,その理論と実例などが載っていますが, わかりやすいものとして,以下が参考になるのではないかと思います.(う)
    「土のはなし」 1〜3 土質工学会 /技報堂出版
     
  47. 交通計画の基本かもしれませんが,12 時間交通容量の算出式を教えてください. 時間あたり交通容量を単純に 12 倍すればよかったのかな?(その他:30歳代)目次に戻る
       12 時間交通容量は記載されていない交通計画関連の図書も多く, 必ずしも「交通計画の基本」ではないと考えますが・・・
       12 時間交通容量の算出式は,

    eq

    であり,時間当たり交通容量を単純に12倍して求めるものではありません. 上式で

    eq



    です.
       Dは必ず 50 を超え, 55〜60 程度の値,K’はあまり一般的な指標じゃないので, 標準的な値が手元に見あたりませんが,10〜20 程度となることを考慮すると, 設計交通容量の 5〜10 倍といった値となるものと思われます. 分子の「5,000」ですが,分母のK’のパーセンテージ値を比率に修正することと, D値と 50(上り下りの交通量が同じ場合の重方向率)との比率をとるもので,

    eq

    と表記するほうが意味を解釈しやすいと思います.
       この「12時間交通容量」ですが, 交通計画(車線数の決定)に用いるというよりも, A12 を 12時間(実)交通量の乗用車換算台数(台/12時間)としたとき,

    eq

    により,混雑度を算定する際に用いられる場合がほとんどと思われます.(た)
     
  48. I 断面の場合,捻じるとそり捻じるが生じると聞きます. また,そり捻じりが生じる場合,そり応力なるものが発生し, これが曲げ応力σに付加されるというのですが, 簡単にこの現象を説明してもらえませんか? なお,純捻じり(中空円筒を捻じった場合)ではせん断応力しか生じないと 思っていますが・・・.(その他:30歳代) 目次に戻る
       I 形断面が説明しやすいので,それを使いましょう. 例えば軸力・曲げモーメントの場合の直応力分布を,4 隅の値の正負で書くと
       +1 ===== +1      +1 ===== +1      +1 ===== -1
            |                |                |
            |                |                |
            |                |                |
       +1 ===== +1      -1 ===== -1      +1 ===== -1
       軸力    水平軸まわりの   ウェブ面まわりの
             曲げモーメント   曲げモーメント
    
    となります. 上図で +1 とあるのがσが正の例えば 1 MPa で,-1 とあるのがσが負の -1 MPa と 考えてください.間は線形分布です.では,この 3 つ以外の分布の
                    A   B
                 +1 ===== -1 
                      |
                      |
                      |
                 -1 ===== +1
                    C   D
    
    というのはどういう断面力になるでしょう? この分布は軸力は発生させません. もちろん二つの軸回りの曲げモーメントもゼロになりますね. これが「そりねじりモーメント」と呼ばれる,ねじり抵抗になる直応力分布です. ちょっと,いや,かなり奇怪ですね.
       では「そり変位」とは何でしょう. 例えば四角い紙をそぉーっと両手で丸めて筒状にしてください.筒にしたとき, 端っこの円状になっている縁に紙の角がくるようにしてください. そしてねじってみると,その縁にあった二つの角が筒の長手方向に, それぞれ逆方向にずれます.この「ずれ」が「そり」変位です.
       例えば上の図の I 形断面棒をねじった時, 対角位置にある A と D が例えばこの図で「手前」に 1 mm だけ変位し, 逆に B と C とが「奥」に 1 mm だけ変位します.つまり, もともとは同じ平面(断面)内にあった上下フランジの隅の点 A, B, C, D が, ひとつの平面内には存在できなくなっています. 「手前」と「奥」をそれぞれ +, - にすれば, 上の図の +1, -1 は,手前か奥かを示していることになります.
       ということで, 「そりねじりモーメント」と「そり」は同じ分布をしています. 大雑把に言うと,例えばダイアフラムを設置してある断面を拘束すると, ねじった時にその断面は「そり」変位ができなくなりますから, その反力として「そりねじりモーメント」が生じ, つまりは,ねじったことによって直応力が発生します. 直応力ですから,もしその棒が曲げも受けていたとすると, その曲げ応力にさらにねじったことによって発生する直応力が 足されないといけなくなるわけです. 逆に「そりねじりモーメント」を作用させない (実験室でこれを作用させるのは難しいですが)と, その断面は「そる」ことになります.
       円断面では「そり」は発生しませんから, いわゆる Saint-Venant のねじりだけを考えればいいので, せん断応力だけのねじり抵抗しかありません. しかし,断面が楕円になっただけで「そり」が発生します. これは古典の弾性論(例えば Timoshenko)の本を眺めるとわかります.
       なお,構造工学で用いられる薄肉構造の場合には, この古典論を直接用いないで近似できます. それについては参考書をご覧ください.(く)
    参考書:
    西野文雄・長谷川彰夫:構造物の弾性解析,新体系土木工学7,技報堂出版,1983.
    私の講義ノート7 章
     
  49. 影響半径の定義を教えて下さい. 又,ある一定量の地下水を井戸より汲み上げたとき, どの範囲までの地下水を汲み上げた可能性があるか, それを求める式はありますか(この時の範囲と影響半径は同一のものでしょうか)? (その他:20歳代)目次に戻る
       「影響圏半径」とも言ったりします. 井戸から水をくみ上げた際,井戸の周辺の地下水水位は下がることになりますが, その水位低下量が無視できるほど(どの程度が無視できるかは 工事の条件によって異なるでしょう)小さくなるところまでの範囲が影響圏です. もし,井戸を中心として,同心円状に水位が下がるのであれば,井戸の中心から, 水位低下量が十分小さくなるところまでの距離が影響半径ということになります. 影響圏は,地盤の条件,井戸からくみ上げる水の量や時間などに影響します. 影響圏半径を求める式には,それらの条件を取り入れたものが たくさん提案されています.例えば, 地盤工学会の現場技術者のための土と基礎シリーズ「根切り工事と地下水」の p.101,p.294 にいくつか紹介されていますので,参考にしてください. ただし,正確に影響半径を予測するのは難しいので, いくつかの予測式の結果を比べたりして, 設計上は安全側の評価となるように配慮したほうがよいと思います.(う)
     
  50. 平面上において,通常の地面に比べコンクリート基礎の上に積もった雪が 早く溶けるのはなぜでしょうか? 地熱や密度の影響があるとすれば,どのような違いがあるのか教えて下さい. (その他:40歳代)目次に戻る
       結論からいうと必ずしもコンクリート上が早く融けることはありません.
       これは雪が接している比熱の差と, 地表面とコンクリート面の熱収支の差から決まります. 比熱が大きいと長時間熱を保つことが出来ます. 一度上昇した温度は長く維持され,この上に降った雪は早く融けます. 熱収支では,表面の黒さも関係します. 黒いと日射量の吸収が良くなるので,温度の上昇が大きくなります. 一般には地面の方がコンクリートより黒く,熱の吸収量は大きいです.
       また, 地面は地下方向に無限大に熱源をもっていると考えられているので, 気温が低い場合には,地面の方が早く融けます. コンクリートは零下を維持するかもしれませんが,地面は地下から熱を受けます.
       高地の積雪域では,気温が零下10度でも積雪底部, 地表面で融雪が生じることがあります.
       つまり,どっちが早く融けるかは,比べる地面の状況, 気象状況によって決まります.(か)
    参考:近藤純正 身近な気象の科学 東京大学出版会
    
     
  51. 通常の砂防河川の桁下高さは,河川構造令によって決まる 高さにさらに 0.5 m の余裕をみて決めるものですが, この 0.5 m とはどういう意味の余裕なのでしょうか? また,本川からの背水位の方が高い時も,この 0.5 m を考慮するのでしょうか? (その他:20歳代)目次に戻る
       河川の水位計算には必ず誤差が含まれます. 一つには粗度や断面形状などが完璧に計算の中に反映できないこと, もう一つには,1 次元計算をしているので, 横断方向に水位差が生ずる事を考慮していないこと (河川が曲がっている場合や偏流している場合には必ずこれが存在します) などが原因です. それで堤防高や桁下には必ず余裕高を考慮します. 橋桁下の場合にはさらに流れてくる流木などがひっかからないようにする意味も 重要です.
       本川からの背水がある場合には背水位を計算し, さらに余裕高を加えます.(さ)
     
  52. 軟弱な地盤上の防波堤堤頭部の法線方向の円形すべり安定検討について, 地盤の側面摩擦抵抗を考慮してもよい(「港湾の施設の技術上の基準・同開設」 下巻 p.604 日本港湾協会発行)とありますが, 側面摩擦抵抗の計算方法を教えてください. または参考文献名等ありましたら教えてください.(その他:50歳代)目次に戻る
       一般的に,お答えします.
       法線方向の安定を検討する場合には, 当然 3 次元的な幾何学形状を考慮してすべり面を決定し, その安定計算が必要となると思われます.一般に,奥行き方向を考えれば, ご質問の側面摩擦抵抗(3 次元的な効果)を考慮することになるので, 摩擦抵抗は大きく算定されるため,2 次元(法線直角方向)より安全率は 大きく算定されるはずです.ですから,多くの場合は, 2 次元の計算で安全率をクリアーしていれば,問題はないと思われます.
       問題になるのは, 防波堤の堤頂部に波浪などの付加的な荷重を想定する場合と考えられます. その際には,3 次元的な滑り形状を仮定して, その分の側面摩擦抵抗を 2 次元の場合と同様に考えればよろしいかと思います.
       残念ながら, この件に関して専門的に研究しているわけではありませんので, 参考文献などは存じ上げません.詳しいことは,港湾協会もしくは, 国土交通省の港湾空港技術研究所の担当の技術者に問い合わせて下さい.(か)
     
  53. 現在道路である軟弱地盤などにボックスカルバートやマンホールを 設置した場合において, 圧密沈下を検討する際に活荷重はどのように作用すると考えたらいいのでしょうか? 圧密の発生機構から考えると活荷重は無視してもいいのでしょうか? 各専門書でも地盤支持力の計算例はあるのですが圧密沈下の場合, 盛土の荷重の計算例ぐらいしかありません.(その他:30歳代)目次に戻る
       私, 道路工事の実務に精通していないため検討条件がよく理解できませんので, 勘違いがあればご指摘ください.
       道路にマンホールなどを設置した場合に 圧密沈下の検討をする必要があるのかどうかがよくわかりません. 通常,地中構造物はみかけの重量が土よりも軽くなるため, 構造物の下の軟弱層の土被り圧が増加することはないのではないでしょうか? 構造物の回りの埋戻し土(普通は砂質土)の沈下が問題になることは よくあると思うのですが,原地盤の変形も問題になるのでしょうか?
       この話は置いておいて,活荷重下での圧密問題についてですが, おっしゃるように圧密の発生機構から単純に考えますと, その影響は小さいように思います.その理由は,
    • 活荷重による増加荷重は路盤や路床内で発生して, さらに深い土層への影響は少なく, 道路の下の軟弱層で大きな過剰間隙水圧は発生しない.
    • 荷重がさほど大きくないとすると地盤は弾性的な挙動をします. 過剰間隙水圧が発生しても,荷重がすぐになくなるので,過剰間隙水圧もなくなる.
    などです.(う)
     
  54. 現場密度の測定方法には,JISA1214による砂置換法がありますが, 最大粒径が53 mm以下に適用されています.53 mmを越える場合の試験方法は なにかあるのでしょうか. ちなみに土質は礫質土で河床堆積物を道路の路体に使用します.目次に戻る
       現場の状況に詳しくありませんが, 先日見た現場の例でお答えすると,以下のようでしょうか.
       基本的に, 砂置換法でも水置換法でもよいと思います.粒径が少し大きくなったのであれば, 試験のサイズを大きくすればよいだけと思われます.土質はレキだけでは無いので, 水置換法の方が一般的かもしれません.
       最近, 地盤工学会のシンポジウムで「レキ質土の力学特性に関するシンポジウム」 (平成13年11月)がありまして,関連資料もあろうかと思います. 詳しいことが必要であれば,学会に問い合わせれば,入手できます.(か)
     
  55. 港湾施設の岸壁の構造で控え矢板式なるものがありますが, フリーアースサポート法,ロウの方法などがありますが, ロウの方法の解析方法を具体的に教えて下さい.(その他:20歳代)目次に戻る
       矢板壁は,水圧や土圧に対して, 壁体の曲げ剛性とアンカーおよび根入れ部の土とで抵抗する構造です. したがって,矢板の剛性をどのように選択するか? 矢板の根入れ長はどのくらい必要かが,設計の目標となります.この場合, 地盤からの反力をどのように考えるか? あるいは矢板の境界条件をどのように設定するかで, 矢板に発生すると予測される曲げモーメントが異なってきます.
       これら方法には,
    • Free earth support method
    • Fixed earth support method
    • Equivalent beam method
    • P.W. Row's method
    等があります.
       これらを詳しく述べることは到底無理なので, 参考文献を示します. たぶん山海堂だと思いましたが,横山幸満先生(元宇都宮大学教授)の 「杭構造物の計算法と計算例」とかに詳しく書いてあったように思います. また,原著でよければ,
         P.W.Row : The Single Pile Subjected to Horizontal Force,
         Geotechnique, Vol.6, No.2,70-85, 1956
    
    からたどって下さい.(か)
     
  56. 液状化強度と土の物理特性との関係はどのような関係を示すのか興味があります. 一般的なことを教えて下さい.何か参考となる本があれば,教えて下さい.
    1. 一般的に細粒分含有率が高くなると液状化がしにくいといわれていますが, 細粒分含有率と液状化強度との関係はどのようになるのでしょうか?
    2. 均等係数と液状化強度の関係はどのようになるのでしょうか?
    宜しくお願いします.(その他:20歳代)目次に戻る
    1. 細粒分含有率
       示方書などで細粒分含有率が多いと,N値を割りまして, 液状化強度を算定していますが, これをそのまま,細粒分含有率:大,液状化強度:大と考えるのは,危険です. 室内試験結果によると,液状化強度は,細粒分含有率よりも, その中に含まれる粘土分含有率に応じて,大きくなる傾向があります. 細粒分に含まれるシルトでも低塑性であれば,その含有量は液状化強度に影響しません. つまり,シルトでもさらさらであれば,砂と同じで液状化するということです. 示方書における細粒分含有率は,これまでの経緯などもふまえて, シルト,粘土分を含んだ,おおざっぱな指標として考えているのではと思います. 実際に液状化判定をする際には,最近の示方書にも書かれているように, 塑性指数や粘土分含有率にも留意した方がよいと思います.

    2. 均等係数
       教科書には,均等係数の影響が載っていますが, データは多くなく,よく分かっていないと思います. 従来は,均等係数が小さい(粒がそろっている)方が液状化しやすいといわれ, 液状化の対象となる粒度分布なるものもありましたが, 阪神大震災で均等係数が大きい「まさ土」が激しく液状化したため, 大きな地震動を考える場合には,粒度の影響はあまり気にしないようになっています. ただし,液状化途中やその後の変形の仕方は,粒度の影響を受けます.

    吉見吉昭:砂地盤の液状化,技報堂
    安田進:液状化の調査から対策工まで,鹿島出版会

    などに記述があると思います.これらは教科書ですが,さらに最近の成果について, 興味があれば,最近の文献(地盤工学研究発表会など)を参考にしてください.(う)

     
  57. K 値は年平均日交通量に対する 30 番目時間交通量の割合であり, 通常 10% の値をとる.という文面の意味がわかりません. これについて,教えて下さい.(その他:40歳代)目次に戻る
       「割合」ということで, 年平均日交通量の中に占める割合のように受け取って混乱しているのかもしれません. 「比(率)」とお考えください. 単純に,
          30番目時間交通量
      K 値=---------------------×100 (%)
           年平均日交通量
    
    ということです.
        30 番目時間交通量というのは, 1 年間にわたる各 1 時間毎の交通量を 24 時間×365 日(= 8760)だけ計測して, それを大きい順に並べたときの 30 番目の値を指します. つまり,その 1 年間でこの交通量を超えた時間を合計すると 30 時間となる値です.
       一方,年平均日交通量は,上記の交通量の 1 日あたりの平均値です. (つまり,8760 個のデータの平均値×24 時間として計算できます.) 文面の意味としては以上の説明でご理解いただけるかと思います.
       さて,なぜこのような値の決め方をしているかですが, 交通工学の中では 1 日の交通量に対する各 1 時間毎の割合 (この場合は中に占める割合で合計 100% となります)を 「時間係数」とする考え方があり, これを踏襲した決め方となっているのではないかと考えます.
       あるいは, 大店法におけるピーク率(店舗の 1 日の合計の客数に対する 混雑ピーク 1 時間の客の人数の割合, 駐車場の算出においては 15.7% が用いられている)なども同じような考え方です. 時間係数の値としては昼間の混雑時において 5〜7% 程度の値となっていますので, 年間のピークに近い交通量である K 値としては 10% とかの値に なるのではということです. (渋滞が発生すると逆に交通量は低下してしまいますので, それほど大きな値とはなりえません.)
       このような考え方の基本となっているのは, 予測などにおいては日単位で考えられることが多いことから, 駐車場や交通容量といった時間単位での値が必要となるときに, 日平均値から容易に算出できるようにということだと考えられます.(た)
     
  58. 特殊な土壌の地盤沈下に悩んでいます. 泥炭層が地下にある為通常の沈下処置ではなかなか沈下が止まらないようです. 何か良い方法がありました御指導下さい.(その他:40歳代)目次に戻る
       個別の状況が不明ですので,何とも応えられませんが, 緊急に沈下をとめたいのであれば, 沈下の原因となっている要素を取り除く必要があるでしょう.盛り土をとるとか, 地下水位をもどすとか,あるいは,沈下に伴う体積圧縮ではなく, 土の破壊による変形とも考えられるのであれば, 破壊の進行を抑える対策が必要です.
       ご質問のように特に含水比の高い泥炭層が原因とするならば, 泥炭の沈下対策に特に有効な方法があれば,適用することになりますが,残念ながら, 対策の詳細は不明ですので地盤調査コンサルタントさんにお聞き下さい. 泥炭の基本的力学的性状を知りたいのであれば,以下の本などを参考にして下さい.(か)
    「泥炭地の地学」阪口豊薯 東京大学出版
    「泥炭の力学特性???(曖昧です)」木暮敬二(防衛大学教授)
    「泥炭性軟弱地盤対策マニュアル」(社)北海道開発技術センター
     
  59. オイラー座標とラグランジュ座標は実現象では, どのように扱われているのか分かりません. 実例を教えてもらえないでしょうか?(専門学校生)目次に戻る
       例えば,長い水路の水槽をガラスばりで作った装置があるとします. 左から右に水が流れてきます.これを側面から観測するときには, 僕らはたいてい,水槽に碁盤の目を入れて, その交点での流速や密度やらを測定しますよね.つまり, 連続体(水)は左から右に流れていって,水のひとつひとつの分子は動いているのに, 観測は,水槽のある一点で, そこを「通過するすべての分子」の平均的な挙動を見ようとします. これがオイラー座標的な観測です.つまり,水分子は追跡しないのです.そのため, 慣性力を評価したいときの加速度の表現に移流項のような厄介なものがつきます.
       水理学で流線と流跡線を習うと思いますが, 前者がオイラー的なものです. 後者は,水分子を追跡したとき(水中に何か観察ターゲットを混ぜて それをカメラで追跡したとき)に, ひとつの水分子(ターゲット)がたどる軌跡を指します. これはラグランジュ的です.
       では,じゃがいも(固体)をつぶすことを考えます.このとき, 中身は見えないから,皮に碁盤の目を描きます.これをまな板の上で, そぉーっとつぶそうとすると,ある程度は変形しますよね. このとき,僕らはたいてい,物体に記した目印(碁盤の目)を追跡します. つまり,空間に設定したある一点を眺めるのではなく, 変形する連続体(じゃがいも)に所属している物体点を追跡しますよね. これがラグランジュ的です.例えば,じゃがいもを投げることを 考えると,オイラー的にある一点で観測していると,じゃがいもが その目の前を通過するまではじゃがいもの観測はできないのです. しかし,通過している間はじゃがいもの挙動は測定できますが, それは時時刻刻,皮の上の違う点の挙動をみてしまいます.これでは, そのジャガイモがどのくらいひずんだかはわからないですよね. だから,ジャガイモの皮に直接ひずみゲージを貼って投げると, そのゲージを貼った点でのひずみが時時刻刻わかります.これは, 皮のある一点を物体と動きながら観測しています. これがラグランジュ的な表現になります.(く)
     
  60. CBR 何々%とはどういうことでしょうか. 例えば,地耐力何々 t/m^2 という事であれば僕の頭でもすんなり理解できるのですが. 是非解りやすく教えて下さい.(その他:50歳代)目次に戻る
       ある標準の地耐力があり, この標準地耐力に対する百分率で表示するのが CBR です. この標準地耐力は砕石に対する貫入試験から得られるもので, 例えば,貫入深さ2.5 mm に対して,6.9 MN/m^2 です.ですから, 対象地盤の CBR が 10%だとすると,貫入深さ 2.5 mm に対する地耐力は 0.69 MN/m^2 となります. ちなみに,CBR は 1940 年代にアメリカで発案されたもので, いろんな地方の道路路床の地耐力を比較しやすいように百分率が用いられたようです.
       詳しくは,河上房義:土質力学,森北出版や, 地盤工学会:土質試験の方法と解説などを参照下さい.(う)
     
  61. 近くに大きな店ができるようで説明会がありました. 店ができるのは歓迎なのですが, 渋滞が起きたり子供達の通学に危険になるのが心配です. その説明に,交差点飽和度という言葉が出てきました.簡単には, 交差点で信号待ちが起きて渋滞するかしないかという判断に 使われるということですが,詳しいことを聞いてもほとんど応えがありません. 計算式も計算の要素になる値も示されず, コンピューターでやっているからという答.不誠実ですよね. 計算方法等ご存知でしたら教えていただけないでしょうか.(主婦:40歳代)目次に戻る
       交差点飽和度は以下により計算します.
       まず,各信号現示 j に対して, それぞれの流入部 i における飽和交通流率 S_i および, その設計交通量を q_i より次式により正規化交通量を算定します.

    eq

    ある現示 j に対する上式の正規化交通量の最大値を現示の飽和度と呼びます.

    eq

    この現示の飽和度の合計値が交差点の飽和度となります.つまり

    eq

    です.
       信号の現示とは, 「信号の表示によって同時に通行権を与える, ある交通流あるいは交通流の組み合わせ」(交通工学用語辞典)のことで,簡単には, 「信号機の表示する状態(ただし, いずれかの方向に進行が可能な状態で全赤時間は除かれる)」と考えてください. 飽和交通流率とは,その信号のパターンが1時間継続したとして, さばかれる最大の交通量です.
       簡単のために, 1 車線の 1 方向通行の道路が 2 本交わる交差点を考えます.
       この場合,信号の表示(現示)としては, どちらか一方が青で他方が赤を表示させますので,その逆の場合とで, 現示の数は「2」となります. 延々,片方の道路だけ青の表示が1時間継続したとすると, たぶん最大で 2000 台程度の車がさばかれることになるでしょう. (以下の計算では,2000 台とします.) このような交差点で,片方の道路の交通需要(計画交通量)がたとえば 800 台, もう一方の道路の交通需要が 1000 台とすると,正規化交通量の値は, それぞれ 0.4 および 0.5 となり,交差点の飽和度は 0.9 となります.
       実際には, 片側 2 車線の道路が交差し,右折専用レーンなどもつくことになると, 信号の現示としては 4 現示(それぞれの直進の青と, 右折のみ可能な青矢印の時間)などとなり,ある現示に対して, 「直進および左折」「直進のみ」「右折専用」の 3 つの車線が 両方向から流入することになりますので, その現示に対して,6 つの流入部を考えないとなりません. 飽和交通流率がそれぞれの車線で異なり,方向別・車線別の交通需要もそれぞれ 異なるでしょうから,正規化交通量として,その現示に対して,6 つの値が得られ, その中の最大の値がその現示の飽和度となります. (これを現示の数だけ繰り返します.右折現示については, それぞれ方向別の右折についての 2 つの流入が対象となります.)
       この飽和度は, その現示に割り振られるべき,最小の青時間の比率と 考えることができます.上の例でいうと,飽和度 0.4 の方向については, 最小でも 1 時間あたり 24 分間,0.5 の方向には 30 分間の青時間を 割り振る必要があります. 交差点飽和度が 1 を超えると,必要な青時間を割り振ることができなくなり, 青時間が不足する流入部で渋滞が発生することになります.
       実際には,全赤時間が設けられたり, 信号が切り替わる際のいろいろな「損失」などがありますので, 飽和度は最大でも 0.8〜0.9 程度以下とすることが必要となります. (実際には青時間が不足する(正規化交通量の大きい)流入部について, 車線数を増やすことなどで,交差点飽和度が 0.8〜0.9 以下となるように設計し, 交差点改良などが実施されることになります.)
       計算の条件としては,
    • 交差点設計(車線数など)
    • 信号現示
    • 飽和交通流率を設定するために必要となる値
    • 方向別の交通需要(大規模小売店の場合は方向別の来店者数などが 基礎となります.この値を,従来の交通量に上乗せするのが一般的かと思います)
    などが必要となります.(た)
      【参考文献】「平面交差の計画と設計−基礎編−」(社)交通工学研究会,pp.61-63
    
     
  62. 大河川と小河川の違いを教えて下さい.(その他:20歳代)目次に戻る
    ふたつほど回答がありました.

       私の知る範囲で明確な境目というのはありません. 一般に大河川とは大陸系の数十万 km^2 の規模を持つ河川をイメージしているようです.
       日本では流域の重要性から国土交通大臣が指定した 1 級河川,それに準じる 2 級河川,それ以外の普通河川に区別されます. 河川法の中には大河川という文言は出てきませんが, 河川法の解釈本などには出てきます. 河川法は日本国内を対象にしている本なので, その意味するところは 1 級河川の中でも大きいもののようです.ひどく曖昧ですが.
       小河川は河川と区別されない水路のことだと私は想像しています. つまり,堀や灌漑水路(用水路)です.これらは水路であって川ではありません. 比較水文学の世界では,川を比較するには,普通,流域面積・流量・比流量を用います. しかし,どこまでが大河川でどこまでが小河川というのはみたことありません.
       どうしても気になるようなら, 国土交通省河川局のサイトを利用してみてください.(か)

    そして

       定義の上では一級河川・二級河川という分け方があります. 大河川は一級河川:国土交通大臣が管理します. もっとも大臣管轄区間は下流の重要部分だけで上流部は通常知事管理となります. 二級河川はそれより小さな河川で知事管理です. さらにちいさな雨水の排水路として管理されている ものはたとえば仙台市の下水道課(部?)が管理します.
       複数の都道府県にまたがるものは一級河川, 一つの県内にあるけれども重要な物はやはり一級河川に指定されます. 後者の例では神奈川県内の鶴見川や宮城県内の名取川があります. この河川の級の指定は社会資本整備審議会の河川部会(旧河川審議会)の議論を経て 国土交通大臣が行います.
       大河川・小河川の特徴面の違いとしては, 小河川では降雨が終わると数時間で出水が終わるのに対し, 大河川では数十日,あるいは年周期程度で水位が変化します.
       利根川・信濃川・石狩川・北上川などは 日本では文句なしの大河川ですが,大陸の河川に較べれば, 非常に小さい河川と言えるでしょうから,大河川・小河川といっても, どういう範囲で議論しているかによって様々です.(さ)

     
  63. コンクリートダムの基礎岩盤の安定性に対して, 有限要素法により解析を行おうと思うのですが, 岩盤を連続体として扱う同手法のみでは片手落ちのような気がします. 理由として質問題目に示したように岩盤は引張抵抗力をわずかに保有しているに過ぎず, 解析ケースによっては許容引張力を超過する場合も考えられ, そのような場合連続体として解いたものでは問題があるのではと思ったからです. 岩盤を不連続体としてとして扱うことのできる解析手法及び その中で現在最も広く使われている手法を教えてください. (その他:20歳代)目次に戻る
       引っ張り抵抗をゼロと見なすために, 原子力発電所サイトの解析などでは「no-tension 解析」などが行われているようです. これは連続体解析ですが,降伏基準に引っ張り抵抗を見込まずにおいて, 発生した引っ張り応力を周囲に再配分する完全弾塑性解析を行うものです.
       不連続体であるから 「数値解析でも不連続体として扱おう」という解析法も多く提案されています. 現在では UDEC(ユーデック)という市販の解析コードを大手ゼネコンは備えています. ただし,必ずしも使用頻度は高くないようですが・・・. これはミネソタ大学を中心に開発されたコードで, 基本的には Cundoll(カンドール)という人が考えた 離散ブロックの集合体として解析する方法をベースにしていて, 粒状体の解析に用いられている DEM の岩盤バージョンとも言うべきモデルです.
       分布する不連続面を取り扱おうとする試みは 数多く提案されています. 連続体に不連続性岩盤を扱う方法の研究は現在の最前線の一つであり, これで良いという決め手はありません. いくつかの方法を併用して岩盤の安定性を評価しているのが現状でしょう.
       岩盤の数値解析モデルについての概観は 以下の参考文献をご覧下さい.(き)
    • 日本材料学会編:岩の力学,第 11 章不連続性岩盤,pp.445-490,丸善,1993
    • 地盤工学会:地盤工学ハンドブック,第 2 編 5 章 4 節,pp.253-267,1999

       構成モデルに,tension-cut-off というオプションがついたもので 汎用コードにも用いられているものがあったかもしれませんね. その名の通り,引っ張り状態になると剛性が無くなるような有限要素?(く)

     
  64. 私が交通量調査を行ったのですが,そのなかで混雑度を出そうと思っています. その中でまず,基本交通容量ですがこれは, 片側一車線の場合は 2500 pcu/h の値を使うと考えてよろしいのでしょうか? 次に可能交通容量ですが,算出式が「基本交通容量×補正係数」だと思うのですが, この補正係数が色々有りどれをどういった条件でどの補正係数を使えばいいのか わかりません.教えてください.(その他:20歳代)目次に戻る
       基本交通容量ですが,2500 pcu/h を用いるのでよいです. ただし,この値は「2 車線 2 方向」の道路について, 両方向(往復)合計に対して適用する値であることに注意が必要です.
       このベースとなる値についてどの程度の信頼性があるかは 疑問がないこともないです.参考までに, アメリカにおける HCM (Highway Capacity Manual) の値を示すと, 1985 年版では 2800 pcu/h であり, 改訂された 2000 年版では 3200 pcu/h となっています. (1965 年版では 2000 pcu/h で, 補正係数なども異なるので単純に比較することはできませんが.)
       補正係数については, 日本道路協会から出されている「道路の交通容量」を参考にすることとなっていますが, それぞれの補正値には,一定の「幅」で示されるものもあり, 条件のみから値を確定することはできず,ある程度, 恣意的になるものと認識しています. (そもそもベースとなる値の信頼性が低ければ, 補正係数を議論する意義自体に疑問がないではないですが.)
       混雑度の値自体が問題であれば, 補正値の幅の最大・最小をとって 混雑度自体に幅を持たせて示すのでもよいかもしれません.また補正ですが, 車線幅員・側方余裕・沿道状況・縦断勾配・大型車混入について行うのが 一般的かと思います.
       「交通工学, Vol.37, No.6」の「HIGHWAY CAPACITY MANUAL 2000 3. 2車線道路と多車線道路」(講座)が参考となるかもしれません.(た)
     
  65. 港湾近郊の道路排水等で地下水位が高く排水管の呑み口や 吐け口の高さが EL =(負の値)でも排水管を設置して問題ないか他の事例も含め, 意見・文献・論文等があれば教えてください. ちなみに浸透管・ポンプアップ・空港などで使われるポンディングの条件には 当てはまりません.(その他:30歳代)目次に戻る
       当方,表記内容の専門家ではありませんので, とんちんかんなことを申し上げるかも知れませんが,ご容赦ください.
       通常,地下水位は, 季節によって 2〜3 m は変化するのが通例です.また,海の岸壁背後などでは, 残留水位などもあり,設計では,RWL(残留水位)は LWL (Low water level) - HWL (high water level) の 1/3 をとっていることなどは ご承知のことと思います.ご質問の場所は, 地下水位がもちろん海水位レベルより少し高いものと思われ, 季節変動はそれほど顕著でないものと思われます.
       そのような場合,排水管を設置することの意味は, 道路面に流入した水が路床地盤中に長く滞留しないように 早く逃がすためであろうかと思います.しかし, 排水管を敷設する位置が地下水位以下の場合, 回りの地盤が十分透水性を有しているならば,排水管は不要ですし,また, 路床が十分透水性を有している場合も同様と考えられます.したがって, 地下水位以下の排水管が有効に機能する場合は,回りの地盤の排水性がわるく, しかも吐け口の圧力水頭が呑み口の圧力水頭より小さくなければなりません. (例えば,水中に管だけを入れても水が排水されることはありません)
       結局,排水管の呑み口,吐け口の高さが問題ではなく, ヘッド差があるかどうかと思いますがいかがでしょうか? 水が溜まるような条件でなければ,このような排水管は不要であるように思われます.
       現場の条件がよくわからないまま回答していますので, そのまま鵜呑みにしないで下さい.また,これ以上,的確な回答はできませんので, どうぞご参考にとどめておいて下さい.(か)
     
  66. 洪水末期といえば,残留水位が高く,前面の水位が低い状態であり, このとき堤防のすべり破壊が生じやすいといわれています.このため, まず堤体の残留水位= HWL として計算を行うこととしました. 次に前面の水位ですが,これは残留水位との差が最も大きくなるように, (前面水位)=(河床高)と設定しました.極端な条件ですが, これが最も安全側の結果が出るものと考えて計算を行いました.
       ところが,円弧すべりの計算で堤防の安定性を照査する際, 計算上,堤防前面の水位が低いほど(u が小さくなって) すべりに対する抵抗力が大きくなり, 結果として安全率が上がるという結果になります. つまり前面水位が下がって堤体内の残留水位との差が大きくなるにもかかわらず, 安全率が上がるという結果になります.
       洪水末期として最も危険な状態で照査を行いたい場合, 前面水位はどのように設定するのが適当でしょうか.
    \begin{displaymath}
\frac{\mbox{すべりに対する抵抗力}}{\mbox{すべりを起す力}}=
\...
...ht)\tan\phi
+\sum\left(\mbox{Cl}\right)\right\}}{W\sin\theta}
\end{displaymath} (1)
    (その他:30歳代)目次に戻る
       安定計算に使うときの残留水位は, HWL の時の水圧になるわけですから, 前面の水位が低下しても HWL 時の間隙水圧が残っているとして 計算する必要があります.具体的に言えば, 間隙水圧は HWL 時のものを使って,前面水位は低下時のものをつかいます.
       これは,ダムのドローダウン時の安定計算と同様で, 急激に水位が低下したとき,堤体の透水係数が小さい場合に, 前面の水位低下に応じて間隙水圧が消散しきれないために生じます. (これが残留水位に相当します)
       河川堤防の場合には,高水状態が少し長く継続して, その後比較的急激に水位がもとに戻った場合に相当するでしょう.しかし, 上記のような考え方をするならば,堤体構成材料の透水係数などにも依存しますから, どのような場合を想定するかは,現場の条件によるでしょう.(か)
     
  67. 管水路と開水路について詳しく説明してください.(高校生・高専生徒)目次に戻る
       水面のある流れが開水路,水面のない流れが管水路です. これが定義です.
       たとえパイプやトンネルの中の流れでも,満管でなく, 上部に水面があれば開水路になります. 水道管の中は管水路,下水道の中は開水路の流れです.
       管の入口・出口で 周りの大気圧より高い水圧を与えておくと管の中は管水路になります. この場合管路の中はどこでも大気圧より高くなり(サイフォンは例外), たとえ管壁に傷がついても, 周りの消毒されていない地下水を水道管の中に吸い込むことはなく, 管から外部に水が漏れます.
       逆に 下水道管では開水路なので周りの地下水を吸い込むことはあっても, 汚水が地下水に漏れ出ることがないことになります.
       管水路は 流量を管の断面積で割れば流速が一意的に決まりますが, 開水路ではそのようには決まりません. 開水路では水深(すなわち流れの断面積)も変数になるからです. 通常一つの流量に対して二つの水深をとります. 浅い方の水深の(流速の大きい)流れを射流, 大きい方の水深の(流速の小さい)流れを常流とよびます.(さ)
     
  68. 本にいろんな土の透水係数を表した表がありますが, その表に出ている数値は土のどのような状態での数値なのでしょうか? 土が固まった状態で飽和している時のものなのか, それとも比較的柔らかい状態の時の数値なのでしょうか?(その他:50歳代)目次に戻る
       土質試験法の解説書を読むとわかりますが, 通常の透水試験としては,
    室内試験
    変水位透水試験 
    定水位透水試験  以上 主に砂質土
    圧密試験から求まるもの 主に粘性土
    現場透水試験
    現場で行うもの
    があります.書物にでてくるものは,たぶん一般的な室内試験のデータです. 室内試験では,砂質土の場合,締め固めモールドをつかった締め固め供試体に 対して行うことが多いので,締め固まった飽和状態の土を 対象としていることになります. 一方,粘土のそれは圧密試験から求められるものですが, 粘土の圧密に伴って透水性は徐々に小さくなります. この場合にも,ほぼ飽和状態と考えてよいでしょう.
       透水性は,その他,水の粘性や導水勾配によっても変化します. いずれにせよ透水係数を知りたいそもそもの要求にあうような条件での 試験が必要でしょう. 試験法や供試体の作成方法などによってオーダーの異なる結果が得られることもあり, 注意が必要です.(か)
     
  69. あるお客さんから,路床の地盤改良の配合試験を依頼されました. CBR で結果を送付した所,CBR 値とqu(一軸圧縮強度)には 換算式があるはずだが...と質問され回答に困っています. 関係する文献があったら教えて欲しいとの事ですが, どんな換算式があるのか,さらに,それらが掲載された文献等もあったら お教えください.(その他:30歳代)目次に戻る
       試験方法が異なりますので(ご存知のように,CBR 試験では 周りから拘束を受ける供試体に載荷棒を貫入するのに対し, 一軸圧縮試験は周りからの拘束を受けず,上下の 1 方向からのみ 荷重をかけて載荷します),舗装の分野では土の物理的試験からの CBR の 推定は禁じられているようです.
       具体的な要綱などの記述は把握していませんが, 多田宏行編著『語り継ぐ舗装技術』(鹿島出版会)の p.106 に,
    路床の支持力は,個々の土について CBR で評価するものとし, 土の分類法によって土の強度を推定することは不正確であるとの理由から, 土の物理試験や力学試験からの CBR の推定を禁じた.
    との記述があります.
       しかしながら, 条件(対象となる土)を限って換算式が提案されているものは 多数あるようです.式の良否はわかりませんが次のようなものです.
    • 北関東のローム(乱さない試料) qu = (1/3〜1/5) CBR
    • 南関東のローム(乱さない試料) qu = (1/16〜1/20) CBR
    • CBR < 10 のローム(乱さない試料) qu = 0.225 CBR
    • 乱したローム qu = (1/4〜1/12) CBR
    (出典は「関東ロームの土工」:高速道路調査会編) 他にも CBR,一軸圧縮強度などで検索するといくつかの論文などが 見つかるかと思います.
       上記の記述に関して,アスファルト舗装要綱(昭和 36 年版)に 以下の記述を見つけました:
    「1-2-2 路床
    (中略)
    路床土は地方によって,粘土から砂レキにいたるまで数多くの種類のものが 分布している.わが国の路床土は一般に含水比が非常に多いことが特徴である. 現在の土の分類法によって土の強度を推定することは不可能であって, 個々の土につき,CBR 試験を行わなければならない.(以下省略)」
    この記述だけでは一軸圧縮強度から CBR を推定してはいけないとは 読めませんね・・・・もともとの質問は CBR から 強度を推定したいということですし.(た)
     
  70. 河川用語の,水路又は河川を指す用語に, 赤溝・赤線・青溝・青線というのがあるのですが, この意味の違いと読み方について教えて下さい. (その他:20歳代)目次に戻る
       私も知らなかったのでインターネットで検索してみました.
    青道(青地,青線)
    公図上には存在するが, 地番の記載がない河川または水路である(であった)敷地をいう. 登記簿上は無籍地とされるが,国有地である.この呼び名は, 公図上着色された色に由来する.
    赤道(赤地,赤線)
    公図上には存在するが, 地番の記載がない道路である(であった)敷地をいう.登記簿上は無籍地とされ, 道路法の適用がないが,国有地である.この呼び名は公図上着色された色に由来する. 国有地であるため,払い下げを受けるには, 道路についての用途廃止等の所定の手続きを経なければならない.
    法定外公共物
    とは,道路法,河川法等の適用又は準用を受けない公共物をいい, 代表的なものとして【里道】と【水路】がある.その総面積は, 約 4,300 km2 と推計(昭和 42 年建設省)されており, これはほぼ山梨県の面積に匹敵する.
    【里道】
    高速自動車道,一般国道,都道府県道又は 市町村道以外の道路で,認定外道路,赤道(アカミチ) 等とも呼ばれている.
    【水路】
    一級河川や二級河川又は準用河川以外の 河川で普通河川とか青溝等とも呼ばれている.
    読み方は,最後のアカミチから想像すると, アオミチ・アオミゾ・アオセン・アカセンでしょう. 赤溝というのはわかりませんが,赤は道路のようなので 多分ないのではないでしょうか.(さ)
     
  71. もらった支保工の計算書に形状係数κというのがあるのですが, (1.5 とか 2.0)いったい何なんでしょうか? 剪断の計算 τ=κ・Q/A のところです. (その他:20歳代)目次に戻る
       これは, 梁の曲げによって生じるせん断応力に関する係数です. 土木学会発行(今も在庫あります)の「構造力学公式集」の p.62 にある 式(2.81)と表2.5(a)がそれに関する理屈で,お尋ねの係数κは, この公式集では k と表されています.間違わないようにしてください. 曲げによって生じるせん断応力は, 理論的にはほぼ(構造力学的には厳密に)放物線分布をします. その放物線分布の応力の積分値(総和)は平均値 Q (せん断力)に一致しますから, 逆にその最大値は,せん断力の平均値 Q/A には等しくなりません. この平均値と最大値の比が k と表されています. したがって,単純に断面形状によってある値を持つことになり, 例えば長方形断面なら, せん断応力の最大値が図心軸上で平均値 Q/A の 1.5 倍になる(円の ときは 4/3 で,円管が 2 です)というだけのことです.
       一方, 同じ公式集の同じ箇所には「κ」が定義されていますが, これは別物です.この「κ」は,そもそも放物線分布をするせん断応力を 一様分布すると仮定して定式化される Timoshenko (ティモシェンコ)梁理論で 用いられる係数です.すなわち,この場合も,もともと放物線分布をすべきものを, 一様分布に置き換えて理論解析しようとするために, 何らかの補正をしなければならず,そのために導入される面積の補正係数, あるいはせん断剛性 GA の補正係数がκになります.この場合は, せん断力 Q と一様に仮定したせん断変形γとの間に Q=κGAγ という 関係が成立するとして定式化すると,得られる結果が正しくなるというものです. このκも断面形状に依存しますが,ある考え方によれば材料のポアソン比にも 依存します.このκは表2.5(b)にまとめてあります. 例えば矩形なら 5/6,円なら 9/10,円管が 1/2 です. 理屈については,`G.R. Cowper, The shear coefficient in Timoshenko's beam theory, J. Appl. Mech., Vol.33, pp.335-340, 1966' を参照してください.(く)
     
  72. 二つ質問があります.
    【質問1】
    平坦地盤(粘性土,φ = 0)を垂直に掘削する場合, 限界自立高(深さ)Hc は,以下のどちらでしょうか?
       (1) Hc=4C/γ, (2) Hc=2C/γ
    教科書では土圧 0 になる深さが (1) で, テンションクラックを考慮すると (2) であると記載されています. どうしてそうなるのかが分かりません(実務では (2) を採用し, これより上位の土圧は考慮しないようですが)
    【質問2】
    上記の (2) 式は, 「Hc までがテンションクラックの発生する深さ」を意味しているのでしょうか? この場合,テンションクラックが発生しても自立するでよいのでしょうか?
    (その他:30歳代)目次に戻る
    【質問1への回答】
    限界自立高さの定義では, 主動土圧合力がゼロということなので (1) となります. 擁壁に作用する水平土圧合力としては,2C/γまでの高さの引っ張り力と 2C/γ〜4C/γまでの圧縮力がキャンセルして,ゼロになるという意味です.
    【質問2への回答】
    テンションクラックが発生する深さが (2) Hc=2C/γであるのは,それより浅い部分の土は, 粘着力によって側方応力がマイナスになるえる状態であることを意味します. すなわち,この深さまでは,土圧は擁壁を押すように作用するのではなく, 倒壊を止めるように引っ張りに作用すると言うわけです. しかし,仮にテンションクラックが発生した場合には, この引っ張り力を積極的にカウントすることは危険になるので, これを考慮しないという処置にしているものと考えられます.(か)
     
  73. 水路の平均流速を求めるのに使う粗度係数がありますが, 実際にコンクリート管に被覆した塗膜の粗度係数を測定する方法を教えて下さい. 一般にコンクリート製では,n=0.013,塩ビ管では,n=0.010としているようです. (その他:30歳代)目次に戻る
       まず,流量を測定します. すでに出来上がった開水路なら鉛直断面で流速分布を測定し積分する. 管路なら適当な長さを切り出してきて別途試験をするか, 電磁流速計等で管の外から一気に測る方法もあります. ますや堰などを使って測るのが最適.
       次に開水路なら2点の水深を,管路ならピエゾ水頭を測る. 流量から平均流速をだし,水深勾配・ピエゾ水頭の勾配を 使ってエネルギー勾配(全水頭の勾配)を出します.
       平均流速とエネルギー勾配・管径または水深をマニングの式に 代入して n を逆算する.以上が手順です.
       管壁の近くの流速を丹念に測り, 流速の対数分布から壁面せん断応力を計算し, それから n を求める方法もありますが, 最初に書いた方法の方が流量計算などの実用面では優れています.(さ)
     
  74. 暗渠排水管はどれくらいの水量(管断面の何%)が流れているのでしょうか. 例えば,飽和状態にある循環水帯に設置された暗渠排水管を流れる水は 管内満流となっているのでしょうか.満流となっていないとしたら どうしてでしょうか(暗渠管は疎水材に包まれているとして). (その他:50歳代)目次に戻る
       何% という確定した値にはなりません. 通常は排水したい降雨強度に応じて排水管のサイズを決めます. 設計基準は正確には知りませんが, この場合でほぼ満管になると考えて良いでしょう. 雨が降らなければ,当然これより低い水深になります. しかし想定以上の雨が降れば満流となり, その水頭が地表面より高くなれば地上に吹き出します. 豪雨時に下水管のマンホールの蓋が吹っ飛ぶのはこのせいです.
       満管で流さない理由は, もし排水管が満管で流れていると周囲の地下水位が管より低い場所では 排水管ではなく,周囲に水がもれ水を補給することになるからです. 下水管などの場合,地下水汚染の原因になります.(さ)
     
  75. 雪の降る地域の道には積雪対策が必須であり, 様々な融雪方法が採用されていると思いますが,国道や県道を含めて, 現在の日本で採用されている方法を教えていただけませんでしょうか. もし,海外のものも分かるようでしたら,お願いします. 併せて,ランニングコスト・イニシャルコストに関する簡単なコメント等あれば, よろしくお願いいたします. (その他:20歳代)目次に戻る
       道路の融雪方式としては,大きく分けると,
    • 散水式(路面に水(少し暖かい)を撒く)
    • ロードヒーティング方式(路面というか舗装体自体をあたためる)
    • 雪を直接暖めて(遠赤外線などで)融かす
    方式などがあります.
       「散水式」としては, 温泉の湧く地域で温泉水を撒いていたこともありますが (今も行われているかは把握してません) 含まれる成分などが必ずしも舗装によくない場合も多く, 近年はあまり行われなくなってきているように思います. また,地下水を汲み上げて「消雪(融雪)パイプ」などとして, 路面に散水していた地域もありますが,地下水位の低下を招いたり, 路面に水が存在することが路面の損傷を促進することもあり, これも廃れてきているように思います.ということで, 近年はロード・ヒーティング方式のものが増えてきているようです.
       舗装体を暖める方式としては,
    • 電気(電熱式)(電熱線などを舗装体に埋め込む)
    • 舗装体にパイプを設置してその中に暖かい(といってもそれほど 暖かくなくてもいいですが)水を流す(あるいは循環させる)
    • ヒートパイプ(これも熱源は必要)
    などが行われています.
       風車を設置して風力発電を行い, その電力でトンネル入り口付近の舗装帯をあたためている事例があると思います. ヒートパイプ方式としては,熱源が必要となりますが, 湖底の水に熱源を求めたり,温泉に求めたりという例があります. 配置したパイプに水を流すものとしては, 地下水を汲み上げるとやはり地下水位の低下を招いたりしますし, 温泉水そのものを流すとパイプの中で結晶を生ずるなどの問題が 起こるときもあるようです.
       また, 熱源を地中に求めて,かなり深くまでボーリングを行って 舗装体から地中までパイプをはわせてその中を水(あるいは不凍液)を 循環させる方式なども用いられています.この方式では, 夏季も循環させることで地中に熱を蓄めると同時に 舗装を(少しだけ)冷やすことにより照り返しを少しやわらげたり, 舗装の損傷も少し押さえることなどの副次的な効果も期待できるかも知れません.
       ランニングコストに関しては,最後の方式が圧倒的に安いですが, そのイニシャルコストは圧倒的に高いものにつきます. 逆に電力を用いるものはイニシャルコストはかなり抑えることができますが, ランニングコストとしては不利かもしれません. 電気の場合,温度などに応じて,設定を細かに変更することは可能ですが. いずれにしても,発熱部をあまり舗装の表面には設置できないことなどから (路面の維持修繕との兼ね合いで)熱効率的にはかなり不利な状況かもしれません.
       一方,数年前,国交省の東北技術事務所で, 遠赤外線を用いて信号部(の歩道)など局所的ですが,雪を直接溶かすことも 考えられていました.(どこかで実際に用いられているかは把握していません.)
       細部については文献などを探してください.(た)
     
  76. 交通特性の重方向率とは,何ですか? 交差点での何かですか? (その他:30歳代)目次に戻る
       ご質問は,交差点ではなく,単路部のことと思われますので, 単路部のこととして回答いたします. 一般に単路部の交通量は往復(上り・下り)合計の交通量として表現されます. 1 日単位で見た場合,方向別の交通量はほぼ等しくなることが多いですが, 時間帯別にみると,例えば朝は上りの交通量が多く, 下りは少ないというように偏りが生じます. この例の場合,上りを重方向と呼び, 重方向率は往復合計交通量に対する重方向の交通量の比率と定義されます. 例えば上りの交通量が 600台,下りが 400台ならば, 重方向率は 60% となります.(と)
     
  77. 約 40 年前に造成された宅地内に道路を構築する計画があります. 宅地は傾斜した在来地盤上に緩く盛土されており,その上にさらに約 20 mの 道路盛土を行うものです.盛土も砂質土であり,道路自体に生じる即時沈下は 問題ありませんが,周辺の宅地に地盤変位が生じることが問題となり, FEM 解析で変位量を予測することとしました. 対策は在来地盤の一部を深層混合処理工法で強度を高める案を検討しようと 思っています.この場合
    1. 地盤改良などの複合地盤の変形挙動や改良形状による変更抑制効果について, 解析上どのように評価すべきか
    2. 宅地の許容水平変位(変位量,相対変位量)はどのように考えるべきか. つまり,無処理の場合,道路と宅地との境界付近で約 6 cmの水平変位となりました. 在来地盤の全てを良質土(岩砕)で置き換えても 3 cmの変位が生じます. 仮に変位量を 1 cm以下にしようすれば,コンクリートで置き換えるなど, 現実的ではないこととなります.
    の 2 点についてご教示願いたいのです. (その他:40歳代)目次に戻る
       順にお答えします.
    1. 3 次元的に配置された改良体をモデル化するには,
      1. 素直に3 次元解析を行う
      2. 3 次元的な複合地盤をマクロに表現して 2 次元解析を行う
      などの方法がありますが,実務的には「2」でしょうか. 今の場合,変形が問題のようですので, 複合地盤のマクロな剛性を適切に評価するように心がけるとよいと思います. 単純な方法として,置換率に応じて,複合地盤の剛性を評価する方法があります. ただし,CDM の配置形状(柱状?壁状?)によっても複合地盤のマクロな剛性は 変化しますので,この複合地盤の変形モードを考慮した工学的な判断が必要です.
    2. 宅地の水平変位の許容値については,情報がありません. 沈下であれば,許容傾斜角 3/1000 であれば, 瑕疵が生じる可能性が低いと言われていますが, それより小さい値でも住民から苦情がでれば終わりですから, 許容値の設定は難しい問題だと思います.
         また, 解析の精度に関して,数 cm の変位量とありますが,地盤の変形解析において, この程度の値がどの程度の精度を有しているかの判断も必要かと思います. 物性値の設定の考え方にあいまいさがあれば,ある範囲を示すことも必要かと 思います.
         さらに, 場所によっては,常時より,むしろ地震時の変形の方が心配です. 沢部の盛土のように,地下水位が存在するような場合には,盛土が大きく変形し, 数 cm のオーダーの話ではなくなってしまいます.
    以上,簡単ではありますが,ご参考になると幸いです.(う)
     
  78. 建築学科の卒業研究で,生ごみの堆肥化について勉強しています. それは土の中にもともといる微生物によって分解するパッシブシステムですが, 毎日のように作業・観察しているうちに,疑問が生じました. 生ごみも含め,可燃ごみは焼却された後,最終処理場に埋め立てられます. それは多分,微生物のいる普通の土に埋めてるんですよね? おそらく,良く混ぜたりしないから土に触れない部分が多いだろうとは思いますが. そこまではネットで調べることができたのですが,その後はどうなるのか 疑問に思いました.ちゃんと自然に還るのでしょうか?  燃やすと炭素は空気中に放出されて,残る灰は無機物になるのでしょうか? (高校生・高専生徒)目次に戻る
       日本のごみ処理・処分では 焼却後埋立てが約 8 割と主流を占めています. ちなみにその他の処理方法としては直接埋立て(焼却せず), 資源化(リサイクル),コンポスト(堆肥化ですね)等があります. アメリカで焼却後埋立てが 2 割に満たず, 直接埋立てが主流(約 6 割)であるのと比べると,大きな違いですね. 日本で焼却が盛んに行われているのは,減量化の意味合いが大きく, 国土の狭さが理由といっていいでしょう.
       さて, 燃やすとごみはどうなるか?炭素は空気中に放出されますが, 二酸化炭素(CO2:2 は小さいやつです)の形で放出されます. ついでに水素は水(H2O)に,イオウ(SO2)は二酸化硫黄になります. これでおわかりのように燃焼は化学的な酸化のプロセスです.さて, 燃え残った物は灰としてでてきますが,それは金属やガラス・未燃有機物・微量の 重金属などで構成されています.これがちゃんと自然に還るのかというと, そう簡単には土に還せません.特に注意を要するのは浸出汚水の問題です. 灰の中の重金属が溶出し(雨水などが浸透し,それに重金属が溶け出してくる), 地下水を汚染する心配があり,チェックと管理が必要になります.
       話は替わって,生ごみの堆肥化は有機物を微生物で分解し, 堆肥という資源に変えるシステムですが,ここでは生物学的な酸化が行われます. つまり化学的酸化(燃焼)と同じく,炭素は二酸化炭素の形で空気中に放出されます. 毎日作業している中で,土を酸素と触れさせる(酸素を供給する)作業が あるはずですが,これによって生物学的な好気分解が起こり, 有機物は無機化していきます.そして,分解されやすい有機物は分解され, 分解されにくい,すなわち土に還しても酸素を消費しにくい有機物を 主とする堆肥ができあがります.堆肥の中に分解されやすい有機物が 多量に残っていると,土に還したとき酸素をどんどん消費して 土中が嫌気的(酸素のない状態)になり,植物の根は呼吸できなくなります. このようにしてできあがる堆肥ですが,これにも重金属は含まれます. 通常ごく微量ではありますが,もしかなり入っている場合は 堆肥として使うことはできません. 燃焼と堆肥化で異なるのは減量の割合です. 燃焼は堆肥化より大きな減量化効果が得られます. したがって重金属の濃度(分子が重金属,分母が燃焼の場合は灰, 堆肥化の場合は堆肥)も高まることになります. ですから,溶出,汚染の危険性も高くなります. 重金属自体は自然界に存在するものですが,現代社会の物質循環において濃縮され, そうなると簡単に自然に還せなくなります.(に)
     
  79. グラウンド関係の仕事にたずさわっている者ですが教えて下さい. 土に一定の水分(例えば重力水を除いた有効水分)が常に含まれているとしたら, その土(層として15 cm位)は施工時の締め固めや施工後の踏圧に対して 土に含まれる水分量が一定していない状態(乾燥しているときは 水分量が極端に少なく湿潤時にはその反対)と比べて 硬化しないといえるでしょうか. (その他:50歳代)目次に戻る
       質問の意図を正しくは把握できておりませんので, 一般的なことだけを述べます.
       土を締め固める場合には, それぞれの土に応じて最適な水分量があり,それを最適含水比といいます. グランドの施工をする場合にも,この最適含水比を意識して, 土を調整しておられると思います.
       また,セメントや石灰を混合して行う場合には, 水和や硬化反応に水分が関係するので, これも材料とする土の含水比を予備試験によって決めるのが, 通常の方法と思われます.
       結局,人為的に土の含水を調整するような場合には, 水分量を任意にコントロールするので, 自然状態の土の水分量は問題になりません.(か)
     
  80. 橋梁等構造物に地震時動水圧を考慮する場合, 前段条件として道路橋示方書では軟弱地盤や液状化地盤においては 動水圧を考慮してはならないとあります. 固有周期への影響は殆ど無いわけですから,加算されてしかるべきと思われます. 事実,橋脚などに地盤条件に関わらず動水圧を加算した場合, 明らかに構造体への応力は大きくなります. 道示に示される「考慮しない」旨の意味を教えてください. (その他:30歳代)目次に戻る
       ご指摘の通り,物理的には,動水圧が作用する場合には, 動水圧を考慮するのが筋であります.しかし, 実際の現象は設計で考えているような条件が厳密にあてはまる訳ではありません. 安全をより第一に考えれば, すべての外力を最大に見積もって最悪の状態を考えるべきでしょうが, それでは不経済な断面になるであろうことはご理解していただけると思います. そこで,設計法の妥当性を吟味するときには, 考えられている設計法で設計したときに, これまでに作られた断面の構造物が壊れた事例と壊れない事例を うまく説明できるかを検討します.道路橋示方書の事例も同様であり, 動水圧を考慮しない場合でも, 十分安全性を確保されているというバックグラウンドの検討があるためと 考えられます.
       一方,動水圧そのものをどのように考えるかも, やや学問的に議論があるところです. 例えば,背後に地盤があり,前面に水がある岸壁の場合には, 前面の動水圧を一般に考えますが,背面の動水圧は考えません. 背面の動水圧の発生機構は,背後地盤の透水性などによって変化しますし, 土圧の考え方(有効土圧と水圧)にも関係します. また,地震時に瞬間的に作用するものの,構造体が少しでも動いた場合には, 背面が負圧になって移動を阻止するように働く可能性もあります. これは,構造体が固定されているか動く可能性がかるかでも違うことになります.
       一般に,動水圧は水深が大きくなるほど大きくなるので, 大水深構造物にとって厳しい外力になります. 逆に,水深がそれほどでもない場合には, 無視しても差し支えないような場合が多いようです.(か)
     
  81. 土の締め固め曲線には最適含水比を挟んで低含水比側と高含水比側に 同じ乾燥密度が存在しますが,高含水比側のほうが土粒子が整然としていて 間隙の連続性が高いということはあるのでしょうか. また,透水係数が最適含水比より少し高い含水比で最低となるのは どうしてでしょうか. (その他:50歳代)目次に戻る
       一般論として回答します.
       これは,一概には言えないと思われます.当然ながら, 締め固めの対象となる土が砂質土なのか粘性土なのか, 土粒子が粒子破砕しやすいかしにくいか, 締め固め試験を同一試料で繰り返したかどうか, もともとの土の自然含水比が最適含水比の低い側にあるのか高い側にあるのか, 締め固め方法,締め固めエネルギーの大小など, によって変わってくると考えられるからです.
       通常, 自然堆積状態の乱さない土の透水性の方が乱した状態のそれより 大きいですから,締め固めによる乱れの程度 (特にローム土や細粒分を多く含む場合)に関係するものと考えられます. いずれにせよ,現場締め固め試験を行って,チェックして管理してゆくのが 肝要です.
       最後の件については, それが一般的に言えることかどうか,分かりませんので, 理由も不明です. ある条件がそろった場合にそうなるのではないでしょうか.(か)
     
  82. コンクリート標準示方書「施工編」p.81 で, 相対動弾性係数を満足するための最大水セメント比の規定が, 構造物の露出状態の違いにより規定されていますが, 連続してあるいはしばしば水で飽和される場合とは, 具体的にどのような場合なのでしょうか. (その他:50歳代)目次に戻る
       コンクリート標準示方書「施工編」p.81 で 定められている相対動弾性係数に関する規定は, コンクリートの耐凍害性に関するものです. 凍害は,コンクリートが水で満たされているかどうかが極めて重要なので, コンクリート構造物が水によって飽和し易い状態であるかどうかで 判断するのが妥当です. ですから一概に,この状態は OK とか言い難いのが実態だと思います. ご指摘の箇所について述べますと
    • 通常の融雪や雨水は対象外か.
         これらは,いったん飽水状態になっても, 凍結するまで湿った状態が保たれなければ,しばしば飽水とは見なせません.
    • 例えば,水面から離れている橋台や床版で気象作用が厳しい場合に, 冬期間は降雪や融雪による影響をしばしばうけると考えられるが, これは水で飽和されていると考えればいいのか.
         通常の状態で, コンクリートの表面が湿った状態になりがちであれば, 飽水状態が長く続くものと判断して良いと思います. ただし,凍結し易いかどうかは, 実際の構造物の置かれた状況で判断せざるを得ないと思います.
    • 対象とするのは露出部だけで,地下部や地下水影響部は対象外か.
         これも結局は実際の構造物の状態によって判断するのが 適切だと思いますが, 地下部や地下水影響部は,しばしば飽水状態ですが, 凍結はし難い環境と考えられます.
    といった具合です.コンクリート構造物の耐凍害性を確保したいのであれば, 念のためにという考え方で,相対動弾性係数を確保するようにしておくことが 重要ですが,不必要な箇所まで凍害を気にするというのも, どうかとも思います.(ひ)
     
  83. N 値は地盤の強度を示す数値だそうですが,N 値が同じ場合でも, 砂質土と粘性土では強度が異なるとあります. 一般に N 値が同じ場合,強度は「砂質土<粘性土」となるそうですが, それは標準貫入試験のサンプラーの入りやすさに影響があるからのように感じられます.なぜ,土質が異なるとサンプラーの入りやすさが異なるのですか. (その他:20歳代)目次に戻る
       簡単にお答えします.
       地盤調査に関係している方にはよく知られていることですが, 砂質土と粘性土では貫入に抵抗するメカニズムが違うためであると説明されています. 粘性土は,刃先が食い込みやすく抵抗が少ないのに対して, 砂質土は貫入量が大きくなるに連れて,先端の閉塞効果のため, 貫入に抵抗する地盤の領域が大きくなるためと説明されています. しかし,以上は中密以上の砂質土に対して考えられていることであり, 緩い砂では液状化して逆に回数が増えるに連れて抵抗が小さくなることもあります.(か)
     
  84. 治山ダムの基礎地盤で基礎の形状を決定するにあたり, 直接基礎と杭基礎の比較で,支持層の高さのめやすはどの程度でしょうか. (その他:50歳代)目次に戻る
       お尋ねの件,残念ながら詳細な条件が不明なため, 一般的な話しかできません.
       「建設工事と地盤地質」改訂新版 古今書院の「3. ダムと地盤地質」に一般的な地質の留意点など書いてありますが,実は参考になるかどうか不明です. いずれにせよ,設計要領に則ってやっていただくよりないかと思います.(か)


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